Goldwin Japan Stories
1951年創業のゴールドウイン社が、70年に渡る開発の歴史のなかで培ったテクノロジーを駆使して合理性、快適性、利便性を備えたプロダクトを提案するのが、社名を冠したオリジナルブランド「Goldwin」だ。同ブランドからリリースしている高機能ベースレイヤーコレクションに搭載している独自技術の「C3fitテクノロジー」は人間の身体構造や動きに基づいてパフォーマンスおよびリカバリーをサポートするというもので、Compression、Conditioning、Comfortという3つの「C」をコンセプトに掲げている。スポーツを愛する人の24時間を支える「C3fitテクノロジー」誕生の背景を探ってみよう。
Edited by PAPERSKY
ゴールドウイン社が独自に開発した高機能ベースレイヤーの開発技術、「C3fitテクノロジー」がデビューしたのは2009年のことだ。当時はコンプレッションウエア・ムーブメントがスポーツシーンを席巻していて、各社がオリジナルのコンプレッションウエア開発にしのぎを削っていた。ゴールドウイン社傘下の各ブランドもアウトドア、テニス、バスケットボールと、それぞれのフィールドに特化したコンプレッションウエアを開発していたのだが、どんなスポーツを行うにしろ、プレーヤーである人間の身体構造は共通している。そこで、あらゆるスポーツに対応するベースレイヤーを開発するべく、これに特化した新しい技術を確立することになったのだ。
商品企画マネージャーの平山壮一さんら開発チームが目指したのは、あらゆるスポーツにおいてその人のパフォーマンスを向上させる、そんな機能だった。
「すでにさまざまなブランドからコンプレッションアンダーウエアが出ていてGoldwinはその分野では最後発のブランドでしたから、とにかくどこよりもいいものをお届けしたいという気持ちで2年に渡って独自技術・機能の開発を行いました。製造においても、このシリーズの主力の商品群に関しては自分たちが思い描いた機能を実現するため、糸のレベルからメイド・イン・ジャパンにこだわりました。例えば、象徴的商品である「Inspiration Long Tights」、「Inspiration Calf Sleeves」については、生地の編み立ては富山県の、染色は群馬県の、縫製は長崎県の工場が手がけてくれています。プロトタイプについては僕自身がテスターとしてロードランニング、トレイルランニング、トレッキングを繰り返し、モニタリングを重ねました。試作と修正を重ねてようやく完成したのです」
「Inspiration Long Tights」、「Inspiration Calf Sleeves」に搭載した、「C3fitテクノロジー」ならではの独自技術や機能といえば、特注で作らせた日本人の脚型を用いて設計した段階着圧が挙げられる。そのほかにも、人間の身体に自然にフィットする人間工学に基づいた立体裁断や、高い運動追従性を実現する生地の伸度とパターンメイキングにもこだわり抜いた。肌馴染みのいいナイロン生地は長時間穿いていても違和感を感じさせず、肌あたりがより快適であるよう、生地の縫い目にはゴールドウイン社の特許技術であるスマートシームをあしらっている。
さまざまな過程を経て完成したプロダクトの、血行促進やむくみの軽減といった効果をきちんと発信するために、主力アイテムである「Inspiration Calf Sleeves」と「Inspiration Long Tights」を一般医療機器・弾性ストッキングとして届出することにした。この届出進めることは製造においても、管理や販売においても特別なルールを課せられることになるためハードルは高かったが、「正しいものを作り、その効果を正しく伝える」ためには欠かせないものであると考えた。
何度も製造の現場に足を運んだという平山さんが嬉しかったのは、製造に携わる各工場のスタッフたちも、いつしか共にブランドを育てる気概でものづくりに当たってくれたこと。現場とコミュニケーションを重ねて妥協のないものづくりを貫いたゆえんである。
「ブランドのコンセプトを飽きずに口にしていたら「Goldwin」や「C3fitテクノロジー」にかけるものづくりの思いが伝わって、作り手のみなさんが僕たちの“仲間”になってくれた。心強かったですね」
ようやく完成した「Inspiration Calf Sleeves」と「Inspiration Long Tights」は、世界各地を転戦するトレイルランナーやラガーマンら、トップアスリートから「遠征やレース、試合に欠かせないアイテム」と評価されるなど、高機能ベースレイヤー市場で存在感を発揮するようになる。現在はパフォーマンス時だけでなく、就寝時や休息時などリラクゼーションのシーンに特化したコンディショニングウエアもリリース。「C3fitテクノロジー」により、「Goldwin」はパフォーマンスアップから日常のリカバリーまで、スポーツを愛する人の24時間に寄り添うトータルブランドとなった。
とはいえ、「Goldwin」が進化の歩みを止めることはない。富山県にあるゴールドウイン社の開発拠点、「ゴールドウイン テック・ラボ」では先進技術を駆使して日夜、さまざまな研究開発が進められている。
「たとえば心拍計測機能を備えたウエアの開発などヘルステックの分野との連携も考えていますし、熱中症対策ウエアのように社会問題の解決に貢献できるようなプロダクトも手がけてみたい。もちろん、パフォーマンス時のサポートに関してもまだまだ開発の余地があると感じています。これからも自分たちの原点を忘れず、さらに高みをめざしたものづくりを行っていきます」