SWEDISH SAUNA CULTURE #2
心と体をニュートラルに戻す、北欧のDIYサウナ
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心と体をニュートラルに戻す、北欧のDIYサウナ
フィンランドと並んで長いサウナの歴史をもつスウェーデン。その首都ストックホルムから、現地のサウナカルチャーを2回にわたってレポートします。後編では北欧の伝統的な木工・建築技術を受け継ぐ大工であり、その技術を生かしてDIYサウナをいくつも建ててきたリーサ・イェルホルム・ルハンコさんに話を聞きました。
「サウナはずっと生活の一部でした。家族との習慣だったんです」
そう振り返るのは、フィンランドと並んで長いサウナの歴史をもつスウェーデンに住むリーサ・イェルホルム・ルハンコさん。北欧の伝統的な木工・建築技術を受け継ぐ大工として、スウェーデンにある世界最古の野外博物館「スカンセン」ではたらく傍ら、その技術とサウナへの愛を詰め込んだサウナ小屋をつくっています。サウナづくりのノウハウを紹介する著書『サウナをつくるスウェーデン式小屋づくりのすべて』は、2023年冬に邦訳版も発売されました。
そう振り返るのは、フィンランドと並んで長いサウナの歴史をもつスウェーデンに住むリーサ・イェルホルム・ルハンコさん。北欧の伝統的な木工・建築技術を受け継ぐ大工として、スウェーデンにある世界最古の野外博物館「スカンセン」ではたらく傍ら、その技術とサウナへの愛を詰め込んだサウナ小屋をつくっています。サウナづくりのノウハウを紹介する著書『サウナをつくるスウェーデン式小屋づくりのすべて』は、2023年冬に邦訳版も発売されました。
「サウナ 兼 ゲストルーム」の伝統的なスタイル
書籍でも紹介されているストックホルム郊外の小屋は、リーサさんの5つ目の作品。湖と湾に挟まれた森にひっそりと佇む薪サウナです。夕方には木々の間から差す夕日が外壁に反射し、その炭のような質感と色が引き立ちます。
「夏にはサウナの前の原っぱで馬たちがのんびりしているんですよ」とリーサさん。
このサウナは、リーサさんが友人夫婦のためにつくったもの。二段構えのベンチには「ぎゅっと座るのが好きな人なら、頑張って6人は座れるかも!」とリーサさんが笑います。しかもこのベンチ、棚板を移動することでベッドになる仕様。ゲストルームとしても使えるように、というアイデアです。
「いまでこそ少なくなりましたが、昔はゲストルームと兼用できるサウナのスタイルも多かったんです。私もこのスタイルのサウナに囲まれて育ちました」
高温多湿になるサウナでは、木やレンガ、粘土や石といった天然素材しか使わないのがリーサさんのこだわり。外壁の黒を生んでいるのは、杉板を焼いて表面を炭化させる「焼杉」と呼ばれる日本の伝統技術です。
「表面を焼くだけで耐久性を増せますし、ペンキを使わずに素敵な色を出せるという面でもぴったりでした」
「夏にはサウナの前の原っぱで馬たちがのんびりしているんですよ」とリーサさん。
このサウナは、リーサさんが友人夫婦のためにつくったもの。二段構えのベンチには「ぎゅっと座るのが好きな人なら、頑張って6人は座れるかも!」とリーサさんが笑います。しかもこのベンチ、棚板を移動することでベッドになる仕様。ゲストルームとしても使えるように、というアイデアです。
「いまでこそ少なくなりましたが、昔はゲストルームと兼用できるサウナのスタイルも多かったんです。私もこのスタイルのサウナに囲まれて育ちました」
高温多湿になるサウナでは、木やレンガ、粘土や石といった天然素材しか使わないのがリーサさんのこだわり。外壁の黒を生んでいるのは、杉板を焼いて表面を炭化させる「焼杉」と呼ばれる日本の伝統技術です。
「表面を焼くだけで耐久性を増せますし、ペンキを使わずに素敵な色を出せるという面でもぴったりでした」
ものづくりの道標に
伝統を受け継いだサウナづくりを続けるリーサさん。でも彼女がサウナをつくり始めたのは、ちょっと切実な理由からでした。
「ストックホルムから40分ほどの場所に山小屋を借りていたのですが、水道がなかったんです。体を洗うための場所が欲しくて、お湯を沸かせるサウナをつくりました」
もともとサウナは身体を清潔にするために生まれた場所。熱と蒸気が発生するサウナの中は衛生的で、家の中、そしてコミュニティの中でいちばんきれいな場所でもあったといいます。最初は必要に迫られてだったリーサさんのサウナづくり。でも実際につくり始めると、大工の血が騒いでしまいます。
