登山やアウトドアアクティビティでは、なぜ、レイヤリング(重ね着)が効果的なのでしょうか。前回(vol.1)の基本編に引き続き、今回は「実践編」。運動量の違いや個人差によって異なるレイヤーをどう選ぶか。寒い季節の実例をご紹介します。
■レイヤリングの実際
「レイヤー選択には個人差がある」
レイヤリングとは、重ね着をシステム化したアウトドアウエアの基本で、汗を処理するベースレイヤー(肌着)、体を保温するミッドレイヤー(中間着)、雨や風を防ぐアウターレイヤー(上着)という機能の異なる3つのウエアを重ね着すること。これが前回(vol.1)の話でした。
それぞれのレイヤーごとのウエアは、たとえば、ミッドレイヤーなら体を温かく保つといった同じゴールを目指していますが、素材や厚み、構造の違いによってさまざまな種類があります。それらをモジュールのように入れ替えながら、自分の好みや目的に合った組み合わせを選びます。
たとえば、同じ日に同じルートを歩いたとしても、暑がりの人と寒がりの人では、身につけるウエアは違って当たり前。経験を重ねていけば、ご自身に合ったレイヤーをチョイスし、季節やコンディションに合った快適なウエアで行動できるようになります。
以下は、そのあたりを念頭に置きつつ、冬期登山を想定したレイヤリング例です。
■実例1:暑がりの人のレイヤリング
「オーバーヒートを防ぐウエアのチョイス」
状況1_冬の低山トレッキング、樹林帯のアプローチ、深いラッセル、好天時のアルパインクライミングなど
0.5 LAYER
▶「100DRY TANK」
疎水性メッシュ素材で汗戻りを防ぎ、肌をドライな状態に保つ
BASELAYER
▶「EXPEDITION GRID FLEECE HOODIE」
吸汗速乾に優れ、適度な保温力と通気性で汗蒸れしない薄手フリース
MID LAYER
▶「FL HYBRID VENTRIX HOODIE」
防水透湿素材とアクティブインサレーションのハイブリッド
暑がりで汗かきの人や、多量の汗をかくシチューエーションを想定したレイヤリング例です。
極寒の厳冬期といっても、快晴無風の日は意外と暖かいもの。また、ハイペースで行動したり、深いラッセルが続くような状況では、やはり、多量の汗をかきます。もしも風や降雪がない状況なら、アウターシェルを脱いで行動したほうが快適です。
そんな状況でのレイヤリングのコツは、温かすぎない薄手のレイヤーを選ぶこと。歩き出しは多少寒さを感じても、行動することで適温を維持するアクティブインサレーションを基本にした組み合わせがお勧めです。
肌面には疎水性メッシュ素材の0.5レイヤーを着ることで、汗だくになっても汗冷え感を防ぎ、吸汗速乾性の高い薄手グリッドフリースに汗を吸収させて乾燥を促します。
ミッドレイヤーはVENTRIX素材のアクティブインサレーション。ほどよい保温力を維持しながら、汗蒸れ感を感じさせない抜けの良さがあり、表地は防水透湿素材のFUTURELIGHT™なので、不意の風や降雪にもしっかり対応してくれます。
また、ベースレイヤーとして選んだEXPEDITION GRID FLEECE HOODIEは、寒さが和らいだ季節はミッドレイヤーとしても活躍してくれます。
状況2_降雪時の冬山全般、アイスクライミング、冬のアルパインエリアでの行動
0.5 LAYER
▶「100DRY TANK」
疎水性メッシュ素材で汗戻りを防ぎ、肌をドライな状態に保つ
BASELAYER
▶「EXPEDITION GRID FLEECE HOODIE」
吸汗速乾に優れ、適度な保温力と通気性で汗蒸れしない薄手フリース
MID LAYER
▶「FL HYBRID VENTRIX HOODIE」
防水透湿素材とアクティブインサレーションのハイブリッド
OUTER LAYER
▶「HYBRID SHEERICE JACKET」
最強のプロテクション性を発揮するGORE-TEX素材のシェル
「状況1」に、アウターシェルを追加したレイヤリング例です。防水性、防風性、強度と耐久性、透湿性に優れたゴアテックス素材は、荒天に対するプロテクション性能としては、やはり群を抜く性能を発揮し、厳冬期の過酷なコンディションから身を守ってくれます。
ただし、大量に汗をかく状況では熱がこもりやすく、かえって汗で濡れることになる恐れもあるので、風や降雪のない状況では、シェルを脱いでバックパックに収納して行動します。
■実例2:寒がり人のレイヤリング
「ヒートロスに対応するウエアのチョイス」
状況1_冬の低山、寒冷地のアプローチ、好天時のアルパインクライミング
BASELAYER
▶「EXPEDITION DRY DOT ZIP UP」
肌面の撥水生地で汗冷えを防ぎ、表面で速乾を促すハイテクベースレイヤー
MID LAYER
▶「EXPEDITION GRID FLEECE HOODIE」
吸汗速乾に優れ、適度な保温力と通気性で汗蒸れしない薄手フリース
MID LAYER
