近畿大学の水産研究所は、長年にわたって水産業の存続と発展に貢献してきました。
日本が食糧難の時代を迎えた戦後、近畿大学の創設者である世耕弘一氏は、“海を耕し、海産物を生産する重要性”を示し、和歌山県白浜町に(現)水産研究所を設立。現在に至るまで養殖技術の研究開発に取り組み、2002年には世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功するなど、日本だけでなく世界でトップの技術を確立してきました。
近年では、環境の変化や世界的な人口増加などの影響を受け、水産資源の安定的な供給がますます重要な課題となっています。未来に向けて持続可能な水産業を築くためには、取り巻く環境だけでなく、関わる人々が快適に働ける職場の環境づくりを行うことも重要です。
ヘリーハンセンは、長年培ってきたモノづくりの技術と製品力を通じたサポートを行い、水産業の発展に貢献していきたいと考えています。
今回は、近畿大学の取り組みや、共同開発によって生まれたワーキングウェアの魅力に迫ります。
近畿大学 水産養殖種苗センター
事業副本部長
谷口 直樹さん
目指すべきことは、
“いい魚をつくり出す”こと
水産研究所が設立された当初から今に至るまで、変わらず私たちが目指していることは「いい魚をつくり出す」ということです。近畿大学では水産研究所で研究を重ね、その成果を水産養殖種苗センターで事業化し、生産された稚魚を全国各地の養殖業者さんに出荷しています。養殖業者さんからいただく、出荷した稚魚の評価や指摘をヒントに、「より成長のいい魚」や「より強い(死なない)魚」を生産できるよう日々研究と開発を繰り返しています。
水産業界全体に目を向けると、近年、日本国内での魚の消費量が減っており、養殖業者さんともどもこの現状に危機感を持っています。魚はアラや骨を除くと可食部が少なくなりがちでどうしても割高になる傾向があり、さらに調理が面倒であることなどが理由です。アラや骨、さらにはそれらについた細かな身なども無駄なく美味しく食べてもらうことで、コストが下がりますし、魚をより魅力的な食材と感じてもらうことができるのではないかと考えています。
また、消費者が手に取りやすい価格で養殖魚を提供するために私たちができることは、養殖コストを少しでも抑えられる稚魚を生産することです。先に述べた「より成長の良い魚」「より強い(死なない)魚」が求められており、私たちの「いい魚をつくり出す」という目標に繋がっています。今後は日本だけでなく、世界から「日本の養殖魚が食べたい」と言ってもらえるように尽力していきたいですね。
‐ 水産研究所の環境への取り組み
水産研究所には複数の生けす*1があるのですが、そこで使う発泡スチロール製フロート*2の使用率を毎年少しずつ減らしており、現在使用中のフロートにおける割合は約50%となっています。発泡フロートが劣化し、使用されているEPS(ポリスチレン)が外に漏れてしまうことがマイクロプラスチック問題にも繋がるため、少しずつ発泡スチロールでないものに切り替えています。また、養殖場の水質保全に繋げるために、海面で給餌していた生餌をすべて配合飼料に切り替えました。このように、環境への取り組みも日々行っています。
*1 生けす…漁業によって捕獲した魚介類や料理用の魚などを、水中に生かしておく場所。
*2 発泡フロート…樹脂の中に気泡を発生させて多孔質にしたフロートのこと。一般的には、魚箱などで使用されるEPS(ポリスチレン)が知られている。
環境を整え、
次世代の担い手を育てる
現在抱えている大きな課題は、若い世代の人材不足です。一方で、水産研究所に入ってきてくれている人たちは、釣りや魚が好きという人が多いんです。彼らの気持ちを尊重しながら、より良い労働環境へと整えていくことが重要だと思っています。とはいえ、生き物を管理するために人間の目のチェックは欠かせないため、それ以外で負担となり得る部分の機械化や効率化を進めるなど、スタッフ一人ひとりがやりがいを感じながら、モチベーション高く働ける環境づくりに取り組んでいます。
今回ヘリーハンセンさんとの取り組みによって生まれたウェアも、その一つです。過酷な環境下でも快適に仕事ができるものを取り入れるなど、スタッフのモチベーションに繋がるものを選択していく必要があると思っています。
漁業に特化したウエア
LINOX Work Jacket & LINOX Work Trousers
日々の作業をサポートする、
機能性とデザイン性を
兼ね備えたウェア
今回の取り組みによって生まれたワーキングウェアの着心地や魅力について、水産研究所の皆さんにお話を伺いました。
従来のカッパは重さや動きにくさがあったので、雨が降った時にだけ着用するようにしていました。でもこれは軽量で動きやすく、魚の選別作業をする時にも身体への負荷が少ないので、自ら好んで着るようになりましたね。以前はフードが下がってきて前が見えづらくなることもありましたが、これはフードの背面に紐がついていて調整できるので、視界が確保しやすくなりました。女性の選別担当者からは、従来のカッパだと「何時間も手を動かしていると肩が凝る」という声が多かったんですが、これなら軽量でその心配もなさそうです。薄いので、夏場は暑さも軽減されるのがいいですね。
近畿大学 水産養殖種苗センター
白浜事業場 種苗(稚魚)の選別担当
下谷 健司さん
雨の日や、冬の寒い日に風除けとしてカッパを着用しています。真鯛をメインで管理しているため、生けすを歩くことも多く、しゃがむ動作や足元の針金を避ける場面もあるので、カッパの軽さと足捌きのしやすさが気に入っています。あとはポケットがついていて色々入れられるので、無駄な動作がなくなったのも嬉しいです。
近畿大学 水産養殖種苗センター
白浜事業場 マネージャー
前地 来さん
近畿大学 水産養殖種苗センター
白浜事業場 成魚の飼育担当
落合 大樹さん
出荷用に成魚を獲る作業や給餌をする際に、よくカッパを着用しています。現場では足を動かす機会が多いのですが、軽量かつ動きやすいおかげで、足捌きが楽になりました。ストレッチが効いている分伸びやすく、着用していてもストレスがありません。また、給餌の際は魚が跳ね回るので頻繁に濡れるんですが、水洗いして置いておけば一日で乾いてくれるので、翌日着る時に「湿っている」といったストレスもなくなりました。速乾性があるので、夏場の作業で辛かった蒸れの問題も軽減されました。とにかく、カッパをここまで軽量化していただいたことをとても嬉しく思っています。