生命にかかわる病気を抱えたこどもと日常を取り戻すための遊び

「ホスピタル・プレイ・スペシャリスト」と「こどもホスピス」

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  • 2022.7.21 THU

日本には、小児がんなど、生命にかかわる病気のこどもが約2万人いると言われています。そうした子たちは、小さな頃から入院しながらの長期治療に入ることも多く、こども時代にあるべき「遊び」や「学び」「コミュニケーション」の機会や時間が制限されています。そこに生まれる精神的、身体的、経済的、社会的な負担は、こどもだけでなく一緒にこどものケアをし続ける家族にも関わってきます。

2021年11月にオープンした、国内2例目となるコミュニティ型のこどもホスピス「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」は、そうしたこどもや家族を支援すべく作られた施設です。大人の看取りとしてのホスピスではなく、こどもや家族の豊かな時間を支え、地域社会との関係を育む場所としてのホスピス。

横浜こどもホスピスには、「ホスピタル・プレイ・スペシャリスト(HPS)」という職業の人がいます。HPSは遊びを通して病児や障がいのあるこどもを支援する専門職です。遊びのスペシャリストと呼ばれるHPSは、様々な困難を抱えるこどもその家族のためにどんなことをしているのでしょうか。遊びは一体そこでどんな力と意味を持っているのか。病院で病児たちの保育士として働きながらHPSの資格を取り、横浜こどもホスピスで働く児玉のどかさんが話してくれた日常を取り戻す場所としてのこどもホスピスと遊び。

静岡県立大学短期大学部が運営するホスピタル・プレイ・スペシャリストの養成機関「HPS Japan」には、ホスピタル・プレイとはなにかについて、そのミッションが以下のように記されています。

【ホスピタル・プレイとは】

1.医学的な治療を受けるこどもたちや障害を持つこどもたちにとって必要不可欠な、こどもゆえ必要な遊びの活動
2.医学とかかわりをもつこどもたちが、その経験を肯定的なものとして受け止められるよう、こどもの人格を守り、安心感や信頼感を作り出すための遊びの活動
3.こどもを治療する大人が、こどもの情緒を理解するために必要な媒体としての遊びの活動
4.ともすれば命を保障するためという大義の下に、阻害される可能性のあるこども自身の権利を擁護するための遊びの活動

【ホスピタル・プレイ・スペシャリストのミッション】

1.医療にかかわるすべてのこどもたちに対し、遊びの力を届けます。
2.遊びの持つ癒す力を用いて、医療とかかわるすべてのこどもを応援します。
3.こども自身のセルフ・コントロール感が損なわれないよう、遊びを用いて治療に対する心の準備を行います。
4.治療場面においてこどもが不必要な痛みや恐怖を感じないよう、遊びを用いて支援します。
5.治療後に医療に対する肯定感が持てるよう、術後や処置後の遊びを支援します。
6.プレイ・プログラムをつくり、個別に遊びの支援が必要なこどもを支えます。
7.治療するこどものきょうだいたちが取り残される気持ちにならないよう、きょうだいに対し遊びを用いた支援を行います。
8.小児医療チームの一員として、遊びを用いてこどもの治療に貢献します。
9.医療とかかわるこどもたちが自己肯定感を失うことなく社会の一員として活躍できるよう、将来を見通した遊びの支援を行います。
10.遊びの価値を広く伝えます。

病気を持っているお子さんとそのご家族の笑顔を叶える場所

こどもホスピスは笑顔をつくるためにある

—— 「こどもホスピス」は、何をする場所なのでしょうか。

 何をするか 特に決まりはありません。ただ、利用される方は、「生命に関わる病気を持っているお子さんとそのご家族」という条件があります。対象であるお子さんがご希望いただければ「ここで何をするか」の決まりは特にはないのがこどもホスピスですね。「ホスピス」とつくと大人のそれを考えて、「看取りの場所」というイメージがあると思うんですけれども、それだけの場所ではないんです。わたしたちの理念に「この瞬間を笑顔に」というのがあって「病気を持っているお子さんとそのご家族の笑顔を叶える場所」というふうに考えて運営しています。

