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SCOTT MELLIN SPECIAL INTERVIEW

Hikari Mori
皆さん、こんにちは。日本でTHE NORTH FACEの責任者をしております森です。宜しくお願い致します。 こういったユーザーの皆様に対して行うエキジビションは、我々ほとんど初めてです。何故今回エキジビションを実施したのか冒頭ご説明します。
サミットシリーズは、我々の頂上商品にあたるものを言っております。 特に、クライミング、ヒマラヤ登山、エクスペディション(南極とか北極の探検)など非常にシビアなコンディションの中での使用を考えた製品群(フラッグシップモデル)です。 2017年秋冬シーズンより、リニューアルして、新しいサミットシリーズを市場にお届けしております。 サミットシリーズがどういった気持ち、考えで作られた製品であるか、皆さまに直接お伝えしたくてサミットシリーズエキジビションを設けました。
モノづくりのメーカーの立場から皆さまに向けて話す機会は珍しく、裏話的な内容が多く皆さまに有用なお話ができるかわかりませんが、 今日は是非お付き合いいただきたいと思います。
今日のプレゼンをするのは、アメリカの本社から来日しているスコット・メリンです。
スコットはグローバル・ジェネラルマネージャー・オブ・マウンテンスポーツ。 社内的な用語になりますが、マウンテンスポーツとは、サミットシリーズ、クライミング、バックカントリースキーなど、 山を中心としたハードにやるスポーツのカテゴリーのことをマウンテンスポーツと呼んでおります。 その責任者ということで、彼が、これからサミットシリーズについて説明いたします。よろしくお願いします。

Scott Mellin
私はスコット・メリンです。今日はご来場いただき、本当にありがとうございます。何か疑問点や質問があれば、ご自由にお聞きください。
私自身はこの仕事に携わることができて、とても幸運に思っています。 私自身、クライミングや山岳スキー、登山が非常に好きで、ずっと自らやってきました。 そういった自分の好きなことと、サミットシリーズのような、経験やアクティビティが仕事と直結して、幸せ者だなと思っております。
私が住んでいるのはコロラド州のアスペンです。アスペンは、多くの高い山々に囲まれて、 岩もあれば雪もあり、多くのクライマーや登山家など多くのアスリートが住んでいます。 素晴らしい環境に住んでいて、今回こういったサミットシリーズエキシビジョンの機会で、東京に招待して頂き、嬉しく思っております。
我々のサミットシリーズの製品コンセプトというのは非常に明快です。
一番大切なのは、製品が信頼できるものであること。誰にとって、信頼できるものかというと、 アスリート(登山家やクライマー)にとってその製品が、信頼できて命を懸けられるものであるということが我々の作るサミットシリーズの目的です。

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「信頼できるもの/トラスト」ということがサミットシリーズのキーワードになっております。 サミットシリーズについて振り返ってみると、同シリーズが最初に登場したのは、2000年でした。 どのようにしてサミットシリーズが誕生したかというと、プロダクトチーム(製品開発チーム)が新しいスタンダードになるものを作ろうという目的で、 サミットシリーズが誕生しました。
そして、2000年に最初のサミットシリーズのコンセプトを作ったときに、元になったのが、 「アスリート(クライマーや登山家)がテストをして、遠征で証明されたもの」ということで、これをキーワードにしています。 アスリートが信頼できるものであって、シビアなコンディションで信頼して使えるものだと証明されることを目的に作った商品です。
我々のアスリートの意見をもとにしてテストサンプルを作り、アスリートに使用してもらい、 使用に耐えうるモノづくりを行っていくということでプロダクトのコンセプトが始まりました。 「The world’s finest alpine systems」世界で最も優れたアルパインシステムを作ることが、我々の使命です。

我々が「Alpine systems」と呼んでいるのは、アパレルだけでなく、フットウェアやエキップメント、 これらを総合的にサミットシリーズのシステムと考えています。
現在のサミットシリーズの誕生背景ですが、今、新しく秋冬にサミットシリーズを作り上げたといいましたが、 そのプロジェクトは2016年度からスタートしており、これは次世代に新たな水準を高めたモノづくりをするために、 日本のチームとも共同で開発を進めております。
これはちょっと、ビジネス的な話になりますが、実際その目標を実現させるためのプロセスを考えました。 目標は全世界で共有しますが、それぞれのマーケットニーズに合った部分で、それを実行していくことも考えています。 ただ、根底となる考え方やテクノロジーは共通化して、新しいスタンダードに向けて、プランが実行されました。
まず、セオリーというか、モノづくりのベースになる考え方といってもよいですが、このサミットシリーズの製品を通して、 どう体現させていくか考えてみました。

