THE NORTH FACE MOUNTAIN

LAYERING THEORIES #9
2022 APRIL

“EXPEDITION DRY DOT” IMPRESSION Part. 3

肌面は撥水性、表面は拡散性という特殊な構造を持つ「EXPEDITION DRY DOT」は、汗処理能力に優れたベースレイヤーです。クライマー2人と「日本百名山ひと筆書き」の田中陽希さんに引き続き、登山やアウトドアショップのスタッフ3人のインプレッションをお届けします。

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肌面は撥水性、表面は拡散性という特殊な構造を持つ「EXPEDITION DRY DOT」は、汗処理能力に優れたベースレイヤーです。クライマー2人と「日本百名山ひと筆書き」の田中陽希さんに引き続き、登山やアウトドアショップのスタッフ3人のインプレッションをお届けします。

今回は北海道、埼玉、福岡と、各地のアウトドア関連ショップスタッフにコメントをいただきました。いずれも日頃からアウトドアスポーツに日常的に親しみ、山やクライミング好きが高じて専門店スタッフになった方ばかり。

浅木亮磨さんが勤める北海道の秀岳荘は、登山とアウトドアの専門店。豊かな自然に恵まれた北海道で、60年以上前から道内の登山家やアウトドアアクティビストを支えてきた老舗です。

浅木さんご自身も、夏は登山や沢登り、冬はバックカントリースキーにアイスクライミング、通年を通してトレイルランニングとクライミングと、アウトドア王国北海道を満喫しています。

続いて、九州の登山シーンを支える石井スポーツヨドバシ博多店の平野泰祐さん。標高2,000mを越える山もなく、日本アルプスからも遠い九州ですが、それだけに、九州の山好きは情熱に満ちています。

博多店のマネージャーを務める平野さんも、20代は各地の山小屋で仕事を続けてきたという山好きです。

ラストは、日本を代表するクライマーの平山ユージさんが経営するクライミングジム「Climb Park Base Camp」に務める松岡準弥さんに、スポーツクライミングでの着用感をうかがいました。

スケール的にも内容的にも国内トップクラスといわれるこのジムのオープニングスタッフでもある松岡さんは、仕事でクライミングに深く携わりつつ、休みの日はもれなく岩場に通っています。

20代から30代という3人の山好きクライミング好きショップスタッフの着用感に注目です。

——秀岳荘北大店スタッフ
浅木亮磨さんのインプレッション

北海道のアウトドアを支える老舗のアウトドアショップ、秀岳荘に勤務し、この春で2年目を迎えたという浅木亮磨さん。北海道の北見市生まれで、北海道教育大学時代はアウトドア関係の学科を学び、縦走登山を中心に山を楽しんできました。

入店後は札幌にある北大店1階のウェア売り場に配属になり、仕事が終われば毎日クライミングジムに通ってスキルを磨き、アルパイン要素の強い登山を志向するようになったそうです。現在、夏は沢登りにクライミング、冬はバックカントリースキーやアイスクライミングと、自然豊かな北海道のアウトドアアクティビティを満喫している様子です。

EXPEDITION DRY DOT ZIP HIGHを使い始めたのは今年の年明けからです。バックカントリースキーを中心に、アイスクライミングや、街でのロードのランニングや低山のトレイルランニング。

ランニングといっても冬の札幌ですから、街中の道にも雪があるし、低山のトレイルも雪道です。あとは仕事が終わったあとに通ったクライミングジムでも着ていました。

僕は身長169cmで63kgですが、Mサイズを着て少しゆとりのあるくらいです。サムホールが使えてちょうどいい感じです。

初めて使ったときは、汗の拡散力にびっくりしました。やはり、乾きが速いのはとてもいい。

もともと僕は、いわゆるメッシュのドライレイヤーを着て、そのうえに化繊のベースレイヤーを重ね着していたのですが、それを1枚でまかなうというコンセプトがよかった。やはり、一番下に2枚を重ね着するのはストレスでした。めんどくさいですしね。それが一気に解消されたはホントに良かった。

僕の場合、肌が弱いこともあって、バックパックを背負うと、それが干渉してちょっと不快な思いをすることがありました。今回、2枚を1枚にするというこのアイテムを手にしたときには、ベースレイヤーに対する考え方が少し変ったほどです。

レイヤリングとしては、このEXPEDITION DRY DOT ZIP HIGHの上には、ミッドレイヤーとして薄手のグリッドフリースを着て、その上にシェル。基本的にはこの3枚で行動していました。

ただ、北海道でマイナス10度を下回ると、さすがにこの3枚では寒いです。動き続けると温かなんですが、止まったときはシェルの上からビレイパーカーを重ね着していました。

逆に、3月になって春めいた低山や風のない樹林帯のなかでは多少暑いかなという印象がありました。北海道でもプラスの気温になってきていますし。まあ、少しでも風があると快適なんですけどね。

これから夏に向かう季節では、夏の沢登りのようにビショビショに濡れるような山行では、やはり撥水力や乾きの早さでドライレイヤーには敵わないと思うので、今まで通り、ドライレイヤーと化繊ベースレイヤーの組み合わせを選ぶと思います。

それに対して、たとえば大雪山縦走のような稜線歩きの登山なら、少しでも重ね着を減らす意味でも、このDRY DOTを使いたいですね。そういったかたちで、今後もこのEXPEDITION DRY DOTを使ってきいきたいと考えています。

——石井スポーツヨドバシ博多店スタッフ
平野泰祐さんのインプレッション

現在、石井スポーツヨドバシ博多店の平野泰祐さんは、福岡県出身の37歳。大学卒業後の20代は主に山小屋で働いた経験の持ち主。最初は北アルプスの黒部五郎小屋と双六小屋に1シーズンずつ。その後は、地元に近い百名山、九重山の法華院温泉山荘という山小屋に社員として6、7年ほど務めたそうです。

