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Yoga Benefits for Runners #02
ヨガはランナーにどう良いのか | 後編
〝インストラクター″になって、やっと何者かになれた
THE NORTH FACE Sphereで毎週木曜日に行われているヨガレッスン「IGNITE YOGA × THE NORTH FACE Sphere Special Class」。前編では、TNF事業部のランナーたちが参加したイベントの様子をレポート。後編では、講師を務めてくれた、IGNITE YOGAのMiyuki Kaiさん自身のヨガ&ランライフにフォーカスを当てたインタビューをお届けする。
Miyuki Kaiさんがヨガを始めたのは、新卒で入社したメーカーに勤めていた頃。当時は、仕事終わりの「習い事」に過ぎなかった。
「ホットヨガだったので、汗をかけて気持ちいいな、くらいのレベルでした。細々と続けていたんですけど、転職した先で『やり切った』と思えた時に、28歳くらいでしたが、本格的にヨガを学ぼうと思い、全米ヨガアライアンス資格を取得できるスクールに通い始めました」
ヨガを仕事にしようとまで思った理由を聞くと、しばし考えて当時の想いを聞かせてくれた。
「前職が広告営業で、美容室に飛び込み営業をたくさんやっており、美容師さんと話す機会が多かったんです。〝美容師″は、聞けばどんな仕事なのか、誰にでもすぐわかるじゃないですか。それがカッコいいなと思って。一方、私がやっていた広告営業って、仕事自体は楽しかったんですけど、すぐには伝わらないんですよね。『こういうところに行って、こんなことをして~』と、説明を付け足さないとならならず、〝自分が何者であるか″、バシッと言えないことがどこかでコンプレックスになっていました。でも、中瀬萌自分に特別な才能があるわけでもない。ならば、自分を表現するのに〝インストラクター″がいいんじゃないかと思ったんです」
念願だった〝ヨガを伝える″という自分になれ、今では「天職」と胸を張って言える。
「ヨガをすることで一人ひとりのマインドがよくなれば、その周りにいる家族や仕事仲間にもいいマインドがどんどん広がります。そのお手伝いができていると思うと、社会貢献というと大袈裟かもしれませんが、本当にいい仕事だなって」
しかし、それまでには、ヨガがイヤになった時期もあったと振り返る。
「かわいいウェアを着て、ヴィーガンのような食事をして…みたいなことが、無理しているように感じられて、ヨガっていったい何なんだろうと迷いが生じたんです。そんな時に、juriさんのレッスンに行ったら、お酒が大好きな方とか、いろんなライフスタイルの人が参加していて、コレだよなって。ヨガのためにヨガをやるんじゃなくて、〝ヨガとは、ヨギーとはこうでなければいけない″みたいなことに捉われず、それぞれのライフスタイルに合わせてやっていけばいいんだと思えてからは、すごくラクになりました」
ヨガのメンタルコントロール術でフルマラソンを完走
juriさんとともにIGNITE YOGAの立ち上げから参加しているKaiさん。毎年7月に、自らが決めた距離を毎日走り続け、SNSで報告し合う〝イグランチャレンジ″をきっかけに、3年前に走る楽しさにも目覚めた。走ることが習慣化し、今は気分の赴くまま、週1、2回ランで汗を流す。昨年は、東京マラソンで初フルにも挑戦した。
「長距離になればなるほど、あと何キロとか、〝先″のことを考えると、体力よりも先にメンタルが辛くなってしまいますけど、ヨガのマインドで〝今″に意識を向けながら、42.195キロを走り切ることができました。もちろん、どうしたってキツいだけの時間もありましたけどね(笑)。残り2キロはもう、ギリギリでメンタルをコントロールしていましたけど、ゴールした瞬間は爽快で、走らないとわからないハッピー感に包まれていました。もうフルは走りたくないとその時は思うのに、また大会に出る人の気持ちもよくわかりましたね。初フルでは4時間切れたので、いつかサブ3.5を目指したいです」
ヨガインストラクターとして大切にしているのは、等身大の自分でいること。ヨガを伝えるという立場だからといって、普段の自分より大きく見せようとしたり、実際に身体や心で感じていないことを話さないように心掛ける。
「クラスに参加してくれた方々が自分自身の身体や心と向き合えるようにリードはしますが、レッスンの時間はあくまで、みなさんがヨガをする時間。先生ではなく、私もみなさんと同じ気持ちで臨むようにしています。ヨガは身体が固いとできないといったイメージがまだまだありますが、けっして特別な誰かのためだけのものではありません。気軽にできるものというイメージを持ってもらい、よりよく生きるための手段にヨガがなるような活動を続けていきたいです」
ランナーたちのヨガへの素朴な疑問に答える
「IGNITE YOGA × THE NORTH FACE Sphere Special Class」に参加したTNFのスタッフ6名から寄せられた質問に、Kaiさんが回答してくれた。
鵜野貴行(TNF Sphere店長)
Q.自分が練習する時に大切にしてることは?
自分の身体の感覚とつながること。マットの外のことに意識が向きそうになった時、呼吸と身体に意識を向けて集中しています。
矢吹沙樹(TNF Sphereスタッフ)
Q.朝と夜とで、内容は変えた方がいいですか?
朝はアクティブに、夜は睡眠に入りやすいように、ほぐしやストレッチなどゆるめる動きがいいですね。ただ、仕事で頭が疲れていたり、遅くまで働いて眠れない時は、少しアクティブに動いたほうが、リラックスできる場合もあります。
西野美加(TNF事業部ライフスタイルGマネージャー)
Q.身体を柔らかくする&ゆっくり眠れるストレッチやポーズは?
身体をしなやかにするには筋肉を使うことも大事なので、〝ほぐす・使う・伸ばす″を繰り返すといいです。ストレッチの前には、ストレッチポールやボールでほぐすのがおすすめ。お尻の外側や腿の外側、背中、ポーズで言うとハーフピジョンなどのお尻を伸ばすポーズや、チャイルドポーズからお尻を持ち上げて頭のてっぺんを刺激してみてください。個人的には、寝る前にボールでお腹をマッサージすると深い眠りにつけます。
青柳友梨(TNF事業一部MD)
Q.月2~3回ヨガに通っているのですが、その頻度ではできないポーズが…。
筋肉は使うごとに柔らかくなっていくので、まずは、週1に増やしてみてはどうでしょう。また、筋肉は複雑に繋がっているので、一個のポーズを集中して練習するより、他の動きをやっているうちにいつの間にかできるようになった!なんてことがよくあります。
後藤大志(TNF事業部パフォーマンスGマネージャー)
Q.ヨガを続けることで感じられる、マインドの変化や身体の変化は?
ランニングもそうですが、ヨガはマットの上で自分の呼吸と身体に意識を向けていきます。最初は、キツいポーズで力が入ったり、呼吸が浅くなったとしても、ヨガを続けるうちに、その自分に気づき、「じゃあ、どうすればもっと力が抜けるか?」「呼吸が深まるか?」など視点を変えられるようになります。マットの上で意識の転換ができるようになると、仕事や人間関係でうまくいかないことがあっても、感情に流されることなく、「じゃあ、どうすればよくなるか? ネガティブな中にもマシな部分はないか?」など意識を変えて、次に繋げていく力がついていきます。
身体的には、普段使えていない筋肉を使うコツがわかってきて、伸び縮みするしなやかな筋肉がつきます。怪我を防げますし、身体の使い方が上手くなると思います。