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1. Honest Function
奇をてらったわけではなく、アスリートが本質的に必要とされる機能を抽出して、実現するということを考えています。 山やクライミングなどの環境下で生まれる、様々なニーズに的確に対応できる機能を作るというのが、最初の考えとなります。

2. Amplified
二番目の考え方に関しては、Honest Functionの考え方を突き詰め、無駄をそぎ落とし、 機能するようにウェアやギアに落とし込んでいくことが重要となります。

3. Kinetic Alpine Fit
三番目の考え方に関しては、人間の身体に立体的にフィットするデザインに注目しています。 シビアなコンディションではレイヤリングが不可欠です。 それぞれがきちんとフィットし、しかも、ミニマルなものでないと、動きを妨げてしまいます。 アスリートの動きに対して、極力ストレスをかけないような構造にしています。

4. Product
製品について。Summitシリーズのマークが入った製品に関しては、アスリートが認めたスタンダードな製品でなければなりません。

5. Mountain Color
カラーについても、重要なコンセプトがあります。それは視認性の高さです。見つけられやすい。 人から見つけやすいということが生存率を高めるうえで重要です。

6. Specific Design
各アスリートのアクティビティにマッチしたプロダクトの提供です。 私たちが提案しているサミットシリーズが対象にしているアクティビティは、例えば、 アイスクライミング、ビッグウォールクライミング、ヒマラヤなどの高所登山、山岳スキーなど、多岐にわたります。 それぞれのフィールド、それぞれのアクティビティを行っているアスリートにフィードバックをもらうとニーズが違いますが、 そのニーズを的確にとらえる商品開発を行っております。

7. Details
細部にこだわるということです。ジッパーの引手一つにしても、素手で開閉がしやすいのか、 グローブで、ミトンではどうかなど、検証を行ったり、ポケットの位置はクライミングハーネスに干渉しないのかなど、 そういったことの全ての細かいところまで突き詰めてニーズに合わせたプロダクトに仕上げていくことが重要です。

8. Athlete Test
アスリートがテストをするということです。ただ単にアスリートに商品を提供するだけでなく、 エクスペディションのフィードバックを受けて、さらに商品の改良を加えております。 したがって、一般のお客様に商品をお届けするまでにはかなり、完成度の高く、しかも、 アスリートが実際に使ってよいと言っているものをお届けしておりますので、世界最高品質のアルパインシステムと言えると思います。

9. Minimal
必要な機能を最小限なものでプロダクトを仕上げることです。
一言でミニマルと言っても、実現するには大変な労力が必要です。
それを実現した一例として、FUSEFORMという技術があります。
FUSEFORMによって、従来では異なる性能の二種類の生地を縫い合わせて作っていたフリースを、一枚の生地として実現することができました。
これはあくまで一例にすぎませんが、ミニマリズムをテーマにモノづくりを行うことで、我々は高機能かつシンプルなデザインを実現しております。

10. Technology
サミットシリーズならではの新しいテクノロジーを搭載しております。 そして、その新しいテクノロジーはアスリートのパフォーマンスを向上させるものでなければなりません。
例えば、VENTRIX JACKETは、インサレーション(中綿)にスリットを入れるという発想で、 ウェアを着用して運動する際にはスリットが開いて通気し、静止時はスリットが閉じて保温するという機能性を持った素材です。 衣服内の快適性を追求し、導き出したのが独自に開発したこのVENTRIXです。

11. Mountain Systems
システム化することで、それぞれのアスリートにマッチしたモノづくりをするという考え方です。 例えば、ウェアでは、アウター、ミドラー、ベースレイヤー。それぞれの組み合わせを変えることによって、 一見似たようなコンディションだが、アクティビティによってそれぞれのニーズに対応することが可能になります。

今、Summitシリーズを手掛けた際の考え方を説明しましたが、 それを体現したコレクションが実際に店頭に展示しておりますので、ぜひ、ご覧になってください。
我々はこれからも、世界最高品質のアルパインシステムを目標にモノづくりをしていきます。本日はご清聴、誠にありがとうございました。

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