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        Interview with Go Biyajima

        241フォーカスInterview with Go Biyajima

        美谷島 豪は「スノーボー道」を突き詰める求道者のひとりと言っていい。

        ここで言うスノーボードは、文明や社会の行き届かない雪山を、自然の摂理に従って自由に滑り降りるシンプルなものを指す。スキー場で磨き上げたフリーランの技術と、山の中での立ち居振る舞いや地理勘が見事にかみ合ったものだ。

        長野市で生まれ育った彼は、山に精通した父親の影響で、幼少期から山中の土や岩を踏む機会が多かった。毎年1月3日には、家族でクロスカントリーを履いて戸隠の奥社へ参拝するのが恒例行事だった、と言えば、自然と密接に成長してきたことが分かるだろうか。加えてベースである長野”CITY”での生活と遊び、これらの要素が絶妙なバランスでミックスされているのが、美谷島 豪という人間だ。

        ではなぜ彼を求道者と言うのか?

        それは、様々な仕事を掛け持ってでも、ニュージーランドで滑り続ける夏を5度メイクし、スティープな斜面を滑るために北米への旅も実行するその姿勢。地元エリアだけに留まらず、スノーボードに没頭する"時間"と得られる"経験"を貪欲に求め続ける生き方にある。

        生活のすべてがスノーボードへと繋がっている。そう言い切れる彼のライフスタイルとスノーボード観、それを夏の仕事場である養蜂場で聞くことにした。

        — なぜ養蜂の仕事を選んだの?

        Go (以下:G) 「正直、仕事をする=リフト代を稼ぐという感覚なんで、胸を張って言うことではないんですけど、意味のあることをしていたいと思って養蜂の仕事を選んでます。将来、自分自身でやっていける仕事でもあるし、滑り続けていく未来のためでもあり。それに思っていた通り、やってみたらこれは自分に合っているなと思えたんで」

        — 自分に合っているとは?

        G 「自然に近いってことです。天気の関係する仕事というか。ミツバチは絶対に土の上ですし、山手で人目に付かず、街からも必ず離れているんですよ。だから誰も来ないような場所ばかりで、本当に自然との距離感が近いんです。ハチミツも美味しいですし、四季の移ろいを感じられる環境の中での仕事は、健康でいられるし良い精神状態を保てますね」

        — スノーボーダーとして、心や身体に気遣っているのかな?

        G 「スノーボーダー的には、山へ入って地形を見られる測量の仕事の方が向いていると思います。ガレ場にも行く分、歩くんで肉体的にも良いし、沢を見れるから勉強にもなる。オフシーズンもずっとイメトレしていられるんですよ。でも将来自分が測量会社をやれるわけじゃないし、という視点ですね。理想は自分のハチで仕事をして、冬を滑り続けていける状態が良いですから。もっと言えば、真夏にニュージーランドへ行けるくらいがベストですね。マヌカの木を日本に植えようかな、とか(笑)」

        — とことんスノーボードが中心のライフだけど、スノーボードを始めたのはいつ?

        G 「小学1年の時から、毎週家族で滑りに行ってました。小学3年で、当時長野にあったショップ "ブロンクス"のツアーに参加したり、中学の頃はバスで飯綱高原へ毎週通ったり、スキー場に着いたらとにかく滑りまくってましたね」

        — ブロンクス・コミュニティとは……長野の相当濃いシーンじゃん。周りにいたスノーボーダーから影響は受けた?

        G 「相当受けましたね。シン君(兄・美谷島 慎)はもちろんですけど、五明 淳さん(MAKE)、田畑将彦さん(the other one)、古屋 誠さん、和泉 健太郎さん、ナベさん(渡辺尚幸 / PRANA PUNKS)、そしてブロンクス・コミュニティと、長野のフリースタイラーの、そのシーンを見て育ちましたね」

        — ゴー君のスノーボーディング・スタイルがどこから来ているか、よく理解できたよ。

        G 「小さい時からパウダーのツリーランや、沢へ入っていくのを見てますからね。毎日パークへ通って並ぶとか、そういう滑り方は一切してこなかったです。逆に今になってパークを滑ってますけど(笑)。当時、周りに同世代のスノーボーダーがいたらまた違っていたかもしれないですけど、とにかく空いている場所をリフトでがんがん回す方が楽しくて。純粋にフリーランを追究してきましたね」

        — どの辺りをベースにして滑ってた?

        G 「自分で行けるようになってからは某志賀エリアのスキー場です。その辺りでツリーランやライン取りを鍛えてました。早く滑り降りないと次のロープウェイに乗れないんで、それに間に合わうように降りるっていう。それをやり続けてるうちに、今度はもうちょっと奥へ行ってみようってなるんです。そうするとロープウェイに間に合わなくなってくるんですけど、でも自分の足で、感覚で、滑るフィールドを広げられた、ロープウェイが間に合うとか関係無い世界へ来たって思えて。その時にちょっとハッとしたんです。これか、と。ずっと見て続けてきたスノーボード、スノーボーダーっぽさ、というのものを感じ、これはロープウェイに間に合うことよりも、行きたい斜面へ行った方がいいんだなって」

        — ひとりで?