石井スポーツ入社したのは4年半ほど前で、博多店の各売り場を担当した後に、現在はマネージャーとして店全体を見る立場。そのため、登山はもっぱら九州の山で、北アルプスや南アルプスのような山に登りに行く機会が減っているのが悩みの種だそうです。

EXPEDITION DRY DOT CREWは、昨年3月に試着用サンプルウエアをテストさせてもらう機会がありました。そのときは店のスタッフ数人と九重山に登りに行きました。

3月下旬とはいえまだ寒く、朝は霜柱も立っていたほど。日中でも10度まで上がらなかったと思います。普段の私だったら、薄手のメリノウールのベースレイヤーを選んでいたと思います。

そのときの感想としては、非常に汗処理能力に優れたウエアだという強い印象が残っています。正直、いつも自分が着ているベースレイヤーの感覚とあまりにも違いすぎて、少し戸惑ったほどです。

私はとくに汗かきということはなく、普通だと思いますが、普段はメリノウールのベースレイヤーを着ることが多いので、汗を吸った状態の、なんと言うか、生地が湿気を多く吸い込んだ状態での温かさに慣れているんです。

ところが、このEXPEDITION DRY DOTは、汗をかいても常に吸収して拡散しているから、いつも水分が蒸発した状態で、肌面がすごくドライで、サラサラしていました。

ハイクアップを続けて熱くなった体は、汗をかいてそれが乾くことで体温調整になっているという実感が今まではあったのですが、それがサッと汗が消えていくので、なにかこう、自分のなかでの戸惑いがあったんですね。

私は身長が167cmで体重は57kgの比較的痩せ型なほうで、海外ブランドだとSやXSを着ています。このEXPEDITION DRY DOTはMサイズを着用しましたが、ちょうどいい感じでした。ストレッチや立体裁断もよく効いていて、着心地は良かったですね。

欲を言えば、もう少し気温が上がった季節に、あと何回かほかの山行で試してみたいと思います。また、これからの季節に、シャツを羽織って着てみたりするとどうなのか。そのあたりが気になります。

——Climb Park Base Camp入間店スタッフ
松岡準弥さんのインプレッション

日本でもトップクラスの内容とスケールを誇るクライミングジム「Base Camp」の入間店で働く松岡準弥さんは、12年前のオープニングからスタッフを続ける38歳。仕事では接客からインストラクション、ルートセットまでひと通りを経験し、15人いるスタッフのなかでも古株です。

自身もボルダリングからスタートしたクライマーで、現在はルートクライミングをメインに、休みのたびに岩場に出かけています。身長168cm、体重60kgというやせ型のクライマー体型。仕事でもプライベートでも、日頃からクライミングに接しているそうです。

EXPEDITION DRY DOT CREW を着始めたのは今年の1月からで、以来、ずっと愛用しています。休みの日に岩場に出かけるときには必ず着ていますし、仕事場でも着ていて、そのままジムの作業もします。

使ってきたのは比較的肌寒い季節だったので、素肌にこのDRY DOTを着て、その上にダウンのようなビレイパーカを着ていました。それでも寒い日は、間に薄手のフリースを着ることが多かったです。

今までは一番下には化繊やコットンのロングTを着ることが多かったのですが、たしかに違いを感じました。一番顕著だったのはアプローチでのことです。

朝、歩き出す前って寒いじゃないですか。車を降りて、準備を終えたらダウンジャケットを着たまま歩き出すのですが、やはり、30分も歩くとすごく暑くてダウンを脱ぎたくなります。そのときに、なんというか、あまり蒸れた感じがしない。それがすごく良くて気に入りました。

岩場に着いて、ひと休みしてからウォーミングアップを済ませて、それから登る準備。ハーネスやギアを身につけ、クライミングシューズを履いて、ロープを結ぶ。その段階でダウンやフリースを脱いで、クライミング開始です。

温かなダウンから、いきなりDRY DOT 1枚になって登るのですが、しばらくの間は熱が保持されている感じで、それほど寒さも感じません。体にはまだウォーミングアップの熱気が少し残っていて、それをDRY DOTの保温性がキープしてくれる感覚です。

また、ダウンを脱ぐ段階ではうっすら汗ばむくらいの状態なんですが、脱いでも肌に当たる生地からの冷たさは感じません。

クライミング中にストレスを覚えるのは、服が体にまとわりついてきたり、腕を上げたときに引っ張られたり、裾がハーネスからずり上がったりするときですが、このDRY DOTにはそれがない。

立体裁断が優れているのか、それともよくストレッチが効いた生地なのか。腕を上げても肩周りや裾あたりが引っ張られる感じもなく、もはや着ていることを感じさせないというか……。ともかく、クライミングの動きでまったく支障を感じたことはありません。

私は身長168cmでLサイズを着ています。登るときにまとわりつく感じが嫌いなので、余裕があるサイズ選びです。胸、腰回りは締め付けられないほうがいいし、クライミングでは前腕がパンプアップするので、袖もピッタリし過ぎないほうがいいですね。

仕事中も区別なく着ています。着ていて快適ですし、作業もできるし、そのまま登ることもできる。ジムの仕事仲間でも愛用者が何人かいて、とくに評判を聞いたわけではありませんが、みんなが着ているのをよく目にしています。

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LAYERING ITEMS IN THIS ARTICLE この記事のレイヤリングアイテム

寺倉 力
CHIKARA TERAKURA

ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてバックカントリーフリーライドマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。

2021.10.20
WRITER : CHIKARA TERAKURA
PHOTOGRAPHER : -

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