—— 「こどもホスピス」は日本にまだ少ないですが、それぞれに違いがあったりするものなんですか。

 基本的なことは一緒ですが、こどもホスピスが「病院に併設されているか」「されていないか」という違いがあります。わたしたちは病院に併設されていない全国二例目の「コミュニティ型こどもホスピス」です。一例目が「TSURUMIこどもホスピス」(大阪市鶴見区)で、日本で初めてのコミュニティ型こどもホスピス。病院に併設されたこどもホスピスはもっとあって、関西の「淀川キリスト教病院」が有名ですね。

—— 「こどもホスピスは病院ではなく家庭である」という言いかたがよくなされます。それはどういう意味づけから出た言葉なんでしょう。

 コミュニティ型でも病院に併設していても「家族が一緒に過ごせる」というところは同じです。一般の病棟は基本的にはきょうだいが入れなかったり面会に制限があったりするんですが、「家族が家族として過ごせる」のはこどもホスピスに共通していることだと思います。

こどもをなくした当事者たちのアクション

—— 世界初のこどもホスピスであるイギリスのヘレン・ハウスができたのが1982年で、今年40周年です。日本でこどもホスピスができたのは90年代以降。「こども用」ホスピスが必要だとされて作られていく流れは、どう出てきたのでしょうか。

 この施設も代表理事の田川が自分の娘を小児がんで6歳のときに亡くしたことがきっかけだったのですが、他の団体もお子さんを実際に亡くされたご遺族が主体となって始めている団体が多いです。自分のこどもが当事者であった親が、国内外のこどもホスピスを知って、当時こんな場所があればという思いから動いてきた結果だと思います。

—— 「自分の経験から」ということですね。

 「こういう場所があったらよかった」っていう。

—— 「こういう場所があればよかった」というのは、かつてどういう状況だったのでしょうか。

 もともと保育園や幼稚園に通っていた子が、行けない状況になると自宅療養でずっとおうちの中で過ごすことになったりします。遊びにも行けず、遊びに来てくれる人もいなくなってしまいます。そうすると日中は「お母さんとずっと二人きり」みたいになってしまう。

—— 外とつながれない状況になってしまう。

 そうなんです。そこの「孤独や孤立を軽減したい」というのが、わたしたちのもともとの社会課題でもあります。

こどもホスピスを利用するこどものマインド

—— 今、ここを利用されているお子さんはどのくらいいるんですか。

 利用くださっているのは、20家族です。小児がんの子が多いですね。

—— 利用されている6家族は、ここに来て具体的にどう過ごされているんですか。

 「お誕生日」や「クリスマス」のような特別な時間をここで過ごしたいという方もいらっしゃいます。あとは「遊びに行くところがないから来たい」と言ってくださる方もいらっしゃったりします。

—— 「遊びに行くところがない」というのは、病気が不安でみんなが集まるところへ行きにくいというようなことですか?

 それももちろんありますね。やっぱり抗がん剤等をやっていると、感染症にかかりやすかったりもします。コロナで普段よりも余計に制限されてしまっているところは多いです。

—— 「何をして遊ぶか」にも制限はあったりするんですか。

 スーパーとかへ買いものに行くのでも、混んでいる昼間は避けて朝イチで行ったりして、お母さんたちは気分転換をしてはいるようです。「こどもをどうやって安全なところへ連れて行くか」はすごく考えてやっていると思います。

—— ここは特別な遊具や遊び道具があるわけではないと思うんです。お泊まりもできて、過ごしやすい設備ではあるけれども、広い屋内という意味では自宅と近い気がしました。そうすると、この場所だからこその役割はどういうものなんだろうと。

 自分たちの家族だけで過ごすのではなく、ここに来ればスタッフは病気のことも、家族のこともわかる。その人と一緒に遊べたり、話を聞いてもらったりすることができます。あとは同じ病気のお子さんと一緒にここで遊ぶという使い方もできます。

—— みんなの中間地点的な場所としてあるんですね。

 そうですね。「親戚と一緒に会いたい」とか「うちが狭くて集まりができない」というような時もここを使っていただければと思っています。両家のおじいちゃんおばあちゃん、伯父さん伯母さんもみんなが集まって一緒にご飯が食べて、みんなで写真を撮ってお祝いができます。本当に「自由にこの場所を活用していただく」かたちですね。

