HOT LIFE STORY

孤独な状況の中、
軽やかに現れた遊び相手。
それがキタキツネだった。

Vol. 01

写真家
井上浩輝Hiroki Inoue

2016年に米誌「ナショナルジオグラフィック」フォトコンテストのネイチャー部門で
二匹のキタキツネが追いかけっこする一枚が絶賛され、日本人初の1位に輝いた井上浩輝さん。
世界中から注目される存在となった冬、井上さんは光電子®のウエアをまとい、作品づくりに臨んでいる。

彼を撮ろう! 彼とともに楽しもう! キタキツネを見つけた瞬間に、そう思った。彼を撮ろう! 彼とともに楽しもう! キタキツネを見つけた瞬間に、そう思った。

「僕がキタキツネを撮るようになったのは、時間を持て余していたからなんですよ。」北海道に移住し、はじめに風景写真に取り組んでいたという井上さんは、キタキツネを撮り始めたきっかけを意外な言葉で語り始めた。「自然風景の撮影は、待ち時間がとても長いんです。日の出や日没など、美しい時間帯はもちろん忙しくなる。しかし、その間は恐ろしいほど暇なんですね。虚無さえ感じる時の経過に耐えながら、真冬の雪景に独りでいると、さまざまな考えが頭や胸をよぎります。怖さや辛さを感じることさえあるんです。そんな孤独な状況に置かれてひたすら待ち続けているとき、目の前に出てきて、白い景色の中を軽やかに横切っていったのがキタキツネでした。その瞬間、思ったんです。『彼を撮ろう!彼とともに楽しもう!』と。それから、まるで遊び相手を見つけたようにキタキツネを撮り始めました。雪の上でジャンプしたり、優美なしぐさで座ったり、大きな尻尾を揺らしながらしなやかに駆けていく彼らのシルエットは、僕にとって甘美といっていいものでした。待ち時間の遊び相手だった彼らは、ついにはわざわざ探してまで撮る存在になっていきました。」

photo:by Hiroki INOUE

「追いかけっこ」は、数日かけて
ようやくシャッターを切った、幸福な恋の景色。

井上さんの名を一躍世界に知らしめたのが、二匹のキタキツネが追いかけっこをする一枚だ。「僕は、キタキツネの孤高さに魅せられているんです。群れないところがかっこいい。では、なぜ、『追いかけっこ』のキタキツネが二匹でいるかというと、あれは恋の景色だから。彼らは基本的には一匹で生きる動物。二匹でいるのは子作りの季節だけなんですよ。」しかし、井上さんはその一枚のシャッターを切るまでに、数日間にわたって彼らと逢い続けたのだと言う。「冬の北国は淡い色の夕焼けになることがよくあります。『追いかけっこ』の一枚は、日没する時間の東の空、つまり夕焼けの反対側でじゃれあう二匹を捉えた、ただ一度の瞬間です。実は、前の日にも同じつがいの似たシーンを見てましたが、前の日は空が鉛色だったため、さらに前の日は被写体との距離が遠すぎたために、一度もシャッターを切らずにそっと立ち去りました。最高の瞬間を残すためには、証拠写真のようなカットを撮っても意味がないのです。そしてある日の夕刻、目を見張るほどの素敵な瞬間がようやく訪れました。あまりにも幸福そうな姿で、僕が見続けてきたキタキツネを象徴する一枚と言えます。」

キタキツネが毛皮であたたまるように、光電子は僕をあたためる。キタキツネが毛皮であたたまるように、光電子は僕をあたためる。

光電子素材が採用されたカンタベリーのインサレーションジャケットは、この冬、井上さんの撮影スタイルにとてもマッチしているそうだ。「軽くて、あたたかいのがまずいいですね。しばらく着ていると、心地よいあたたかさになります。暑くなりすぎず、ふわっとあたたかいんです。寒いところでずっと待たなければならないため、これまでは着込んだり、毛布をかぶったりして耐えていました。このジャケットを切るまで、あたたかさと体積は比例するイメージを持っていましたが、それをいい意味で裏切ってくれていますね。肌触りもとても良くて、袖を通したときに手に当たる繊維の感触が気持ちいいです。キタキツネは、心地いい毛皮で自らの体温を保って、体をあたためていますが、光電子ウエアは非常に近しいものを感じますね。人間は毛がないから、光電子のような機能性のある素材であたためる。僕は、キタキツネと同じ気持ちにならないと、彼らのいい写真は撮れないと思っていて、その意味でもぴったりのウエアだと思っています。」

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写真家 井上浩輝 Hiroki Inoue

PROFILE

写真家
井上浩輝Hiroki Inoue

1979年札幌市生まれ。札幌南高校、新潟大学卒業、東北学院大学法務研究科修了後、北海道に戻り、風景写真の撮影を開始。次第にキタキツネを中心に動物がいる美しい風景を追いかけるようになり、2016年に米誌「National Geographic」の『TRAVEL PHOTOGRAPHER OF THE YEAR 2016』のネイチャー部門において、日本人初の1位を獲得。自然と人間社会のかかわりへの疑問に端を発した「A Wild Fox Chase」というキタキツネを追った作品群を制作、発表してきた。 写真は国内のみならず海外の広告などでも使用され、近時は、北海道と本州を結ぶ航空会社 AIR DO と提携しながら野生動物や風景など「いま生きている光景」にレンズを向けている。