        G 「そうですね。完全にひとりですね。もちろん地形図と照らし合わせながらですけど。行ってみないと、そこが地図と合っているかどうかも確認できないし」

        — 10代でそういう楽しみ方をしていたんだね。地形図とかさ。

        G 「父親の趣味がオリエンテーリングだったこともあり、地図とコンパスの先生なんですよ。身近にその環境があったのもあるんですけど、影響を受けた上の世代のスノーボーディング、そこに付いていくにはそうせざるを得なかったというか。上手くなるしか付いていく術が無いじゃないですか。滑りだけじゃなくて、山を見るセンスという部分も含めて。自分の感覚で知らない沢を滑るっていうのは、本当に自分はここを降りていっていいのか? という嗅覚みたいなものが鍛えられますからね。まずはセーフティなライディング、それで地図にはない滝や崖があったりして、それを次のランで攻略する。実際、何度も登り返して帰るってこともしてますし。"あー違うぅー"って」

        — そうやってこれまで長野のスキー場を滑ってきたの?

        G 「そうですね。もちろんまだまだディープには行き切れてないですけど、北信エリアは全体的に滑ってますね。志賀高原、北志賀、黒姫、飯綱、斑尾、野沢、妙高エリア、あとは白馬。それらが住んでいる長野市からどれも1時間ほどの圏内っていうのは安心感というか、俺はずっと滑り続けていけるんだって。恵まれてますよ。スキー場しか見えていなかった時には気付かなかったですけど」

        — GREEN.LABや241のスポンサーが付いた背景は?

        G 「ニュージーランドへ初めてシン君に連れていってもらった年の冬に、ナベさんから"ゴー君乗りなよ"と、GREEN.LABを貰えたんですよ。嬉しかったですね。スノーボードの値段もよく分かっていたし、ナベさんが"シン君の弟"というだけでサポートしてくれる人じゃないのも分かっていたんで。大会にも出ず、リザルトも無い自分ですけど、シン君が241へ推してくれたのも、俺がひたすらにフリーランを続けてきたからだと思うんで、より突き詰めていかないといけないなと。撮影して、映像や写真を創り出す、ということしか今はできないんですけど、少なくともその活動はしっかり続けていこうと思ってます」

        — 去年は北海道も行ったでしょ?

        G 「初めての北海道でしたね。PRANA PUNKSの撮影が目的なのに、"一席空いてるよ!"とナベさんが声を掛けてくれたんですよ。それも嬉しかったですし、ナベさんと北海道へ行ける、というのはもの凄く意味のあることだなと思ったんで」

        — 撮影はどうだった?

        G 「尻別岳を天海 洋さんと廣田鉄平さんと一緒に3日間やれたのがすごく良かったですね。同じ山を3日とも違うアプローチで違う斜面を滑るっていう。あとは盤渓ナイターや旭岳ロープウェイ、幌加内のロードサイドなどにも行けて、ずっと撮影もできたんで本当に良い時間だったし良い経験できました。北海道はめちゃくちゃ良い雪がコンスタントに全体的にあって、地形も豊かだし。素晴らしい場所ですよね」

        — 雪の北海道、斜面の長野、どちらが良い?

        G 「北海道にはまだ一度行っただけなんで、何も分かってないですからね。比較することなんて自分にはできないですけど、ただ地元に一生掛けてやり込める環境があるんで、そういう意味では長野ベースで居続けます」

        — では北信エリアで、今、やり込みたいスノーボーディングはある?

        G 「雰囲気の良い森の中の沢で撮影したい場所もまだまだあるし、あとはアルプス。そういう雪があってスティープな斜面へ行きたいですね。スティープな斜面を制覇する滑りの写真や映像に憧れて、滑り続けてきた感じもあるので。ロッキーな場所は実際危ない場所も多いけど、そういうロケーションは限られた人しか入っていけないと思うんで、そこで写真を残せれば、自分らしさを出していけると思ってます」

        — 241クルーとしてのアクションは何か考えている?

        G 「シン君とサトシさんとは、立山でのテントキャンプや、妙高での雪洞キャンプなど、毎シーズン何かしらのセッションを続けているんで、それを今まで通り241キャンプとして続けていきたいですし、サトシさんとは、シーズンを通してスティープでロングな斜面を求めて北信界隈を開拓しているんで、より頻繁に、今まで通り続けていきたいです」

        その道を極めようとする求道者には、どこかストイックな装いが感じられるケースが多いが、

        彼にはもっとチルなマインドとユーモアがある。あぁとことんスノーボーダーだな、と感じられるような。

        インタビューを終えた後、こんな言葉が口からこぼれた。

        「ゴー君ってさ、ほんとスノーボード・アニマルだね」

        過去に一度だけ同じことを伝えた相手がいるのを思い出した。美谷島 慎だ。

        まったく……兄弟揃ってイケてるよ。

        Go Nature Get Freedam !!

        https://www.youtube.com/channel/UChomM4IeBczLqC-83-RMQyw

        Text : Die Go

        Photo : Gaku Harada,