ABOUT Vendée Globe
ヴァンデ・グローブとは?
ヴァンデ・グローブとは?
単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」。たった一人でヨットに乗り込み、誰の助けもなく、補給も受けず、どこの港にも寄らず世界一周するこのヨットレースは、世界で最も過酷なヨットレースと呼ばれている。HELLY HANSENアスリートの白石康次郎氏は、2020年大会、メインセイルが破損するアクシデントに見舞われながらも、なんとか自力で補修し、無事に完走を果たし、アジア勢初の完走者になるという偉業を成し遂げた。今大会は、新しい艇で再びヴァンデ・グローブに挑む。
全長60フィート(約18.28m)のヨットにたった一人で乗り込み、風と波、潮の力だけで船を走らせ、無寄港・無補給で世界一周する世界で最も過酷と呼ばれるヨットレースである。フランス西部のレ・サーブル・ドロンヌをスタートして大西洋を南下、東まわりで南氷洋をまわり、フィニッシュ地はスタート地と同じくレ・サーブル・ドロンヌ。総航行距離は45,000km(24,300海里)。
第1回の1989年大会の優勝者の記録は109日で世界1周を果たし、その記録は年々更新され、前回の2016-2017大会の優勝者の記録は74日間となっており、そのレコードは艇の開発技術の進化とともに回を追うごとに縮まってる。ちなみに過去9回開催でフランス人以外の優勝者はいない。
Vendée Globe COURSE
ヴァンデ・グローブのコース
ヴァンデ・グローブのコース
ヴァンデ・グローブのコースは、
フランス北西部ヴァンデ県の
レ・サーブル・ドロンヌをスタートし、
地球を一周、
総航行距離45,000km(24,300海里)を走り、
再びレ・サーブル・ドロンヌへ戻るもの。
レ・サーブル・ドロンヌをスタート後、まずは大西洋を南下。赤道を超えてアフリカ大陸南端の喜望峰を超え東へ。オーストラリア、ニュージーランドの南を通り、南極大陸をぐるりと一周。南アメリカ大陸南端のケープホーンを超えて北上。赤道を超え、再び大西洋に戻り、レ・サーブル・ドロンヌ、を目指す。
1989年に開催された第1回大会の優勝者は109日間でこのコースを回った。第2回は110日、第3回は105日間、第4回は93日間、第5回は87日間、第6回は84日間、第7回は78日間、第8回は74日間、そして前回の第9回大会は80日間で世界を一周している。
つまり、年々艇の性能が上がり、航行速度が上がっているということ。第1回開催当時から世界で最も過酷な外洋レースの一つされていたヴァンデ・グローブだが、年を追うごとに選手にかかる負担は増している。もちろん、道具の進化、通信手段の進化により便利になった部分は多いが、荒れ狂う自然と単独で対峙する孤独な世界一周レースは、選手にさまざまなプレッシャーを与える。
白石康次郎のコース戦略
1アゾレス高気圧
アゾレス諸島付近に発生する高気圧の位置を見てコースを選択。また序盤のこのエリアは、艇の不具合など最もトラブルが発生しやすいというエリア。
2大きな選択
赤道無風帯のどちら側を通るか。風の吹く南アメリカ大陸側か、最短距離のアフリカ大陸側か。
3赤道無風帯
北東貿易風と南東貿易風が吹き込み風が相殺され無風帯を生む。また最近、巨大な藻の発生のニュースもあり神経を使うエリアとなっている。
4喜望峰
緯度40度線を超え、「吠える40度」と呼ばれるエリア。最初の難関所。
5アイスゾーン
南極周回エリア。氷河が流れる危険なエリア。レース委員会から氷河の北上状況を見て、航行緯度制限が発表される。また追い風の強風が吹くこのエリアを、最新世代のIMOCA60でレースを行うのは初めてのこと。どのようなトラブルが発生するか予断は許さない。
6ホーン岬
緯度50度を超え、「狂う50度」と呼ばれる最大の難所。
7ラストレグ
多くの難所を超え、穏やかなエリアへ。順位変動は少なく全艇一気にゴールを目指す。
8強風域
大西洋北側の強風域を通過するのがセオリー。風向風速予測を見ながら航行しフィニッシュへ。
PROFILE
白石 康次郎
1967年5月8日、東京生まれ鎌倉育ち。
神奈川県立三崎水産高等学校
(現・神奈川県立海洋科学高等学校)出身
少年時代に船で海を渡るという夢を抱き、高校在学中に単独世界一周ヨットレースで優勝した故・多田雄幸氏に弟子入り。レースをサポートしながら修行を積む。1994年、当時26歳で、ヨットによる単独無寄港無補給世界一周の史上最年少記録(当時)を樹立。その他数々のヨットレースやアドベンチャーレースでも活躍した。
白石康次郎氏が所属するセーリングチームの詳細は、
こちらからご確認下さい。
IMOCA60
ヴァンデ・グローブを走る
ヨットとは?
ヴァンデ・グローブ
を走るヨットとは?