「すごい特別なことを何かやっているか?」と言われたら、そんなことは特になくて

こどもたちのやりたいを実現してあげること

—— こどもはここをどういう場所と思って来ているんでしょう。

 「遊ぶ場所」と思って来ていると思います(笑)。

—— 「遊びに行こうか!」と思ってここに来ている感じなんですね。

 そうです。

—— なるほど。じゃあ、そのこどもたちも「普段できないこともここだったらできる」という感じをもって来ている。

 家や病院で日常的に思いっきり遊んだり、お外で遊んだりがなかなかできない子たちに、“普通の生活を保証できる”ということです。だから「すごい特別なことを何かやっているか?」と言われたら、そんなことは特になくて。お母さんたちが余裕がなくて難しかったりするようなことを一緒に考えてできたりします。

—— 家ではできないけど、この場所が関わることによって可能になることがある。

 そうですね。「ちょっとやってみたい」ということも、「どうやってできるか?」を一緒に考えられる。ボランティアさんもたくさんいらっしゃるので、協力してもらったらできることもあるかもしれない。そういう選択肢が増やせる。病院で子どもたちは、自分の中で折り合いをつけて生きていかなきゃいけない生活を送っています。でもここはそういう決まりもないし、遊びたい時にいっぱい遊べる。そこに制限をかけないでできる環境は用意できるのかなという感じですよね。

ホスピタル・プレイ・スペシャリストという存在

—— 児玉さんは、HPS=ホスピタル・プレイ・スペシャリストとして働いています。HPSは、遊びを使って病児や障がいのあるお子さんを支援する専門職だと思うのですが、児玉さんはHPSの役割をどう考えていますか?

 ここでのわたしのですか?

—— はい。

 開設して半年。まだ「模索中」という感じです。正直、「これ」と言葉で表せるところをまだ見つけられていないと思います。ただ「こどもたちの気持ち、こどもたちの目線になりたい」と思って働いています。

—— なるほど。HPSはいま日本に何名ほどいるものなんですか。

NPO法人日本ホスピタル・プレイ協会」という団体にいるHPSは200名くらいですかね。

—— HPSの資格を取る時は、具体的な「こういう遊びをする」とかじゃなくて、「遊びの持っている意味」みたいなことを勉強するのでしょうか?

 遊びの持っている意味も、もちろん勉強します。あとは、「こういう状況の子に、こういう遊びを」という実際的なアイディアみたいなことも学ぶことができます。いろんな遊びを学んで、「じゃあ、自分はこの状況の子に何をするか?」と実習でやって考え、実際にやってみたりしながら資格を取っていきます。

—— ホスピスでの「遊び」は治療でもないし、リハビリでもないということですよね。

 そうですね。治療やセラピーみたいなものではありません。

—— 児玉さんは、どういう風に「遊びが大事」と考えていますか?

 年齢が低かったりすると、こどもたちは言葉で「今、困っていること」や自分の気持ちを言えなかったりします。でも、遊びの中ではそういう「怖いこと」や「今、自分がどういう状況か」を、言葉じゃないやりかたで表現したりすることがあって、そうすることでストレスが解消されたりもするんです。遊びにはそういう力があります。だからといって、ストレスを発散させるためだけに遊ぶわけじゃないし、わたしが「こどもの気持ちを知りたいから遊ぶ」だけでもない。「遊び」はもともと楽しいものであることを忘れないようにしています。ただ、結果として遊んでいるうちにそういうところも見えてきたりもするので、そういうところを見逃さないように。難しく考えてしまうと、どこまでも難しくなってきちゃうので(笑)。

—— 言葉で言い表すと、遊びの自由な感じを損なわれるような気もしますよね。

 そうなんですよね。でも、こどもにとって遊ぶことって全然難しくない。朝起きてから寝るまで本当にずっと遊んでるじゃないですか。生活すること自体が遊びだから。そこを難しく考えなきゃいけない時もあるかもしれないけど、難しく考えすぎると自分もわからなくなってしまう(笑)。そこがおもしろくて、奥が深い点でもあるんですけど。何かをやる時のその子の気持ちをこっちが受け取って反応して、今度は向こうがそれを受け取って、またその子が反応してどうするか…みたいな。「絶対これじゃなきゃいけない」みたいなのがないのがおもしろい。

—— いわゆる保育士における「遊び」と、HPSの「遊び」に違いはあると考えていますか?

