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        interview 02

        今が一番、全てにおいて素直な自分でいられている

        Kaoru Ikehata | 池畑薫

        ボディプロデューサー

        ―池畑さんの普段の1日の始まりは?

        朝は7:30ごろに起きて、洗濯機を回しながら朝食の準備をします。ヨーグルトとフルーツ、パン、コーヒーというようなシンプルな内容ですが、毎日、ちゃんと朝食に向き合うようにしています。夕食は仕事で遅くなることもありますし、朝食のときが最もパートナーと向き合える時間なので、必ず一緒に摂るようにしています。家を出るのは9:30ごろ。バタバタしたくないので余裕を持って準備するように心がけています。

        ―1日の終え方は?

        例外もありますが、基本的には20時から23時の間に帰宅して夕食を摂り、シャワーを浴びてから、YouTubeを見たり読書したりしてリラックスします。そんなふうに完全にオフモードに切り替えてから就寝します。疲れも情報も翌日に持ち越したくないので、寝る直前に携帯を見ないようにしています。

        ―日々の忙しさの中で、ご自身をどんなふうにメンテナンスしていますか?

        あまり特別なことはしていないのですが、家で食べるにしても外食するにしても、食事のバランスには気をつけています。あとは、30代後半になって子宮頸がん検査で引っかかったことを機に、自分をもっと労らないといけないな、と考えるようになりました。そうなるのには何か理由があるだろうと自分の生活を振り返ってみたら、仕事しすぎていたり、無理をしていたことに気づいたんです。若いときは体力で誤魔化せることも、年を重ねるとそうもいかなくなります。職業柄、クライアントの方々の都合に必要以上に合わせようとしていましたが、本来、一番優先すべきは自分と家族。それを再認識してからは、思い切って必ず週2日、週末に休みを取るように。変化を不安に感じることは誰にでもあると思いますが、やってみたら意外と大丈夫だった、ということがわかりました。

        ―自分は何が好きなのかを知ることと同様に、嫌なことを自覚することもとても大切だと思います。池畑さんはそうした「嫌なこと」にどのように対処していますか?

        私は自分の時間をコントロールできないことにストレスを感じるんだ、ということに気づいてからは、他人に合わせすぎないようにすることで随分楽になりました。例えば、フリーランスでお仕事をしていると忙しさにバラツキがあり、ポッカリと空きが出てしまう事もあります。以前は忙しくしていないと不安になったりもしましたが、素直に受け入れるようにしたことで、自分の心に余裕ができました。それまでおざなりにしていた「自分について考える時間」ができたのは、大きなプラスでした。

        ―ちょっと調子が悪いな、という日の過ごし方を教えてください。

        とにかく寝ます! 本当に体調を崩してしまってから回復するのは大変なので、日々、自分の様子を見ながら常に調整するよう心がけています。もともと体が弱いことがコンプレックスでしたが、そうすることで、体調も安定してレジリエンスが増したように思います。年齢を重ねれば重ねるほど、肩こりなどの小さな不調に身体が慣れてしまわないよう、不調や不快に対する感度を常に良くしておくことが大事であると痛感します。

        ―私たちは社会的な生き物ですが、池畑さんが人間関係において大切にしていることは?

        人間関係のアドバイスでは、よく「他者の良いところを見よう!」と言われたりしますよね。もちろんそれは大切なことですが、私は同時に、何が嫌なのか、なぜ嫌だと思ったのかに向き合うことも重要だと考えています。それに対峙することで自分をより良く知ることができるし、心の整理ができるんです。同じように、つい忘れてしまいがちな、その瞬間の思いや直感も軽視しないように心がけています。

        一方で、性格や感情といった内面とは全く別のベクトルですが、仕事においてはクライアントの方々の身体が持つ「素晴らしい部分」や「可能性」を引き出すことに最も重きを置いています。みなさんそれぞれに個性があり、クライアントの方々との関わりを通じて私とは違う身体、経験、人生を知ることができるのは、この仕事の最も面白い部分だと思います。

        ―年齢を重ねることに不安を抱くことはありますか?

        20代のころからメイクやファッションといった「若さの美」のようなものには興味がなく、むしろ80歳の自分を見てみたいという思いの方が強かったんです(笑)。80歳になっても美しい姿勢で立っていたいし、歩いていたい。年を重ねた今、これまで以上に、年齢を重ねてこそ見えるものがあるということを感じていますし、他者の気持ちもより理解できるようになった。そんな経験が重なっていって、自分が思い描く80歳になれたらいいなと思います。

        ―では池畑さんが感じる「美しさ」とは?

        背骨が一つひとつ動くとか、肋骨がきちんと動くとか、そういった外見からは見えないような部分に美しさを感じます。頑張って外側の筋肉を鍛えても内側は脆い、というのは、本当の美しさではありませんから。あとは、常にハッピーで楽観的な人、という意味ではなく、心に余裕があり、ちょっとしたことに楽しさを感じることのできる、前向きな人に憧れます。つまり外見も内面も、緩めておかないと必要なものが入ってこないんだと思うんです。

        ―過去の失敗から学んだことはありますか?

        あまり大胆な性格ではないからかもしれませんが、大きな失敗ってないんです。だからむしろ、過去の自分に「もうちょっと自分を信じてあげて」って言ってあげたい。大きな決断をしたり思い切った行動に出るときほど、自分との対話が大切だと思うんですが、私はそれをあまり重視してこなかったのかもしれません。だから、その時間を大切にしてってアドバイスしてあげたいですね。そう考えると、今が一番、全てにおいて素直な自分でいられていると思います。