Japan Long Trail Walker by PAPERSKY vol.2
macpacと低山ハイキング 江戸時代の風情漂う集落を抜け、焼津アルプスへ
2024年12月20日(金)
静岡のご当地アルプス
静岡にも「アルプス」があるのをご存知だろうか?満観峰、高草山、花沢山を合わせた「焼津アルプス」がそれ。「アルプス」というと、急峻な稜線をもつ、人里離れた奥地にある山塊を思い浮かべるかもしれないけれど、近年、全国で増えつつあるご当地アルプスはずっとおだやかで、日帰りで山歩きのたのしさを満喫できる低山が多い。
焼津市と静岡市の間に位置する「焼津アルプス」は駿河湾の沿岸から3km程度しか離れておらず、天気によっては山頂から駿河湾と、その先の伊豆半島まで見渡せる。山頂のすぐそばを東海道線や東海道新幹線、東名高速が通っていて、街からのアクセスもいいから気軽に登ることができる。
今回歩いたのは「焼津アルプス」の一座の満観峰で、標高470m、所要時間は往復で3時間ちょっと。「低山なんてつまらない」と思う人もいるかもしれないが、「満観峰」という名の通り、山頂からは駿河湾、富士山、南アルプス日本平、焼津市街を一望できる。四季のメリハリもあって、かつ見応えありの大パノラマが広がっているといったら、低山といえども十分に魅力的ではないだろうか。
今回歩いたのは「焼津アルプス」の一座の満観峰で、標高470m、所要時間は往復で3時間ちょっと。「低山なんてつまらない」と思う人もいるかもしれないが、「満観峰」という名の通り、山頂からは駿河湾、富士山、南アルプス日本平、焼津市街を一望できる。四季のメリハリもあって、かつ見応えありの大パノラマが広がっているといったら、低山といえども十分に魅力的ではないだろうか。
満観峰山頂を目指すルートはいくつかあるが、花沢の里から鞍掛峠を経由するハイキングコースは東海道自然歩道バイパスコースに接続しており、たとえば鞍掛峠の分岐を満観峰と逆に進めば、焼津市最高峰(標高501m)の高草山をつなぐ縦走が楽しめる。おまけに、登山口になっているのは、静岡県で唯一、国の重要伝統的建造物保存地区に選定されている花沢地区。登山口までのアクセスでは旧東海道を旅する観光気分も味わえるという、一石二鳥のハイキングコースなのだ。
長屋門の町を抜け、登山口へ
「花沢の里」の駐車場にクルマを止め、花沢の里にある登山口まで徒歩でアクセスする。花沢の里は旧東海道(やきつべの小径)の途中に広がる30戸あまりの集落で、街道の片側には花沢川が流れ、その反対側に石垣と板張りの古い日本家屋が連なる風景に歴史を感じる。明治時代、お茶や養蚕、みかん栽培が盛んになると農作物の貯蔵小屋や農作業小屋、繁忙期に雇い入れる季節労働者のための宿泊小屋が次々と増改築され、現在の姿になったとか。
……なんてことを、一緒に歩いた地元ハイカーから聞きながら、ふと民家の軒先に目をやれば、無人販売コーナーが。季節のフルーツや野菜だけでなく、シフォンケーキや歩きながら食べられそうな焼き菓子まで置いてある。歴史ある日本家屋の佇まいとポップな販売コーナーの対比がなんだか面白くて、みんなで写真を撮る。もちろん、行動食として焼き菓子とシフォンケーキをいくつか購入。ここを通過するときは硬貨を用意しておくのがよさそうだ。
……なんてことを、一緒に歩いた地元ハイカーから聞きながら、ふと民家の軒先に目をやれば、無人販売コーナーが。季節のフルーツや野菜だけでなく、シフォンケーキや歩きながら食べられそうな焼き菓子まで置いてある。歴史ある日本家屋の佇まいとポップな販売コーナーの対比がなんだか面白くて、みんなで写真を撮る。もちろん、行動食として焼き菓子とシフォンケーキをいくつか購入。ここを通過するときは硬貨を用意しておくのがよさそうだ。
