THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 2月9日、全国8カ所で行なわれた一次予選を勝ち抜いた各Divisionの選手達がClimb Park Base Campに集まった。さらには昨年の男女オープンクラス優勝者、小田桃花、Daniel Woods、そしてThe North Face Cupの姉妹大会でもある東南アジア最高峰のBoulderactive優勝者、Judith Sim、Jey Koh、ワールドカップ2012イタリア大会で優勝している韓国のKim Jainを招待し国内各地の強者達との2次予選が始まった。ところで今年から始まったDivision制だが2001年に始まったThe North Face Cupの歴史の中でビギナー(エントリー)、ミドル、マスター、オープン(エキスパート)とそのレベルに合った呼び名でクラスを分けをしていた。しかしその歴史と共に選手達のレベルもどんどん上がり呼び名とそのクラスに参加する選手のレベルが合わなくなってしまっていた。そこで呼び名を改めると共に選手達を世界レベルへ近づくための道しるべとしてDivision制の導入に踏み切ることになった。そのDivisionだがクライミングレベルによって男子は4つ 、女子は3つ、そしてジュニア層には年齢で3つに分かれている。今後は大会やレベルの広がりにあわせDivisionも増やしていこうと思っている。text : Yuji Hirayama (THE NORTH FACE Climber)
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP そのDivisionだがクライミングレベルによって男子は4つ、女子は3つ、そしてジュニア層には年齢で3つに分かれている。今後は大会やレベルの広がりにあわせDivisionも増やしていこうと思っている。まずは年齢によって2歳ごとに分けたDivisionでU-8、U-10、U-12 がある。現在 は小学生にターゲットを絞り各年代ごとに刺激をし合ってもらえればと思っているが、このカテゴリーは同年代でずっと戦ってきたわけで2歳ごとにDivisionの熱さを激しく増していく。特にU-12の決勝は既に1級での勝負レベルとなり男子のDivisionに換算すればD3に値するレベルになる。 だから U-12の準決勝に進んだ子供達はU-12を卒業し翌年、 D3で戦う選手であるレベルにあることは間違いない。 今回の優勝の土肥 啓太選手は昨年2位だった悔しさをはらし完登で優勝を飾った。FINAL "U-8,U-10,U-12"「Result」U-8Rank1:Satone YoshidaRank2:Masato DohiRank3:Yuya TanakaU-10Rank1:Futaba ItoRank2:Kentaro MaedaRank3:Hayato TsuruU-12Rank1:Keita DohiRank2:Mizuki TajimaRank3:Daichi Nakashima
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 国内のナンバーワンも知りたいが、前述の通り今回は海外の大会優勝者や世界レベルのタレントを招待したわけで、その国内のナンバーワンや強者達が彼らとどう戦うのか注目が集まる。そして決勝にはこれまでの長い戦いを勝ち抜いて来た男女14名の選手が残った。まずWomen's Division 1は8名の選手がファイナルに残った。そして決勝一課題目Squadraで一気に4名に絞られる。そのSquadra課題を昨年優勝者の小田桃花、実力急上昇中の田嶋あいか、そしてワールドクラスのKim Jain、野口啓代と完登し決勝二課題目Rock Candyに駒を進めた。そのRock Candy課題は課題の入りから悪くル ーフの抜け口の分厚いアンダーを押さえたKim Jainとゴール手前のホールドまで攻めあげた野口啓代が三課題Pro setに進んだ。しかしそのPro set課題を二人とも見事に完登し、スーパーファイナル課題Teknikでも勝負が着かず結局二課題目Rock Candyでのカウントバックで順位が分かれワールドカップボルダーで2度総合優勝を飾っている野口啓代が優勝を飾った。FINAL "W's DIVISION 1" 「Result」 W's DIV1 Rank1:Akiyo Noguchi Rank2:Jain Kim Rank3:Aika Tajima 1ST ROUND: SQUADRA CLIMBING HOLD 2ND ROUND: ROCK CANDY HOLDS 3RD ROUND: PRO-SET CLIMBING HOLDS SUPER FINAL:TEKNIK HANDHOLDS
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 続いて男子のDivision 1は6名の選手がファイナリストとなった。決勝一課題目Climb Itに成功したのが昨年優勝者Daniel Woods、つづいて高度差でワールドカップで活躍する杉本怜、2011年カナダのワールドカップで優勝している堀創 、ベテラン茂垣敬太が残った。そして決勝二課題目Pro set、この課題を完登間近まで持っていった杉本怜、そして出だしのダブルダイなを止めたDaniel Woodsが次の決勝三課題目Teknikに進んだ。昨年同様2013年もこの二人に勝負がゆだねられ「今年こそは杉本怜のリベンジなるか?」が大方の注目だっただろう。しかし、この課題をまずDanielが一撃で征すが杉本は二課題目に完登間近まで迫ったクライミングで疲労を残していたようだ。全力のクライミングも完登には及ばず2年連続でDaniel Woodsの優勝が決まった。FINAL "M's DIVISION 1" 「Result」 M's DIV1 Rank1:Daniel Woods Rank2:Rei Sugimoto Rank3:Tsukuru Hori 1ST ROUND: CLIMB IT HOLDS 2ND ROUND: PRO-SET CLIMBING HOLDS 3RD ROUND: TEKNIK HANDHOLDS & PLANET'ROC