 わたしは保育とホスピタル・プレイを勉強したので、ハッキリとした線引きはない気がします。保育士も一見すると「ただお守りをしている」みたいな感じで受け取られたりもしますけど、それだけじゃなくて、それぞれの子の発達や体調も考えて接している。こどものことだけじゃなくて、家族のこととかもいろいろ考えてやっていて思うのは、線引きはないのかもしれないけど、「その子が治療していく上でどう思っている」とか、そういうところも汲み取れるような感じで関わっていくのがHPSです。アメリカ発祥のチャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)や、子ども療養支援士(http://kodomoryoyoshien.jp/)が活躍している病院もあります。「治療や検査、医療的処置をどう乗り越えられるか」について一緒に考えていくのは、保育士だけではちょっと難しいとは思います。共通しているのは、「療養生活を支える」というところですね。

主役は家族とこども。私はちょっとお手伝い。

—— そうすると、この施設での「遊び」は具体的にどういうことをするんでしょうか?

 例えば、入院中のお子さんがここに来てくれました。入院すると、最近は新型コロナウイルス感染症の対策もあってきょうだいも入れないんです。だからきょうだいが会うのも一年ぶりくらい。二人の好きな遊びをご両親に聞いた時、「二人ともおままごとが好きだ」と。「ここではとにかく家族で一緒に過ごしたい」「きょうだいで一緒に遊んでほしい」という思いがあったので、そこに今も置いてあるおままごとの道具をすぐ使えるように置いておいたんです。そうしたらもうここに来たら目にしたそばから遊びだしました。一年くらい一緒に遊ぶことができていなかったですけれども、ブランクを感じさせないくらい、自然に一緒に遊びだしていました。あとは、「人生ゲームやりたい!」とかもありましたね(笑)。「じゃあ、もうみんなでやろう!」って。家族二、三人で人生ゲームをやっても、そんなに盛り上がらないからこういう時にって(笑)。

—— 人生の数が少ない(笑)。

 そうなんですよ(笑)。UNOも「みんなでやりたい!」って。ここに来ればそうやってみんなでできるし、その子が「やりたい!」という遊びを考えてくる時間も楽しい。実際に来てやってみんなが一緒に盛り上がって、人と人とのつながりを感じたりする。それは家族もそうだし、その子も「自分と友だちがいっぱいいる!」みたいに感じてもらったりはできているのかなって思いますね。

—— 「ホスピスだからこんな特別なことが」じゃなくて、その子たちの「これがやりたいんだ!」ということを、ここだから集まれる人たちと一緒に楽しめるっていうことなんですね。

 そんなに特別なことをしているわけではないですね。主役は家族とこども。私はちょっとお手伝い。「わたしたちができることでどう楽しくなるか」とか「どういい時間を過ごせるか」とか。だから「脇役に徹したい」っていうことしか考えていません(笑)。

「病院とおうちの間くらいになれたら」

ひとりひとり違うこどもたちが心地よくいられるために

—— ホスピスで、一人のこどもと付き合う期間は様々ですよね。すぐに亡くなってしまう子もいるかもしれません。5〜10年と長く付き合えるケースもあると思うんですが。

 そうですね。病気がわかって治療しながらここに来てもらっていると、長く関われます。でも、病状が厳しくなってから使いたいとなると、本当に一回使えるかどうか、というところまでなってきています。

—— 長く付き合うとなると、例えば5歳だった子が15歳になると「遊ぶって言っても…」という年齢になると思うんです。そういう意味ではHSPは「遊び」だけじゃなく、共に時間を過ごしながら、お互いに成長していく状態のほうが長いということなんですかね。

 そうですね。きっとそうなってきますよね。今もけっこう年齢が高いお子さんだと「わたしたちのプロジェクトを一緒に盛り上げてもらう」みたいな感じで一緒に関わってもらったりもします。先日クラウンドファンディングをしたときも、こどもたちにメッセージをもらったりもして。一緒に盛り上げてくれるから楽しいですよね。「今ちょっとこういうことやってて、困ってるんだけど…! 絵を描いてくれない?」みたいな感じのお願いしました(笑)。そういうのを自分のSNSでシェアとかしてくれたりもして、一緒に盛り上げてくれています(笑)

