Conversation macpac with friends vol.3
わたしたちが運んでいるものは
Shiori Tanaka 田中史織 （ソックスデザイナー／ブランドオーナー）
Conversation with macpac friends vol.3
「わたしたちが運んでいるものは」
2024年11月8日(金)
山を歩いているときに知らない花を見かけたら、リュックに潜ませておいたポケット版の花の図鑑に照らしながら名前を調べたり、写真を撮ったりする。そんな時間が、わたしは好きです。
花が身近な環境で育ちました。祖母も花が好きで、家の庭にはいろんな花が植えられていました。季節ごとに咲くそれらの花と触れ合ったりしているうちに、わたしも花が大好きになりました。
花と同じくらい好きだったのが靴下でした。
靴下って消耗品だから、なんでもいいって思われがちだけど、全身のコーディネートをするときに靴下を変えるだけで全体の雰囲気が大きく変わる。靴下は実は大事なアイテム。しゃがんだり座ったりしたときにパンツの裾が上がって、ちらっと見える靴下に可愛い柄が入っていたりすると、あぁ素敵だなと思うんです。
そんな靴下の魅力に惹かれ、いつからか靴下のデザイナーになって、自分が履きたい靴下をつくりたいという思いを抱くようになりました。
服飾の学校を卒業してからいったんは販売の仕事にも就いたけれど、やっぱり靴下デザイナーになる夢を捨てきれず、靴下メーカーに6年半ほど勤めながら技術を学び、靴下専門のプロダクト・ブランドを立ち上げました。現在は〈laceflower（レースフラワー）socks〉と〈高山植物図鑑〉という２つのブランドのデザインから販売までを、ひとりで手がけています。
〈laceflower socks〉は、「履くだけで贅沢な気持ちにさせてくれる上品な靴下」というコンセプトをかかげて2019年に立ち上げた靴下のブランドです。小さな花の刺繍を施した靴下や、ニット編み機で「すずらん」の花を立体的に再現した穴あき柄の靴下など、花をモチーフにした靴下をシーズンごとにデザインして展開しています。
レースフラワーは、カスミソウに似た小さな花を咲かせる一年草。花束やブーケに添えられることが多い、繊細で華奢だけど優雅な広がりを演出することができる名脇役として愛されている、大好きな花のひとつです。花単体としての存在感は控えめだけれど、全体を引き立てるうえで重要な役割を果たしている。そんなところが靴下と似ている気がして。
もうひとつの〈高山植物図鑑〉は、文字通り高山植物をモチーフにした登山用の靴下のブランドです。豪華に咲き誇るバラよりも、高山の岩の隙間に咲いてる儚さをたたえた花が好きなんです。
ブランド名は、同名の図鑑のタイトルからとりました。山に登るようになってから『高山植物図鑑』を眺めるのが好きだったんです。植物標本に描かれていた花の断面図の緻密さや繊細なタッチが、わたしがつくっている靴下の世界観にも合うし、お花を集めるようにコレクションを増やしていけたら素敵だなと思って。
結婚をきっかけに、登山が趣味の主人と2016年頃から二人でよく山登りに出かけるようになりました。
わたしは〝靴下好き〟なので登山用の靴下にも関心を持って、いろいろ履き比べてみたんですが、そのスペックの素晴らしさに気づいて自分でも、単に見た目が良いだけではない、登山でも使える本物をつくってみたいと思ったんです。とはいえ、月に何度か行く山でしか履けないのはもったいない。そこで、登山用としての機能を備えながら普段も履ける靴下をつくりたいと思って、数年がかりで商品開発を始めました。
登山用の靴下づくりを経験できたおかげで、靴下に対する考え方も変わりました。登山用の靴下は命を守るギアのひとつでもあるので、フィット感や耐久性、通気性など、足を支えるための機能を備えたものでなければいけない。それはわかっているけれど、実際かたちにするのは簡単なことではありません。素材を吟味し、工場の方に相談したり耐久性能試験を繰り返しながら、開発には３年を費やしてきたけれど、さらなるグレードアップを目指してこれからも続けるつもりです。簡単に辿り着けないけれど、より高い場所へ向かいたい気持ちがあります。自分が良いと思えるものを追求できるのは、誰かに頼まれてやるものづくりと比べて桁違いに楽しいことだから。
【今回使用しているアイテム】
Crescent Pouch S クレセントポーチS (color :AB)MM92400
Trek Shoulder M トレックショルダーM (color :TS)MM82401
Harper 50 ハーパー50 (color : GN)MM62358
Shoulder Strap Bottle Pocket ショルダーストラップボトルポケット (color :PT)MN92450
