2022年10月、Goldwinアスリートとして新たに活動をスタートしたトレイルランナー “ディラン・ボウマン”
は、カリフォルニア州サンフランシスコの郊外、ダウンタウンから車で30分ほどの場所にある自然豊かな丘陵地、マリン・カウンティーに新居を構え、産まれたばかりの息子ローズと妻ハーモニー、2頭の愛犬と共に暮らしている。
昨年、息子が産まれるタイミングで、アスリートとしての活動を一時的にスローダウンさせ、現在は家庭を最優先とした生活を送っているディランではあるが、マリン・カウンティーに移ってきた理由の一つは、この土地がトレーニングに集中しやすい環境だからでもある。
「マリン・カウンティーは、トレーニングに最適の場所なんだ。僕の家からはトレイルヘッドまで 5 分とかからないし、そこから色々なバリエーションを楽しめるトレイルが脈々と続いていて、長距離の厳しいトレーニングをすることもできる。街までのアクセスも良いし、ランニングコミュニティーや文化も発展している。トレイルランナーにとっては世界一の環境だと思うよ!」
ディラン・ボウマンというランナーの魅力はアスリートとしての側面だけでは無い。トレイルランニングへの情熱と想いを共有する仲間と一緒に会社を設立し“FREETRAIL”
の名の下に、トレイルランニングの魅力を次世代に繋げる事を目的として、SNSを使った知識やマインドの普及、更にはレースディレクターとして、一般ランナーとのコミュニケーションをはかるなど、オンとオフの両面からトレイルランニングの魅力を伝える
“メディアパーソナリティー” でもあるのだ。
そんな彼が作った “FREETRAIL”のステッカーには、彼のトレイルランニングへの想いがストレートに表現されたメッセージがデザインされている。
「トレイルランニングは自由と平和への感覚を高めてくれるスポーツだと思う。そのような人生経験へのアクセスを可能にするパワフルで特別な存在だと感じている。わずかな道具があれば誰でも挑戦できるし、継続的なトレーニングが確実に効果として体感できる。当然、レースでは選手同士が競い合うことになるけれど、僕の場合、レースで競い合ったライバルとはその後に親しい友人関係になれることがほとんどなんだ。レースという場で競い合うために必要なコミットメントや、そのランナーが積み重ねてきた努力は簡単に想像できるからね。もちろんレースには勝ちたいけれど、競争相手を心から尊敬できることもトレイルランニングの魅力の一つかもしれない。」
トレイルランナーが自分自身の挑戦に打ち勝ち、特別な人生経験を得るために、ディランが力を注ぐもう一つのプロジェクトはプロダクト開発である。自身のスポンサーブランドとの関係性は、広告塔としてのアスリートという立場だけではなく、相互的なサポートによって一緒にトレイルランニング文化を発展させ、伝えていく
“パートナー” という関係を目指しているようにも感じられる。
「Goldwinとのパートナーシップはまだ始まったばかりだけど、既に東京と富山でミーティングを行い、とても刺激的な経験をさせてもらっている。彼らのプロダクト開発はプロセスの細部にまで配慮が行き届いている事にとても刺激を受けたし、日本らしさを感じる開発への取り組み方は、個人的に僕が目指してきた仕事への姿勢と、とても近く感じて、自分にとっては自然と親近感が湧き起こったんだ。」
「彼らのデザインに対する細部へのこだわりは言葉で説明するのが難しく、実際に体験してもらうしかないのだけど、“FREETRAIL”の活動がGoldwinブランドをトレイルランニングのコアなカルチャーやコミュニティーに近づけることができると思うから、僕らは素晴らしいパートナー関係を築けると思っている。
」
「僕にとって良いプロダクトとは、自分の身体の延長のように感じられるもの、つまりトレイルに出たときに何も考えず自然な状態で走れる道具なんだ。トレイルランニングが特別なスポーツだと言えるのは、このアクティビティーに内在する自由な感覚だからね。」
2023年3月27日、ディランはポートランドの郊外にあるレンタル倉庫にいた。31日から行われるトレイルランニングレース “GORGE WATERFALLS” の準備のために関係者が集まって資材の積み込みを行なうためだ。“GORGE WATERFALLS” はオレゴン州を中心にトレイルランニングレースを主催する団体 “DAYBREAKRACING”のレースを “FREETRAIL” がレースディレクターとしてサポートする形で行われる。関係者といっても、倉庫に集まっていたのはごく僅かな人数だ。 少数精鋭で大会運営に必要な全ての資材をレンタルトラックに積み込み、 翌日には100kレースのコースマーキングを行う。大会期間中は150人のボランティア協力を得て、合計1200人弱の参加ランナーに最高のレース環境を提供する。ディランは時に自らスマートフォンとジンバルを持って選手と共に走り、時にマイクを持って選手をゴールゲートに迎え入れる。レースディレクターとして全力で選手をサポートするのだ。
