ATHLETE EVERYONE CLIMBERS SKIERS & SNOWBOARDERS RUNNERS MOUNTAIN GUIDES PHOTOGRAPHER ADVENTURE RACER CLIMBERS ナサニエル・コールマン NATHANIEL COLEMAN ユタ州ソルトレイクシティ ボルダーの下に立つとき、それがユタ州の砂漠にある一枚岩であろうと、人工壁にある競技用の課題であろうと、ナサニエル・コールマンはいつだって頂点を極めたいという強い衝動を感じる。その衝動が、彼に2016〜2020年の間のUSAクライミングユースボルダーナショナルズにおける5つの金メダルをもたらし、2015年のIFSCボルダリングワールドカップではトロントとベイルで2つの銀メダル獲得を含む総合4位、2016・2017年のボルダリングオープンナショナルチャンピオンシップでは優勝という結果へと導いた。東京で初めて五輪の正式種目となるスポーツクライミングに、アメリカ代表の枠の2つ目を勝ち取ったのも、同じ衝動に突き動かされてのことだった。 頂点を目指す気持ちが初めて表面化したのは、10年前にナサニエルがユタ州サンディのモメンタムジムに足を踏み入れたときだった。生まれつきの上半身の強さ(幼い頃、懸垂をしすぎて両親に止められたことがある)と、問題解決能力(ルービックキューブを解いたり、競技チェスに熱中)を活かして、何をすべきかをようやく理解したのだ。彼と同年代の子どもでも競技に参加できることを知って、彼の競争心に火がついた。高所恐怖症を抱えながらクライミングを始めたにもかかわらず、最初の1ヶ月で5.10を登った。14歳のときには、クライミングユースボルダーナショナルズで4位に入賞し、数年後にはナショナルチーム入りを狙える手応えを得た。ワールドカップ参戦2年目の2015年、ナサニエルはワールドカップで2つの銀メダルを獲得。競技クライミングにおける未来の見通しは明るいものだった。 いつだってパワーで押すタイプのナサニエルは、まずボルダリングで評価を得たが、リードやスピードの分野でも力を発揮する技術力を身につけていった。このことは、2020年のオリンピックが2021年に開催されることになって一層、彼には有利な条件となる。この大会では、スピード、ボルダリング、リードクライミングの結果の総合成績が争点となるからだ。ナサニエルは、ビッグイベントを闘うための知識とスタミナを身につけている。2019年のトゥールーズオリンピック予選に向けて、彼は厳格なトレーニングサイクルを遂行し、1日6時間登り、睡眠と栄養を充分にとった。「初めてオリンピックでクライミングを競うことは本当に特別なことだけど、それが8時間で終わってしまうと思うと、なんだか現実感がありません」とナサニエルは言います。「他のアスリートと交流し、彼らから学びながら、そこでクライミングがどのような意味を持つことができるのか楽しみにしています」。一方でナサニエルは、一歩下がって新鮮な視点でトレーニングに取り組むことができる追加の1年に感謝している。彼は焦ることなく筋力を強化しながら、一週間を独自のトレーニングサイクルとして、より競技に直結するトレーニングをしていくという。 競技用クライミングは、特別な精神力とプレッシャー下でのパフォーマンス発揮を要求する。「競技のパフォーマンスの大部分は、コンペティションの最中に誰が一番感情をコントロールできるかにかかっているんだ」とナサニエルは言う。「50分間、自分にイライラしないように専念しないと」。すべての競技を終えた後は、彼は一度静かな精神的空間に戻り、リフレッシュして次のボルダーに向かうようにしている。ナサニエルのストレス解消法のひとつに、17世紀にさかのぼるけん玉がある。競技の合間に練習する彼の姿は、競技会場ではお馴染みだ。 また、リトル・コットンウッド・キャニオンやユタ州の砂漠でクライミングをしてストレスを解消することもある。屋外でのクライミングは、「まったく違うゲーム」とナサニエルは言う。「頭を正しく働かせ、すべての動きを完璧に行うための時間がたっぷりある。よく練習した複雑なムーブをどれだけ連続して実行できるかが重要になるんだ」。 彼の夢は、ニュージーランドのキャッスルヒルにある石灰岩のボルダーを登り、マヨルカでディープウォーターソロをすることです。また、スイスの世界レベルのボルダリングにも興味があり、南アフリカで自分のプロジェクトを展開したいとも考えている。 クライミング競技とは離れたところで、彼は自分が信じる目的をサポートする非営利団体や組織で働きたいと考えている。自分に重くのしかかる社会問題に、正面から取り組みたいのだ。ナサニエルの家族、友人、ファンは、彼が世界にポジティブな変化をもたらすことができると信じているが、まずはその前に、彼は自分の国を代表して、これまで以上に大きな舞台に立つことになる。東京はもう目の前にある。 主な成績 2020年(2021年) オリンピック・アメリカ代表 2015年 ボルダリングワールドカップ(コロラド州ベイル) 銀メダル 2015年 ユーススポーツナショナルチャンピオン 4度のボルダリングオープンナショナルチャンピオン パワー・オブ・ザ・サイク(V14)を含む、サンラファエル・スウェル(ユタ州)で数多くの初登を達成 セレブリティ・ケイブ(アリゾナ州)のリー・メジャーズ (5.14c)初登 南アフリカ、ロックランズのスピード・オブ・サウンド (V14+) EXPLORE ATHLETE 平山 ユージ Yuji Hirayama 野口 啓代 Akiyo Noguchi 楢﨑 智亜 Tomoa Narasaki 中嶋 徹 Toru Nakajima OTHER CLIMBERS