レースフラワーソックスhttps://www.laceflowersocks.com/laceflower
高山植物図鑑https://www.laceflowersocks.com/高山植物図鑑
花が身近な環境で育ちました。祖母も花が好きで、家の庭にはいろんな花が植えられていました。季節ごとに咲くそれらの花と触れ合ったりしているうちに、わたしも花が大好きになりました。
花と同じくらい好きだったのが靴下でした。
靴下って消耗品だから、なんでもいいって思われがちだけど、全身のコーディネートをするときに靴下を変えるだけで全体の雰囲気が大きく変わる。靴下は実は大事なアイテム。しゃがんだり座ったりしたときにパンツの裾が上がって、ちらっと見える靴下に可愛い柄が入っていたりすると、あぁ素敵だなと思うんです。
そんな靴下の魅力に惹かれ、いつからか靴下のデザイナーになって、自分が履きたい靴下をつくりたいという思いを抱くようになりました。
服飾の学校を卒業してからいったんは販売の仕事にも就いたけれど、やっぱり靴下デザイナーになる夢を捨てきれず、靴下メーカーに6年半ほど勤めながら技術を学び、靴下専門のプロダクト・ブランドを立ち上げました。現在は〈laceflower（レースフラワー）socks〉と〈高山植物図鑑〉という２つのブランドのデザインから販売までを、ひとりで手がけています。
〈laceflower socks〉は、「履くだけで贅沢な気持ちにさせてくれる上品な靴下」というコンセプトをかかげて2019年に立ち上げた靴下のブランドです。小さな花の刺繍を施した靴下や、ニット編み機で「すずらん」の花を立体的に再現した穴あき柄の靴下など、花をモチーフにした靴下をシーズンごとにデザインして展開しています。
レースフラワーは、カスミソウに似た小さな花を咲かせる一年草。花束やブーケに添えられることが多い、繊細で華奢だけど優雅な広がりを演出することができる名脇役として愛されている、大好きな花のひとつです。花単体としての存在感は控えめだけれど、全体を引き立てるうえで重要な役割を果たしている。そんなところが靴下と似ている気がして。
もうひとつの〈高山植物図鑑〉は、文字通り高山植物をモチーフにした登山用の靴下のブランドです。豪華に咲き誇るバラよりも、高山の岩の隙間に咲いてる儚さをたたえた花が好きなんです。
ブランド名は、同名の図鑑のタイトルからとりました。山に登るようになってから『高山植物図鑑』を眺めるのが好きだったんです。植物標本に描かれていた花の断面図の緻密さや繊細なタッチが、わたしがつくっている靴下の世界観にも合うし、お花を集めるようにコレクションを増やしていけたら素敵だなと思って。
結婚をきっかけに、登山が趣味の主人と2016年頃から二人でよく山登りに出かけるようになりました。
わたしは〝靴下好き〟なので登山用の靴下にも関心を持って、いろいろ履き比べてみたんですが、そのスペックの素晴らしさに気づいて自分でも、単に見た目が良いだけではない、登山でも使える本物をつくってみたいと思ったんです。とはいえ、月に何度か行く山でしか履けないのはもったいない。そこで、登山用としての機能を備えながら普段も履ける靴下をつくりたいと思って、数年がかりで商品開発を始めました。
登山用の靴下づくりを経験できたおかげで、靴下に対する考え方も変わりました。登山用の靴下は命を守るギアのひとつでもあるので、フィット感や耐久性、通気性など、足を支えるための機能を備えたものでなければいけない。それはわかっているけれど、実際かたちにするのは簡単なことではありません。素材を吟味し、工場の方に相談したり耐久性能試験を繰り返しながら、開発には３年を費やしてきたけれど、さらなるグレードアップを目指してこれからも続けるつもりです。簡単に辿り着けないけれど、より高い場所へ向かいたい気持ちがあります。自分が良いと思えるものを追求できるのは、誰かに頼まれてやるものづくりと比べて桁違いに楽しいことだから。
【今回使用しているアイテム】
Crescent Pouch S クレセントポーチS (color :AB)MM92400
Trek Shoulder M トレックショルダーM (color :TS)MM82401
Harper 50 ハーパー50 (color : GN)MM62358
Shoulder Strap Bottle Pocket ショルダーストラップボトルポケット (color :PT)MN92450
レースフラワーソックスhttps://www.laceflowersocks.com/laceflower
高山植物図鑑https://www.laceflowersocks.com/高山植物図鑑
Text : Toshimitsu Aono
Photo : Moe Kurita