「小さな構造物なので、いろいろと決められることが多くて楽しいんです。最初のサウナが完成したあと、すぐふたつめを作ろうと決めました」
さらには、同じようにサウナを作りたいと願う人のためにステップ・バイ・ステップの本を執筆。
「この本を読んで誰かが、何かを作ってくれたらうれしいと思って書きました。サウナではなく、小さなベンチでもいいんです。何かをつくりたいと願う人の道標になればと思って書きました。実際に出版してみると、SNSで何かを作ったと報告してくれる人たちがいて、心から嬉しくなりました」
「ストックホルムから40分ほどの場所に山小屋を借りていたのですが、水道がなかったんです。体を洗うための場所が欲しくて、お湯を沸かせるサウナをつくりました」
もともとサウナは身体を清潔にするために生まれた場所。熱と蒸気が発生するサウナの中は衛生的で、家の中、そしてコミュニティの中でいちばんきれいな場所でもあったといいます。最初は必要に迫られてだったリーサさんのサウナづくり。でも実際につくり始めると、大工の血が騒いでしまいます。
「小さな構造物なので、いろいろと決められることが多くて楽しいんです。最初のサウナが完成したあと、すぐふたつめを作ろうと決めました」
さらには、同じようにサウナを作りたいと願う人のためにステップ・バイ・ステップの本を執筆。
「この本を読んで誰かが、何かを作ってくれたらうれしいと思って書きました。サウナではなく、小さなベンチでもいいんです。何かをつくりたいと願う人の道標になればと思って書きました。実際に出版してみると、SNSで何かを作ったと報告してくれる人たちがいて、心から嬉しくなりました」
心身をニュートラルに戻してくれる、神聖な場所
スウェーデンでは時代の移り変わりとともに、サウナカルチャーも変わってきているように感じるとリーサさんは話します。
「昔は家族やコミュニティのアクティビティという要素が強かったのですが、いまは若い世代が友だちやパートナーと一緒に行くことも多いんです。きっと、普段の慌ただしさから解放されるマインドフルな場所であり、コミュニティなんですよね。いまの人たちは、教会に祈りに行く代わりにサウナに行くのかもしれません」
リーサさんにとっても、サウナは自分の心をニュートラルに戻してくれる場所。
「心も体もゼロに戻したいときにサウナに行きます。いまのスウェーデンには珍しく、サウナはスマートフォンからも社会のヒエラルキーからも解放される場所。神聖な場所なんです」
リーサさんにとって、サウナは入るものであり作るもの。次の作品について尋ねると「私の母にもサウナが必要だと思うの!」と意気込む彼女の笑顔からは、サウナのような熱と温かさが感じられました。
「昔は家族やコミュニティのアクティビティという要素が強かったのですが、いまは若い世代が友だちやパートナーと一緒に行くことも多いんです。きっと、普段の慌ただしさから解放されるマインドフルな場所であり、コミュニティなんですよね。いまの人たちは、教会に祈りに行く代わりにサウナに行くのかもしれません」
リーサさんにとっても、サウナは自分の心をニュートラルに戻してくれる場所。
「心も体もゼロに戻したいときにサウナに行きます。いまのスウェーデンには珍しく、サウナはスマートフォンからも社会のヒエラルキーからも解放される場所。神聖な場所なんです」
リーサさんにとって、サウナは入るものであり作るもの。次の作品について尋ねると「私の母にもサウナが必要だと思うの!」と意気込む彼女の笑顔からは、サウナのような熱と温かさが感じられました。
Lisa Gerholm Luhanko リーサ・イェルホルム・ルハンコ
大工、建築修復技術者、サウナ愛好家。スウェーデン東インド会社が所有し1745年に沈没した貿易船「ヨーテボリ号」を復元した2代目ヨーテボリ号に甲板員として乗船し、中国への長い航海の最中に、伝統的な建築技術に目覚める。ノルウェーでの造船技術の習得、建築修復技術の実習を経て、現在はストックホルムのスカンセン(スウェーデン民芸の父・アルトゥール・ハゼリウスが開園した野外博物館)で大工として働く。木工、窓の修復、サウナ建設などのテーマで講座も開催。著書に『サウナをつくるスウェーデン式小屋づくりのすべて』
Art Direction : Ryo Tomizuka (OAK)
Photography : Alfred Johansson
Edit : Asuka Kawanabe
Photography : Alfred Johansson
Edit : Asuka Kawanabe