「プロトレイルランナーとして活動してきた10年半もの間、たくさんの意味で、僕は本当に恵まれた環境の中で自分の夢と向き合ってこれたと思っている。世界中を旅して各地のレースに出場するなかで、信じられないほどパワフルな人生経験を積むことができた。僕にとって、それは憧れの人生というものだったけれど、今は“FREETRAIL” の活動を通して多くの人たちに経験を共有したいと思っている。トレイルランニングという素晴らしいスポーツを広めることが僕の使命なんだと本気で思っているんだ。自然の中で自分自身に挑戦することで、肉体的にも精神的にも得られるポジティブな恩恵の全てを伝えたいと思っているんだ。」
「アウトドアと繋がり、コミュニティーと繋がる。この2つの繋がりは人間にとって根源的な欲求だと思っているのだけど、僕は、全ての人がトレイルランニングを通してこの2つの繋がりから利益を得ることができると思うんだ。自然に入り、自分を追い込み、1人で考え、挑戦し、自分には困難を乗り越える能力がある事を照明する。そして、他の誰かと繋がり、彼らの挑戦から学ぶために、彼らのストーリーを理解し、自分が未だ知らない才能や技術がある事に気づく。」
「トレイルランニングは人にインスピレーションを与え、友情を与え、人間にとって大切な社会的感覚やエネルギーを与えてくれる。それが僕がこのスポーツに関わる中で見つけた2つの繋がりなんだよ」
レース開催中、ディランは全てのカテゴリーのレースにおいて、スタートラインで選手を見送った。そして、トレイルで選手を待ち受け、激励し、時には一緒に走りながらその模様をライブで配信した。更に、ゴールゲートでは全ての選手を迎え入れ、マイクを片手に会場を盛り上げ、ゴールに帰ってくる選手を祝福した。
レースディレクターとしても、人並外れたバイタリティーを発揮して動き回る彼の姿からは、彼がインタビューやSNSを通して語る言葉以上の説得力があり、彼の情熱や使命感と、トレイルランニングで培われたのであろう人間性が感じられた。
そんな彼に、アスリートとしてのビジョンを聞いた。
「今はアスリートしてのモチベーションが全てでは無いし、この先の人生では、メディアとしてトレイルランニングの魅力を伝えることに、より多くの情熱を注ぐようになっていくと思うのだけど、まだまだ自分にはもう一度世界のトップで競い合う能力が充分に残っていると感じているし、アスリートとして、競技の中で自分を追い込むことでしかない得られない特別な気づきを探していきたいと思っている。」
「先ずは大好きな日本で開催される “ULTRA-TRAIL Mt.FUJI” で70kのレース “KAI”に出場する。そこで良い結果を出し、コンディションを上げて夏の “HARDROCK
100 ENDURANCE RUN”
に出場して、最高のパフォーマンスを出せるようにしたいと思っている。 “HARDROCK 100 ENDURANCE RUN”
は参加すること自体がとても難しい特別なレースで、世界中からトップランナーが集まる伝説的なレースとしても知られている。2021年には運良く当時のコースレコードを更新することができたレースでもあるし、そういう意味でも自分にとっては特別なレースなんだ。」
「僕は長年アスリートとして生きてきたけど、レースディレクターとしてトレイルランニングに関わると、いつもとは違った喜びが生まれるのを感じるんだ。この場にいる参加者が素晴らしい体験をするために、運営側の人間として強く責任を感じながら仕事をしている。
「挑戦するランナーの姿、特にいつもは競い合っている仲間達の姿を見ていると、自分自身が本格的に競技に復帰することがとても楽しみになるし、また自分を追い込み、挑戦しようという気持ちが高くなる。だから今、僕のモチベーションはかなり高いよ!」
1986 年 アメリカ・ネバダ州生まれ、コロラド州で育つ。
幼少期〜大学卒業まではラクロスをプレー。ラクロスを引退したあと、フルマラソンを経験し、トレイルランニングレースに参戦。北米、アジア、ヨーロッパ、オセアニアの主要レースで優勝。10年以上にわたって世界で活躍を続けるウルトラランナー。
現在はアスリートとしての活動を続ける傍ら、トレイルランニングの魅力を次世代に繋げることを目的として、「FREETRAIL」を立ち上げ、メディアでの発信やレースディレクター等を行いメディアパーソナリティとしても活動している。
2022年よりGoldwinとアスリートサポート契約。
2015年 Ultra-Trail Australia 100k 1位
2015年 Tarawera Ultramarathon 100k 1位
2016年 Ultra-Trail Mount Fuji 1位
2017年 100 Miles of Istria 1位
2017年 UTMB 7位
2018年 Ultra-Trail Mount Fuji 1位
2018年 Tarawera Ultramarathon 100k 1位
2021年 Hardrock 100mile 2位