石川将也の > 失敗から始まる
#1 クリームソーダから始まる
- 失敗から始まる
- 2021.7.21 WED
映像とグラフィックのデザイナーである石川将也さんが、日々のとある失敗から考察し、現象や原理を見つけ出していく連載。失敗から見つけたルールや仕組みを、次なる遊びの可能性へとつなげていきます。第一回目は、クリームソーダにまつわる失敗。
クリームソーダ。私の大好物です。
暑い日に外を歩き回っていて、たまらず逃げ込んだ喫茶店にこのメニューがあると、嬉しくておもわず注文してしまいます。
でも、前からちょっと、不満に思ってたことがあるんです。
氷がちょっと多すぎるんじゃないかな、と。
氷がたくさん入っているから、ソーダが少ない。
暑くて喉が渇いているときは、ちょっとものたりなく感じてしまうこともあります。
ひょっとしてこの氷、ソーダを節約してかさ増ししてる?
そんなわけで、自宅で作ってみることにしました。理想のクリームソーダ。
せっかくなので、ソーダをたっぷり飲むために氷なしでやってみましょう。
ぬるくなっちゃう? でもアイスが冷たいから平気だと思います。
ソーダをなみなみそそぎ、
そしてそこにアイスをドーン。
できました。
おいしそ…
あれ?
あれ?
なんか、どんどんもこもこしてきます。
お店で「クリームソーダです」と言って出されたら「どこがです?」と言ってしまいそうな代物ができてしまいました。
これは…失敗です。
でもどうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
ためしに、ちゃんと氷を入れてクリームソーダを作ってみて、それと見比べてみましょう。
氷がある方のソーダの場合、アイスは浮いている氷の上にのっかっています。
一方、氷無しの場合、アイスをソーダに入れると、アイスがソーダにざぶんと浸かっています。
どうやら、ソーダに触れたアイスが溶けて、ソーダの炭酸の泡と一緒になって、もこもこになっているようです。
飲み物に入っている氷って、冷やすためだけのものかと思っていましたが、クリームソーダの氷には、それに加えて
・浮くことで上に乗ったアイスがソーダに浸かるのを防ぐ
という役割があったようです。
「かさ増し」とか言ってごめんなさい。
クリームソーダのアイス、氷が水に浮くことを利用している、という意味で言えば、ホッキョクグマやペンギンの仲間と言えますね。
このクリームソーダの氷のように、ひとつのものが同時に複数の役割を果たしていることがあります。
氷は、機能的には「冷やす」という単機能に注目しがちですが、物体としてもっている特性(物性)はそれだけではありません。クリームソーダの氷は、「水に浮く」ことや四角くて上が平らで「物が載せやすい」といったことが非常にうまく組み合わさっていたのだと、作ってみてはじめてわかりました。
ここに至るまでに、さまざまな試行錯誤や失敗があって、定番のクリームソーダが生まれたのかもしれません。これだけでなく、物体がある機能を果たしている時に、「同時にほかに何をしているか」について考えてみると、隠された機能に気づけるかもしれず、おもしろそうです。
❶ アイスを、炭酸じゃない、普通のジュースに入れたらどうなるだろう?
ソーダの時のように、もこもこになるだろうか?
❷ ジュースの場合も、氷がある場合とない場合で、違いがあるだろうか?
❸ アイスの種類を変えるとどうなるのだろう? 例えば、ガリガリくんとか。
❹ そもそも、氷って水の中と外だとどっちが早く溶けるの?
ふつふつと、そんな疑問が湧いてきました。
みなさん、どう思われますか。
ほかにも気になることがあったら、クリームソーダがおいしいこの季節、おうちで試してみてください。
ちなみに、もこもこの失敗クリームソーダですが、
飲んでみたところ、ふわふわしていて、これはこれでおいしかった、ということをご報告しておきます。
(食べ物で実験するときは、きちんと最後まで食べましょう。)