今後の人生でラグビーと関わるかもしれないきっかけ作り
「Canterbury Rugby Little Playfield(カンタベリーラグビーリトルプレイフィールド)」は、日本ラグビーフットボール協会(JRFU)主催のもと、ラグビー未経験の子ども達に遊びを通じて、ラグビーに触れられる機会を提供する取り組み。幼稚園児をはじめ、保護者や園の先生などがラグビーへの興味関心を高めるためのきっかけ作りという趣旨に賛同し、カンタベリーは本プログラムに協賛しているんです。
今回その記念すべき第一回となるCanterbury Rugby Little Playfieldに小学館アカデミーつなしま保育園が参加し、横浜市の協力のもと開催。その現地のレポートをお届けします。
会場となったのは鶴見川樽町公園。開催されたのが1月とあって晴れ模様ながらしっかりとした寒さ。ただ園児たちはその気候にも負けないほどの元気ハツラツな姿で、スタッフたちを圧倒。講師を務めたJRFUの向井陽さんと、スペシャルゲストのラグビー女子セブンズ元日本代表・桑井亜乃さんとの挨拶も大きな声で応えてくれました。
ここで園児たちにサプライズでラグビー日本代表モデルのユニフォームを用意。実際に袖を通して、見学に来ていた保護者や園の先生に自慢するなどご満悦な様子。
そして、またまたサプライズで日本ラグビーフットボール協会のマスコットであるレンジーも応援に駆けつけてくれたんです。ちなみに、白い髪の方は親の「レン」、赤い髪は子の「ジー」。園児と一緒にプログラムを体験してくれて、ボルテージもマックス!
みんなで準備体操をした後に、ラグビーならではの楕円型のボールを手に持ってバウンドさせたり、上に投げてキャッチしたり。どこに跳ねるか想像しながら、園児たちも必死にくらついていました。
そして、いよいよここからがプログラムスタート。最初に行われた「突破オニ」は講師陣に捕まらないようにゴールラインまでダッシュ。鬼ごっこ感覚で楽しみつつ、ラグビーのトライやボールを持って走るなどの要素を盛り込んだ内容となっているんです。
慣れてきたところでオニの数を増やして難易度をアップ。桑井さんや向井さんのアドバイスをしっかりと聞いた園児たちもしっかりと動きを学びトライ。
それだけに終わらず、まだトライしていない仲間にも応援の声をやめません。チームスポーツというラグビーならではの一体感を味わえるプログラムになっていました。
最後には守備の体験として、鬼側にも分かれてチーム戦。大きな掛け声でトライを目指す青帽子、それを阻止する黄色帽子でよーいスタート。
子どもたちの一喜一憂する声に会場も大いに盛り上がり、ユニフォーム姿もしっかりと様になっていました。
30分ほどのプログラムでしたが、楽しい時間もあっという間。仲間同士やレンジー、講師や先生とハイタッチして、お互いを讃えあって終了しました。
そして、今回Canterbury Rugby Little Playfieldに参加してくれた園児の皆んなにはJRFUを通してミニラグビーボールをプレゼント。1つ1つ手渡しで贈呈されました。
しっかりとプログラムを楽しんだ後にご褒美。この充実した内容に子どもたちの表情も満面の笑み。この一つの思い出が今後のラグビーと関わる人生の一歩になるかもしれません。
この活動が10年、20年先の未来へと繋がると嬉しい
そして、ここからは今回の主催であるJRFUの向井さんと寺廻さん、スペシャルゲストの桑井さん、小学館アカデミーつなしま保育園の佐藤さんにCanterbury Rugby Little Playfieldのお話を伺ってみました。
―まず今回の活動の印象はいかがですか?
「実は私がやりたい企画の1つだったんです。子どもたちにラグビーの楽しさだったり、ラグビーを知ってもらうきっかけ作りだったり、そういうことをずっとやりたいと思っていました。なので、その機会をいただけて嬉しかったです」
ーご自身はラグビーをどのように知ったのでしょうか?
「大学の授業で世界大会の正式種目になると聞いて知りました。今日参加してくれた保育園児たちと同じ年齢の時は知らなかったので、もっと前から知っていたらまた人生も変わっていたと思うんです。そのためにも知る機会は大切。ボールを持ってトライする楽しさとかをより伝えていきたいですね」
―Canterbury Rugby Little Playfieldに参加してみていかがでしたか?
「とにかく園児たちがめちゃくちゃ可愛かったです。この寒さも吹き飛ばしてくれるような笑顔で逆に元気づけられましたね。今日参加できて本当によかったです」
―今回の活動を受けた経緯を教えてください。
「もともとラグビーが大好きなスポーツだったのもありますが、先ほど行ったプログラムでも鬼ごっこのように普段子どもたちが遊んでる内容に近いところがあったんです。その身近な内容であれば園児たちも入り込みやすく、楽しめるかなと思い受けました。あとは、私自身もラグビーを浸透させていきたい気持ちもあってですね」
―実際受けるとなって園児の反応はいかがでしたか?
