鍵井靖章
鍵井靖章
https://kagii.jp/
水中写真家。1993年よりオーストラリア、伊豆、モルディブを拠点に活動し、水中撮影に励む。1998年に帰国し、フリーランスフォトグラファーとして独立。自然のリズムに寄り添い、生き物にできるだけストレスを与えない撮影スタイルを心がける。大胆かつグラフィカルな水中写真で多くの人々を魅了し、多彩な視点と色使いで水中写真のポピュラリズムを狙う。特に、3.11の震災以降は、被災地の海に息づく生命を定期的に記録し続けている。代表作に「unknown」、「不思議の国の海」など多数。2013年と2015年には日経ナショナルジオグラフィックで優秀賞を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。TBS「情熱大陸」や 「クレイジージャーニー」などにも出演。

Index

「Climate Change Art Project」は、アートを通じて「水」にまつわる目に見えない環境課題を可視化し、人々がその問題について知り、考えるきっかけとなるプロダクトを生み出すプロジェクトです。

今回、プロダクトのヴィジュアルを手がけてくださったのは、水中写真家の鍵井靖章さん。30年以上にわたり、カメラを通して環境問題に真摯に向き合い続けてきた鍵井さんに、このプロダクトに込めた想いを伺いました。

美しい海の中に潜む現実を知り、意識を変えていくことの重要性

海の現実と希望を映し出す——モノづくりでつなぐ海の未来
海底に鎮座する船とその側を泳ぐウミガメ。「物言わぬ生き物たちは、文句も言わず、僕たちが水中に放棄したものと共存してくれています。その寛容さに、僕たちはもっと気づくべきだと思います(鍵井さん)」

僕は30年以上、美しい海の写真を撮り続けてきましたが、水中写真家として今こそ環境問題に真剣に向き合うべきだと強く感じています。2011年の東日本大震災以降、その現状を撮り続けてきましたが、10年が経過した頃、また違った海を取り巻く事象にもレンズを向け始めました。

そんな中、ある展示をきっかけに、海に行くたびに海洋ごみを拾うようになったんです。海岸で周囲の人々をごみ拾いに誘うと、誰一人嫌な顔をせず、むしろ積極的に協力してくれました。それは、僕にとって大きな気づきとなりました。自然の中で過ごす人々は、心のどこかで自然に恩返しをしたいと思っていることを再確認したんです。ごみを拾う行為そのものも大切ですが、それによって人々の意識が変わることが、さらに重要な一歩だと感じました。

一見美しい海の中にも、大量の海洋ごみが広がっているという現実があります。でも、それを実際に水中で目の当たりにしないと、多くの人にはその深刻さが伝わらないことが多いと感じます。以前行った海洋ごみをテーマにした展示で、写真を単なる写真にとどめずインスタレーションという形で表現したのは、海で起きている現実を、より多くの人にリアルに感じてもらいたいという思いがあったからです。

ファインダー越しに見た、生命の強さと希望

「Climate Change Art Project」として発売されたロングTシャツとスウェットには、3つの海の世界が映し出されています。それぞれの写真は、一見美しく見えますが、その中には海が抱える現実を伝えるメッセージが隠されています。

海の現実と希望を映し出す——モノづくりでつなぐ海の未来
それぞれの作品には、鍵井さんの息子・瑠詩(りうた)さんが綴った詩が添えられている。

僕の写真には、たとえ震災後の海であっても、どこかに“希望”を感じてもらいたいという想いを込めています。

例えば、虹色のように輝く水中写真は、愛媛県で発生した赤潮を捉えたもの。これは僕たちが作り出した環境の一部かもしれません。写真中央には魚の群れが写っていますが、過酷な環境下でもたくましく生き抜く姿に強く心を動かされました。希望を探していた時、ファインダー越しにこの魚の集団が見えた瞬間、これこそが自分が表現すべきものだと感じたんです。

この写真、実はプラスチックごみなんです。30年間海を撮り続けてきた僕にとって、たとえ海中に浮かぶのがプラスチックであっても、それは大切な存在です。魚を撮る時と同じ情熱でシャッターを切ります。この写真を撮った当時、プラスチックごみがまるで一匹の魚のように感じられ、一つの命を捉えているかのようでした。おそらく、このごみにも何かしらの意志を感じていたのかもしれません。

想いを身にまとうことが、海の未来につながる一歩となる

海の現実と希望を映し出す——モノづくりでつなぐ海の未来

僕の好きな言葉に「Butterfly effect(バタフライ効果)」というものがあります。小さな行動や出来事が、やがて大きな影響を及ぼすという考えです。自分自身の小さな行動が巡り巡って、どこかで大きな力となることを知り、そして実感できた時、僕の心はすごく軽くなりました。