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 大会が終了し一夜明けた翌日、海外選手や国内の選手とゆっくりBase Campで登った。前日の疲労もあるのだろうが大会の課題をもう一度みんなで囲んで登った。一つの課題を囲みシンガポ ール、韓国、アメリカ、日本の選手が楽しそうにセッションに興じていた。やはり大会中は緊張感もあっただろうし海外での大会で思うように身体も動かなかったかもしれない。こうやってみんなでセッションする光景がまたクライミングの持つ一つの大きな魅力だと思っている。そして夕方3時過ぎ僕らはもう一つの目的であるRock Tripへ出発した。日本の岩場を知ってもらいたいし、日本のクライマーとも交流してもらいたいと考えていた。そして国に帰って日本での大会の模様やクライミング、日本の文化や人、国について感じ語ってもらえればと思い今回企画させて頂いたのだ。僕らは4台の車にわかれ総勢20名程のキャラバンとなり夕方ではあったが富士山を眺めながら伊豆に向かった。もちろん初めて見る富士山に興奮は隠せないのだが、 シンガポール組に取って人生初めての体験は道路脇に積る雪を触ることだった。寒さを忘れ雪を握り満面の笑顔で雪を握っていた。そして3時間程で伊豆に到着した我々はお刺身や天ぷらなど日本食を囲んだあと温泉につかった。初めての温泉はどうだったのだろう?気持ちよかったとは思うが海外選手と浴衣を着てのグループショットが僕自身も新鮮で楽しかった。翌日、いよいよ日本の岩場で初のクライミング。城ヶ崎は冬でも温暖なため選んだのと黒い玄武岩に打ち寄せる波、海に向かって伸びる松の枝など日本を感じさせる場所としては最高のロケーションだ。
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP そして選手達も思い思いのルートに取り付いて一日楽しんでくれたと思っている。さらにこの日はある意味の相乗効果だろうか海外選手との交流に付き合ってくれた野口啓代がシンデレラボーイ5. 13bをフラッシュに成功した。女性ではもちろん初めての成功だ。そんな一日を終え僕らは翌日に帰国するシンガポール組を送るため東京へ向かい、そして僕らは塩原へと北上した。
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 翌朝、僕らは塩原に到着した。 吹き荒れる北西の季節風が谷間のすべてを吹き飛ばすかのごとく荒れ狂っていた。駆けつけるクライマー達も凍えクライミングどころではなく感じていた。多くはこんな日に登れないだろうと思っていたが Daniel が違うことは知っていた。前の年に登れなかったハイドランジア 五段+(V15) に彼は照準を絞りまずはムーブを一つ一つばらし、繋げてはまた練習しと繰り返していた。この課題の厳しさゆえにDanielの表情もより精悍さをましていくように見えた。 2005年に小山田大が初登して以来再登のないこのハイドランジアだが、Danielはこの寒さを何でもないかのように取り付き、この課題を完全に落としにかかっていた。
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 翌日、前日の吹き荒れる風は止み寒さは緩んでくれた。佐千、敬太、Jainも今日はクライミングモードに切り替わっていた。そして佐千、 啓太、Danielはハイドランジアを攻めた。 中々出だしが上手く行かずタイムリミットを感じているのか焦っているようだった。そして午後2時過ぎ、最後と思われるトライで彼は何度も落ちていたムーブを力でねじ伏せハイドランジアを見事に成功させたのだ。前年に見た荒削りのこの男が、一年経ってかなり磨かれていた。まだまだ野性味の残る磨かれっぷりだが見事なクライミングだった。そしてJainだがカランバ 4段ー(V12) を持ち前の粘りと体力でかなりの部分が繋がっていた。核心のムーブが完成し、嬉しそうな表情で「ムーブができた」と大喜びしていた。普段あまり岩場に行かないJainも外でのクライミングの楽しさと共に日本の岩場、日本の国も少し知ってもらえた気がしている。僕らはこの岩場の余韻を両手に残し都内のトークショーに向かった。そして僕らのRock Trip全日程を終えたのだ。実はその後もDanielと僕は一緒に登った。今秋に発売されるReel Rockの撮影をするためだった。そこで二子山に行ったりインタビューをしたりして過ごした。そんな中、二子ではFlat Mountain 5.14dをやって再び日本に戻ってきたい気持ちに刺激を加えているようだった。
THE NORTH FACE 2013 ROCK TRIP 今回こうやってThe North Face CupとRock Tripを一緒にさせて頂いた。と言うのも大会だけではなく日本のこと、日本の岩場のことを知って欲しかったし日本のクライマーと交流して欲しかった。違った考え、違ったスタイルを知ることでお互いのクライミングに役立つと思ったし、より豊かなライフスタイルにも繋がると思っていた。そしてそれぞれの国に帰って、見て、感じたこと、聞いて、考えたことなど沢山のことを国の仲間と話てくれたら良いと思っている。このようにクライミングの持つ魅力はたくさんあってこのような機会にクライマーとしてそれぞれがより豊かになって行くのだろう。そしてThe North Face Cup2013から始まったDivision制は多くのクライマーの目標になって欲しいと願っている。 平山ユージ