「レンジーが来るというのもありましたが、かなり喜んでいましたよ。日頃から体を動かすことが好きな子が多いので、ラグビーだけでなくサッカーや野球など、色々なスポーツを経験する機会は保護者さんの方からも取り組みを増やしていってほしいという声があったんです。子どもたちも『明日かな〜?』ってワクワクしていたり、ラグビーを予習してきた子もいました」
―それはうれしい反応ですね。やはりスポーツを通して学ぶことは多いと思いますか?
「確実に学びにはなっていると思います。ボールを使って考えながら動くというのはスポーツならでは。あとは今日の姿を見て、応援や失敗した子もみんなで支えるなどの仲間を思う気持ちは今後もラグビーを通して学んでほしいです。なので、このような機会があれば今後も積極的に参加したいですね」
―今回初めて取り組みとなりましたが、そもそもの経緯はどういった流れでしょうか?
「最近だと何をやるのかを決めるタイミングが小学校に入る前というお子さんが増えているんです。これまでも小学生を対象に体験会を行ってきましたが、より早く知ってもらいラグビーを選択肢に入れてもらうためのきっかけ作りとして企画しました」(寺廻さん)
―その企画の始動に向けて地方自治体やカンタベリーと協力した理由は?
「JARU単体だけだと、どうしても出来ることやリソースは限られてしまうんです。今後日本各地でやっていこうという思いがあるので、そこでカンタベリーさん、自治体のみなさんの協力は不可欠でした」(寺廻さん)
―向井さんは講師を務めましたが、プログラム内容はどのように決めたんですか?
「子どもたちが普段自分達でも遊べるような簡単な内容を意識しました。そこにボールを持ってちょっとラグビーの要素を入れたり、なんかいつもと違うワクワク感を演出したり、少しでも楽しんでもらえるように考えました」(向井さん)
―第一回も無事に終わりましたが、感想はいかがでしょうか?
「全体の協力もあって楽しそうな姿が見れてよかった。子どもたちもラグビーというと、タックルなどのコンタクトスポーツという面に目がいきがちですが、普段の遊びの延長にあると思ってもらえたかなと」(寺廻さん)
「実際に中でやってみたところ、こうやった方が面白いなどと子どもたちが自主的に内容を発展させていったんです。そういうのは今後自分たちでラグビーは楽しいなとか、ボールを持って動くスポーツは楽しいなと思ってもらうために重要だったポイントでしたね」(向井さん)
ー今回スペシャルゲストに桑井さんを起用した狙いは?
「桑井さんはカンタベリーのアンバサダーですし、ラグビーは男性のスポーツとイメージがつきがちですが、昨年、女子15人制の世界大会もあったんです。年々競技人口も増えてきているので、女性ラグビーの先駆者である桑井さんに入ってもらって、園児の女の子にも自分でも出来るんだって思ってもらいたかったんです」(寺廻さん)
―まだまだ始まったばかりですが、お二人の今後の目標があれば教えてください。
「個人的に何年先になるかわからないんですけど、この活動をきっかけにラグビーを始めた子が代表選手になったりするといいなと。カンタベリーのボールからスタートして、ジャージを着て、日本代表になった姿が10年、20年先に見えると嬉しい」(寺廻さん)
「参加してもらって、ラグビーボールを持って遊ぶのは楽しいから、好きだなと思う。その好きだから頑張れたなどという思いから、いろいろなことにチャレンジしてほしい。そして、その経験を通してラグビーを生涯スポーツとして選んでくれたら嬉しいですね」(向井さん)
2023年より始まったCanterbury Rugby Little Playfield。ラグビーをきっかけに楽しんで学ぶ機会を提供しつつ、認知を広めていく活動は継続して行われていきます。次回は、トンガ代表がキャンプを行ったこともある高知県で開催されます。その次はあなたの街かも。そんな期待を胸に今後の動向にもご注目ください。
向井陽
Yo Mukai
岩手県釜石市を拠点とし、ジャパンラグビートップチャレンジリーグに所属する地域型クラブチーム釜石シーウェイブスR.F.Cでのプレーを幼稚園勤務と7年間両立。引退後は、日本ラグビーフットボール協会リソースコーチ、強化コーチとして全国各地で子ども達にラグビー、タグラグビーの指導を行う。また、秋山・学びの保育園の園長を務めるなど、多方面から子どもの成長に携わる。
桑井亜乃
Ano Kuwai
大学卒業後の2012年からラグビーを始め、2013年には女子セブンス日本代表として活躍。2016 年リオデジャネイロオリンピックに出場し、32キャップを持つ日本女子ラグビーの先駆者。現役引退後はレフリーへの道を進み、アムステルダムやポーランドで開催された大会でも務めた。そのほかにも解説、イベント、普及活動、講演会などラグビーに関わる仕事を中心に活動中。