▶「AGLOW DW LIGHT JACKET」
表地と裏地にGORE-TEX INFINIUM™を採用した化繊インサレーション
極寒の地での行動や、寒さに弱い人を対象にしたレイヤリング例です。
厳冬期の夜明け直後から行動のような、体の芯から冷えるような寒さは堪えるもの。多少、行動し始めたところで、なかなか体は温まってくれません。
そんなときに威力を発揮するのが、ダブルウォール構造のAGLOW DW LIGHT JACKET。断熱素材AEROGELを練り込んだ化繊中綿素材を、表地と裏地と2枚のGORE-TEX INFINIUM™で挟み込んで熱を逃がさず、薄手軽量ながら高い保温力を発揮します。
ミッドレイヤーながら、表地が防水透湿素材のGORE-TEX INFINIUM™ということで、アウターとして着用しても、多少の風や降雪には十分な耐候性があります。
状況2_降雪時の冬山全般、厳冬期のアルパインエリアでの行動
BASELAYER
▶「EXPEDITION DRY DOT ZIP UP」
肌面の撥水生地で汗冷えを防ぎ、表面で速乾を促すハイテクベースレイヤー
MID LAYER
▶「EXPEDITION GRID FLEECE HOODIE」
吸汗速乾に優れ、適度な保温力と通気性で汗蒸れしない薄手フリース
MID LAYER
▶「AGLOW DW LIGHT JACKET」
表地と裏地にGORE-TEX INFINIUM™を採用した化繊インサレーション
OUTER LAYER
▶「HYBRID SHEERICE JACKET」
最強のプロテクション性を発揮するGORE-TEX素材のシェル
厳冬期のアルパインエリアは、強い風を伴った降雪が付きものです。視界を遮るような吹雪のなかでこそ、ゴアテックスのシェルと保温性の高いミッドレイヤーを着込んだ無敵の安心感を実感できます。
「状況1」のレイヤリングに、信頼性の高いゴアテックスのアウターシェルを重ねた荒天対応仕様。高い防風性と防水性を誇るゴアテックスが、アルパインエリアの風と雪をシャットアウトし、湿気に強いダブルウォール構造のAGLOW DW LIGHT JACKETが、体の熱をしっかり閉じ込めて保温します。
■実例3:オーバージャケットを併用するアクティブなレイヤリング
状況_厳冬期のアルパインクライミング、アイスクライミング、バックカントリースキー&スノーボード
0.5 LAYER
▶「100DRY TANK」
疎水性メッシュ素材で汗戻りを防ぎ、肌をドライな状態に保つ
BASELAYER
▶「EXPEDITION GRID FLEECE HOODIE」
吸汗速乾に優れ、適度な保温力と通気性で汗蒸れしない薄手フリース
MID LAYER
▶「FL HYBRID VENTRIX HOODIE」
防水透湿素材とアクティブインサレーションのハイブリッド
OUTER LAYER
▶「HYBRID SHEERICE JACKET」
最強のプロテクション性を発揮するGORE-TEX素材のシェル
OVER JACKET
▶「AGLOW DOUBLEWALL JACKET」
外からも中からも湿気を防ぐダブルウォール構造のビレイジャケット
厳冬期の雪山でストップ&ゴーを繰り返すクライミングやバックカントリーツアーのためのレイヤリング例です。
行動中は、汗や熱気の抜けを優先した「動的保温(アクティブインサレーション)」でオーバーヒートを軽減し、クライミングではビレイ中、バックカントリーではモードチェンジといった停止時に足りない保温力を、化繊インサレーションのオーバージャケットをシェルの上から着込むことで補うという考え方。
高い保温力を誇るAGLOW DOUBLEWALL JACKETは、表地と裏地にGORE-TEX INFINIUM™を採用したダブルウォール構造。この特徴的な機能性により、絶え間なく降り注ぐスノーシャワーから身を守るプロテクション性を備えつつ、同時に、裏地のゴアテックスが水分を遮断するため、雪まみれになったシェルの上から気兼ねなく重ね着することができます。
行動中はバックパックの出しやすい位置に収納して、必要になったときに、さっと取りだしてシェルの上に羽織る。出し入れすることを惜しまず使いたいので、収納するときはいちいちスタッフバッグに入れずに、そのままバックパックを開けた隙間に押し込むような収納がお勧めです。
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寺倉 力
CHIKARA TERAKURA
ライター+編集者。高校時代に登山に目覚め、大学時代は社会人山岳会でアルパインクライミングに没頭。現在、編集長としてバックカントリーフリーライドマガジン「Fall Line」を手がけつつ、フリーランスとして各メディアで活動中。登山誌「PEAKS」では10年以上人物インタビュー連載を続けている。
2021.10.20
WRITER : CHIKARA TERAKURA
PHOTOGRAPHER : -