集落の北端にある法華寺の先に登山口の看板があって、鞍掛峠と日本坂峠へ分岐する。日本坂峠へ向かう道が、平安時代以前に使われていた旧東海道だ。鞍掛峠へ向かう木組の階段を上がると、朝6時というのにすでに数組のハイカーが先行していた。道中、切り株の上に枝を組み合わせ、手作りのフラッグや造花を飾った素敵なオブジェを発見。よく見ると、組み合わせた枝は今日の日付をあらわしていた。カレンダーだ。毎日ここを登るハイカーの手によるものだろうか。低山歩きのバイブル『日本百低山』(山と渓谷社)の著者、小林泰彦さんは、「低山は人々の暮らしに思いを馳せることができる」と言っていたが、なるほど、低山のおもしろさは山と地域の人々が密接に関わっているところにある。地域の人々にとって、満観峰こそ「おらが山」なのだろう。国立公園内の高山ではお目にかかれないシーンに出合えるのも、地域の人々に愛される低山ならではといえそうだ。
茶畑の先に広がる大パノラマ
幼稚園の遠足にも利用されるという登山道はよく整備されていて歩きやすい。少し上がって後ろを振り返ると、花沢の里全体を見渡せた。途中、沢の水を引いた水場があったので、冷たい水でクールダウン。秋だというのに汗ばむような陽気なのだ。さらに進むと、静岡市の街並みと駿河湾を見渡せるちょっとした眺望ポイントにベンチが設けられていたので、花沢集落で買ったおやつと冷たい水で小休憩を取る。ここから30分ほど登っていくと、高草山との分岐点となる鞍掛峠に到着。頂上まではあと1kmくらいだ。
一面に広がる茶畑の先が山頂だ。そこは開けた展望広場になっていて、東屋やベンチでは先行したハイカーが休憩している。週末ともなれば、多い時では数百人もがハイキングを楽しむというから、地元きっての人気スポットといえるだろう。残念ながら富士山や南アルプスは雲の中だったけれど、焼津市街や駿河湾はくっきり見えた。
空気が澄んだ冬の低山歩きは、天気が安定するこれからがシーズン本番!とくに静岡県の太平洋岸は冬でも気候が温暖で、一年を通してハイキングを楽しめる。青空という真っ白の富士山という眺めは、この時期ならではのお楽しみだ。
来春、開通する「KATSUO TRAIL」
この満観峰、実は来春開通する新しいトレイル「KATSUO TRAIL」のルートになっている。「KATSUO TRAIL」は静岡県の焼津市、静岡市、藤枝市、島田市、川根本町を周回する200kmあまりのロングトレイルで、焼津市沿岸部を出発して高草山、満観峰を経て宇津ノ谷峠、そして岡部宿へ抜ける約24kmがセクション1になっている。
「KATSUO TRAIL」の詳細は、『PAPERSKY』NO 71の連載「Japan Long Trail Walker」をご覧いただくとして、日帰りハイキングの深度を深めたくなったら、ぜひ、ロングトレイルの中の行程の一つとして満観峰をお楽しみください。焼津から静岡市へ、海から山へと至る道を歩くことで、新しい発見があるはずだ。
「KATSUO TRAIL」の詳細は、『PAPERSKY』NO 71の連載「Japan Long Trail Walker」をご覧いただくとして、日帰りハイキングの深度を深めたくなったら、ぜひ、ロングトレイルの中の行程の一つとして満観峰をお楽しみください。焼津から静岡市へ、海から山へと至る道を歩くことで、新しい発見があるはずだ。
「KATSUO TRAIL」ハイキングに持って行ったのは、ニュージーランドのロングトレイルに磨かれたmacpacのバックパックやミュゼット。macpacオリジナルの生地AzTec®️Eco Canvasは耐久性と耐水性に優れ、思わぬ悪天やタフなシチュエーションに見舞われがちなロングトレイルのハイキングに最適。
今回は日帰りのハイキングだったので、定番のデイパック「Kauri」とひとまわり小型の「Tui」に、それぞれ別売りのショルダーポーチ「Trek Musette」と「Trek Shoulder S」を組み合わせて使用した。地図やカメラ、財布など、頻繁に取り出す小物類は、まとめてショルダーポーチに、雨具や着替え、クッカー類はバックパックにと、使用頻度の異なるアイテムを分けてパッキングした。
自然への敬意を感じられるギアを持って、ロングトレイルを歩こう!
〈PAPERSKY〉Japan Long Trail Walker PAPERSKYバージョンはこちらから
Text : Ryoko Kuraishi
Photo : Yasuyuki Takagi