ユタ州ソルトレイクシティ
ボルダーの下に立つとき、それがユタ州の砂漠にある一枚岩であろうと、人工壁にある競技用の課題であろうと、ナサニエル・コールマンはいつだって頂点を極めたいという強い衝動を感じる。その衝動が、彼に2016〜2020年の間のUSAクライミングユースボルダーナショナルズにおける5つの金メダルをもたらし、2015年のIFSCボルダリングワールドカップではトロントとベイルで2つの銀メダル獲得を含む総合4位、2016・2017年のボルダリングオープンナショナルチャンピオンシップでは優勝という結果へと導いた。東京で初めて五輪の正式種目となるスポーツクライミングに、アメリカ代表の枠の2つ目を勝ち取ったのも、同じ衝動に突き動かされてのことだった。
頂点を目指す気持ちが初めて表面化したのは、10年前にナサニエルがユタ州サンディのモメンタムジムに足を踏み入れたときだった。生まれつきの上半身の強さ(幼い頃、懸垂をしすぎて両親に止められたことがある)と、問題解決能力(ルービックキューブを解いたり、競技チェスに熱中)を活かして、何をすべきかをようやく理解したのだ。彼と同年代の子どもでも競技に参加できることを知って、彼の競争心に火がついた。高所恐怖症を抱えながらクライミングを始めたにもかかわらず、最初の1ヶ月で5.10を登った。14歳のときには、クライミングユースボルダーナショナルズで4位に入賞し、数年後にはナショナルチーム入りを狙える手応えを得た。ワールドカップ参戦2年目の2015年、ナサニエルはワールドカップで2つの銀メダルを獲得。競技クライミングにおける未来の見通しは明るいものだった。
いつだってパワーで押すタイプのナサニエルは、まずボルダリングで評価を得たが、リードやスピードの分野でも力を発揮する技術力を身につけていった。このことは、2020年のオリンピックが2021年に開催されることになって一層、彼には有利な条件となる。この大会では、スピード、ボルダリング、リードクライミングの結果の総合成績が争点となるからだ。ナサニエルは、ビッグイベントを闘うための知識とスタミナを身につけている。2019年のトゥールーズオリンピック予選に向けて、彼は厳格なトレーニングサイクルを遂行し、1日6時間登り、睡眠と栄養を充分にとった。「初めてオリンピックでクライミングを競うことは本当に特別なことだけど、それが8時間で終わってしまうと思うと、なんだか現実感がありません」とナサニエルは言います。「他のアスリートと交流し、彼らから学びながら、そこでクライミングがどのような意味を持つことができるのか楽しみにしています」。一方でナサニエルは、一歩下がって新鮮な視点でトレーニングに取り組むことができる追加の1年に感謝している。彼は焦ることなく筋力を強化しながら、一週間を独自のトレーニングサイクルとして、より競技に直結するトレーニングをしていくという。
競技用クライミングは、特別な精神力とプレッシャー下でのパフォーマンス発揮を要求する。「競技のパフォーマンスの大部分は、コンペティションの最中に誰が一番感情をコントロールできるかにかかっているんだ」とナサニエルは言う。「50分間、自分にイライラしないように専念しないと」。すべての競技を終えた後は、彼は一度静かな精神的空間に戻り、リフレッシュして次のボルダーに向かうようにしている。ナサニエルのストレス解消法のひとつに、17世紀にさかのぼるけん玉がある。競技の合間に練習する彼の姿は、競技会場ではお馴染みだ。
また、リトル・コットンウッド・キャニオンやユタ州の砂漠でクライミングをしてストレスを解消することもある。屋外でのクライミングは、「まったく違うゲーム」とナサニエルは言う。「頭を正しく働かせ、すべての動きを完璧に行うための時間がたっぷりある。よく練習した複雑なムーブをどれだけ連続して実行できるかが重要になるんだ」。
彼の夢は、ニュージーランドのキャッスルヒルにある石灰岩のボルダーを登り、マヨルカでディープウォーターソロをすることです。また、スイスの世界レベルのボルダリングにも興味があり、南アフリカで自分のプロジェクトを展開したいとも考えている。
クライミング競技とは離れたところで、彼は自分が信じる目的をサポートする非営利団体や組織で働きたいと考えている。自分に重くのしかかる社会問題に、正面から取り組みたいのだ。ナサニエルの家族、友人、ファンは、彼が世界にポジティブな変化をもたらすことができると信じているが、まずはその前に、彼は自分の国を代表して、これまで以上に大きな舞台に立つことになる。東京はもう目の前にある。
4度のボルダリングオープンナショナルチャンピオン
パワー・オブ・ザ・サイク(V14)を含む、サンラファエル・スウェル(ユタ州)で数多くの初登を達成
セレブリティ・ケイブ(アリゾナ州)のリー・メジャーズ (5.14c)初登
南アフリカ、ロックランズのスピード・オブ・サウンド (V14+)