—— 話せるの度合いが違いますよね。

 大きい子も小さい子も、みんなが自分の生活の中で、このホスピスのことを言ってくれるんですよ。「楽しかった!」とか「行ってみたよ!」とか。地域の人とか病院の人とか、学校の人、お友だちとかに言ってくれています。

—— リアルな声ですね。

 「PR大使!」と呼んでいます(笑)。

—— 成長すればするだけ、こどもたちは自分の病状や「自分の命はどこまであるんだろう」ということも考えると思うんです。そうした苦しい時の関わりかたについては、どう考えていますか?

 こどもたちがそこをわたしたちに伝えてくれるかはわからないですよね。ご両親を経由して相談を受けることもあるかもしれません。いづれにしても、わたしたちだけじゃなく、病院含め日常的に関わっている人たちも一緒に、家族や本人とみんなで考えてやっていかなきゃいけないことだと思います。間違ったことはやっぱり言えないし。「その子がわかるかたちでどうやって伝えられるか」。両親や病院の先生など、誰から話したらいいか、お子さんひとりひとり全然違う。

—— その子には家があって、病気を治療する病院があってとした時、こどもにとってホスピスはどういう場所であるべき。

 「病院とおうちの間くらいになれたら」という感じです。とはいえ、本当にそこがいいのかもまだわかりません。家族の味方になりたいですが、病院と家庭どちらかに偏ることはないと思います。

—— 「病院」と「家」にある種の距離があるとき、「そこをどうやったらうまくつなげられるか」という役割があるのかもしれないですね。

 そうですね。ここにいる看護師ももともと病院にいた人なので病院のこともわかるし、病気のこともわかる。家族としても、病院に相談するよりもわたしたちに相談するほうが時間にもゆとりがあります。そこで話を聞いて、「じゃあ、病院にどうやって言おうか」というところも話ができる。「こういうところが心配なんだね」ってお話する中で、お母さんたちも気持ちや情報の整理ができていくと思う。「絶対こうですよ」とは言えないから「話をしながら考えていきましょう」という感じでしかいられないですけど、でも現実には「そういう場所すらない」というのが、病気を抱えたお子さんのご家族だったりすると思うので。

その子の居場所がさらに増えるような状況をつくりたい

日常とその喜びを取り戻すためにできること

—— 「コミュニティ型」ホスピスは、緩やかに外とつながりながら存在している場所。そこで、その子にとっての「社会」が新しくでき上がっていくっていうことですよね。

 そうですね。「居場所が増える」というか。

—— 「遊ぶ」ことが結果的に居場所をつくっていることになるわけですよね。みんなに声をかけて集まれる場所があるというのは大事ですよね。

 そうですね。あと今年からやろうと思っていることがあって。こどもたちが学校とか幼稚園とか「もともといた場所に帰りたい」という話を聞くことが多いんですね。あと、それこそ就園をしていない状態で病気になっちゃって、そこから幼稚や保育園に行きたいんだけど、病気のこととかを理解してくれる園に出会えるかのハードルが高くなっています。そこでわたしたちが間に入って一緒に就園や就学に結びつけられないかと。それでその子の居場所がさらに増えるような状況をつくりたいなと思っています。いま「就園したい」となったら、お母さんたちが自分でがんばるしかない状況が多すぎるので。

—— それぞれの園に「こういう状況なんですが入れますか?」と。

 難しいですが、第三者として「そんなに大変なことじゃないんだよ」「こう気をつければ、普通の園でも集団生活を送れますよ」みたいな話をお母さんたちと一緒に園側にしながら、アプローチしたりできればと。ここでは集団生活を送らせてあげることはできない。けど、やっぱり4〜5歳になると、集団の中で経験して育っていくことはすごく大切。だから「難しいからやめよう」じゃなくて、とにかく「工夫してできることがあるんだったら、お手伝いしたい」と思っています。

—— 「病気がなかったら、通常しているであろう生活になるべく近づけてあげる」という役割を担っているわけですね。

そうです。やりたいことは、こどもたちに日常とその喜びを取り戻すということです。