単独無寄港無補給世界1周レース、ヴァンデ・グローブ2024-2025の採用艇、IMOCA60(イモカ60)とはどんなヨットなのだろう? その全長は60フィート(18.28m)。IMOCA協会によってさまざまな数値が定められたボックスルールに準ずる艇で、その内訳は以下の通り。
・全長=59~60ft
・喫水(深さ)=4.5m以内
・全幅=5.85m以内
・エアドラフト(水面からの高さ)=29m以内
この指定されたサイズのなかで、ボートデザイナーたちは知恵をしぼり、最高のパフォーマンスを発揮できるヨットを考え出す。基本的なヨットの構造は、水面上にあるセール(帆)と、水面下にあるラダー(舵)、キール(横流れと傾きを抑える竜骨、バラスト)、ダガーボード(横流れを防ぐ差し板)に分かれる。
セールは、1枚のメインセール、複数枚のヘッドセールに分かれ、時には3枚のセールを展開して、風から受ける力を推進力に変えて、ヨットは力強く進む。キールは主に風による横倒れを正し、ダガーボートは横流れを正す役割だ。
これまでのデザイン競争は、セールとキールに関する工夫に重きが置かれたが、近年ではダガーボードの工夫が過熱し、本来垂直に差すダガーボートの先端をL字または複雑な形に曲げ、これを水中翼として船体を浮かせて走る「フォイリング艇」が考案された。
白石康次郎がスキッパー(艇長)を務め、日本から参戦するDMG MORI SAILING TEAMの挑戦艇〈DMG MORI Global One〉は、最新世代のフォイリング艇になっている。
Aコクピット
船尾のこの部分、コクピットが操船スペース。後部へ伸びたキャノピーのおかげで、コクピットは水しぶきを避け、ドライに保たれる。写真はキャノピーのウインドから顔を出し前方を確認しているところ。
B船内(キャビン)
居住スペース。船体の全幅は5.8mが機材や搭載物資も多く非常に狭い空間。船内では、パソコンを使い気象情報、潮流情報に加え、他艇の位置を把握し、戦略を立てる。この写真は穏やかな海況だが、荒れればこうはいかない。また、水中翼の振動による高周波音が常に響くことに対応するため、ノイズキャンセルヘッドフォンを装着する。
C右舷側のドッグハウス
セールやマストを支える索具につながるコントロールロープは100本以上。それを両舷4機のウインチ(ロープを引き込む艤装品)でさばく。通常、複数人で行う作業を一人で行うため、その作業は細かくシークエンス分けされ壁などに張られている。
Dフォイル
ダガーボードの先端を湾曲させ、水中翼としたフォイル。写真のダガーフォイルは、左舷の風上側に突き出し空中に出ている状態。本来は水中に入り、水中翼の機能を果たし艇体を上方に浮かせ、船艇と水の接水面を減らすことで抵抗を減じ、復原力も生む。
Eセール
ヨットを推進させるエンジンともいえるセール。セールで風をつかみ、揚力が生まれ、ヨットは前進する。風向の45度程度まで風上へ走ることが可能。
GLOSSARY
用語集
IMOCA60
イモカ60。ヴァンデ・グローブの採用艇。全長18.288mのモンスター・セーリングボート。近年はフォイリング艇が主流
ヴァンデ
フランス北西部、ヴァンデ州のこと。グローブは地球。転じて世界一周レースを指す
ヴァンデ・グローブ
単独無寄港無補給世界一周レース。フランス北西部ヴァンデ州レ・サーブル・ドロンヌがスタート&フィニッシュ地
キール
竜骨。ヨットの船艇中央から下に伸びる構造物。先端に重りが付き、ヨットの傾きを制御する。左右にスイングする機構を持つものをカンティングキールと呼ぶ
キャビン
船内のこと。居住空間。ヴァンデ・グローブでは戦略をたてる指令室でもあり、食事や睡眠をとる場所でもある
サムライ
白石康次郎のフランスでのあだ名。オーシャンサムライ、とも。前回のヴァンデ・グローブのスタート前に居合道の道着に木刀を携え、多くのファンに印象を残した
ジブ
ヘッドセールの名称の一つ。IMOCA60では、J1(ジェイワン)、J2(ジェイツー)、J3(ジェイスリー)まで搭載可能
ジェネカー/スピネーカー
ヘッドセールの名称の一つ。一般的にジブよりもさらに前にアップし、追い風で使用する。A2(エーツー)、A3(エースリー)、A7(エーセブン)、FRO(フロー)などさまざまな種類がある
ダガーボード
左右の舷側に差し、ヨットが横流れするのを防ぐ板。ダガーボードに水中翼が付いたものをフォイルと呼ぶ
DMG MORI SAILING TEAM
ディーエムジー・モリ・セーリング・チーム。世界で信頼される工作機械の巨大メーカー、DMG森精機がスポンサードする、ヴァンデ・グローブ挑戦ワークスチーム名。スキッパー(艇長)は白石康次郎が務める
DMG MORI Global One
ディーエムジー・モリ・グローバル・ワン。DMG MORI SAILING TEAMの挑戦艇。最新世代のIMOCA60で、もちろんフォイリング艇。「グローバル・ワン」はDMG森精機が掲げるスローガンでもある
ドッグハウス
船体中央の一段高くなった場所。キャビンの天井部分
フォイル
水中翼。ヨットの下部構造物、特にダガーボードにつけることが多い。ラダーにつけることもある(IMOCA60にはついていない)。フォイルを持つヨットを、フォイリング艇、フォイリングヨット、などと呼ぶ
復原力
ヨットが横倒れしようとするのを防ぐ力。キールやフォイルなどによって得られる
ブーム
メインセール下端を支える構造物。マストとジョイントしている
マスト
船体中央から上方に伸びる構造物。セールを支える大黒柱
メインセール
ヨットの帆のなかで最も重要なセール。マストを後ろに付く。強風時は前後高さを縮め、縮帆することができる
ラダー
舵。IMOCA60の場合、船尾が広く左右に一つずつ、合計2つのラダーを持つ。一般的に風上側のラダーは抵抗になるので振り上げて水から出すようにする
レ・サーブル・ドロンヌ
ヴァンデ・グローブのスタート&フィニッシュ地。全大会では延べ225万人がレース観戦に訪れた
ロープ
セールや索具をコントロールするために采配されるロープ。特に、メインセールにつながるロープをメインシート、ジブにつながるロープをジブシート、スピネーカーにつながるロープをスピンシートと呼ぶ