このロングTシャツやトレーナーを着ることで少しでも多くの方が海洋環境問題に関心を持ち、その意識が次第に広がり、大きな変化を生むきっかけになれば嬉しいです。

Message

ヘリーハンセンは、140年以上にわたり水と海とともに歩んできたブランドとして、将来起こりうる地球環境への負担や心配を解決していきたいと考えています。
今回、鍵井靖章さんが手がけた3つの作品には、海洋環境問題への強いメッセージが込められています。これらのメッセージを、海洋漂着ゴミを原料としたリサイクルポリエステル糸「UpDRIFT」使用したロングTシャツと、海洋回収リサイクルポリエステルを一部素材に使用したトレーナーにのせ、お届けします。日常的に身にまとう洋服を通じて、少しでも海洋環境問題について知るきっかけを生み出し、皆さんと一緒に私たちにできることを考えていけたらと思っています。

Event: EXHIBITION

鍵井靖章 氏 写真展開催
Yasuaki Kagii Photo Exhibition

私たちの目の届かない深い海の中で、何が起きているのでしょうか。
水面下で進行する環境破壊は、時に目に見える形で私たちに訴えかけることはなく、静かに、しかし確実にその姿を変えています。
漂着するごみのように、明確な形で現れる破壊だけでなく、海中の環境もまた、私たちが気づかぬうちに悪化の一途をたどっています。
今回の写真展では、普段目にすることのできない「水中」に関わる海洋環境悪化を可視化しています。
水中フォトグラファー 鍵井氏の美しい作品を通じて、海の世界に入り込むと同時に、日常では気づくことのない海の中の現実を知ることを目的としています。
このアートプロジェクトは、作品を通じて私たちに問いかけます。
見えない環境問題を「自分ごと」として感じられた時、どんな行動が生まれるでしょうか。
この展示が、そのきっかけとなることを願っています。

海の現実と希望を映し出す——モノづくりでつなぐ海の未来

開催期間:2024年10月19日(土) 11月24日(日)
場所:HELLY HANSEN OCEAN葉山店
〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内50−2 葉山マリーナ

トークイベント開催

鍵井靖章 氏 × 田口康大 氏[みなとラボ]
今回の作品について、日本の海の現状、海洋環境を取り巻くさまざまなこと。
お二人のみてきたことについてトークセッションをおこないます。
日時:2024年11月16日(土)14:00 START
場所:HELLY HANSEN OCEAN葉山店 店内スペース

Products

L/S Climate Change Tee
Price
¥9900 (税込)
Size
S/M/L/XL
Color
WHITE/DEEP NAVY/BLACK

L/S Climate Change Tee

水中写真家の鍵井靖章さんによる3つの作品をデザインに落とし込んだバックプリントロングTシャツ。

3つの作品には、海の生命の美しさや、私たちの目に見えない海中の現実を知ってもらいたいというメッセージが込められています。
また、環境への配慮として、石垣島でのビーチクリーン活動で回収した海洋漂着ゴミを原料にしたリサイクルポリエステル糸「UpDRIFT」を採用。表面はコットン、裏面はポリエステルを使用したプレーティング天竺生地で、ドライなタッチ感が特徴。季節を問わずに着用できる一枚です。

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L/S Climate Change Sweat Crew
Price
¥14300 (税込)
Size
S/M/L/XL
Color
WHITE/DEEP NAVY/BLACK

L/S Climate Change Sweat Crew

水中写真家の鍵井靖章さんによる3つの作品をデザインに落とし込んだバックプリントトレーナー。3つの作品には、海の生命の美しさや、私たちの目に見えない海中の現実を知ってもらいたいというメッセージが込められています。

コットンとポリエステルの混紡により、ナチュラルな風合いと速乾性を兼ね備えています。さらに、環境への配慮として、海洋プラスチックゴミを再生した100%リサイクルポリエステルを一部の素材に使用し、環境負荷の軽減を目指しています。

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Words

赤潮

主に植物プランクトンの異常繁殖によって海水の色が赤く変わる現象のこと。赤潮は、海水が富栄養化した環境で発生します。人間が使用した洗剤や農薬、肥料などに含まれる窒素やリン酸が、プランクトンの栄養源となります。富栄養化した海水が太陽の光を沢山浴びるとプランクトンが大量に繁殖し、同時に呼吸することで水中の酸素が減少し、他の生物が呼吸できなくなり死んでしまうなど、生態系に深刻な影響を及ぼしています。

海洋プラスチック問題

海洋プラスチック問題とは、適切に処理されずに自然界に流出したプラスチックが、海の生態系や環境を破壊している深刻な問題のこと。WWFジャパンによると、現在、世界の海に存在するとされるプラスチックごみは約1億5,000万トンに達しており、毎年少なくとも800万トンものプラスチックごみが新たに流入していると推定されています。これらのプラスチックごみは、人体や自然環境にも悪影響を及ぼすため、近年では世界で解決に向けた取り組みが進められています。 私たち一人ひとりの行動も、問題解決に向けて欠かせません。