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Trail Running & Yoga Trip
“今と向き合う”が共通点。トレイルランニングとヨガを楽しむ1DAYトリップ
高尾山を舞台にトレイルランニングとヨガのセッションへ
都心からのアクセスが良く近年は移住者も増えている高尾エリア。高尾山や陣馬山など、豊かな山々に引き寄せられた登山者やランナー、ハイカーたちが次々に集い、自然と交流が生まれている。そんな光景が広がる朝の高尾で、トレイルランニング×ヨガの体験会が開催された。
参加者は、人気スタジオIGNITE YOGAのインストラクターであるMiyuki Kaiさんと同スタジオで活躍するNaoko Oriharaさん、Yuki Kakiuchiさん。ロードランナーでモデルのMAIKOさん、フリーランスのPR佐竹さんと、THE NORTH FACEのショップからは、ランニング&トレイルランニング歴のある男性3名。
あえてグループ分けするなら、女性陣は「トレラン初心者」。男性陣は「ヨガ初心者」。それぞれのアクティビティにどんな考察や親和性が生まれるのか、その模様をレポートする。
ローカルのランナーの案内でいざトレイルへ 高尾トレイルのアテンド役は、〈OVERVIEW COFFEE JAPAN〉コミュニケーションマネージャーであり、トレイルランニング歴10年の矢崎智也さん。「楽しかったという印象を持ち帰ってもらいたい」ということで初心者コースを案内してもらった。まず登りは、ゆっくり歩いても良いくらいのペースで、フラットな場所や下りは気持ちよく快適に走れるよう配分してくれた。
目指すルートは、高尾山口駅から草戸山まで。距離にして6.2km、登りと下りは480mずつの高低差があり、スタートしてから600mほど登ったあとは、緩やかなアップダウンが残り500mまで続いていく。体力にあまり自信がない人でも3時間弱で周れるコースとなっている。「みんなで走るのが楽しみ」「こんな機会が欲しかった」と和やかなムードではじまった。
大自然をロケーションに3時間ほどで下山したトレランのセッション。「登りはグループで会話しながら走っていたけど、だんだん会話ができなくなってきて無心で静かに走る場面があった」と、想像よりもエネルギーを消費した様子。経験者にとっては、「グループで走る楽しさもあって新鮮な気持ちで森の中を楽しめた」と心地よいコースだったようだ。それぞれのトレイルを走り終えた後で、呼吸を整え、スタジオへ移動する。
トレランで緊張した身体をヨガで緩める
普段は原宿のスタジオでレッスンをしているMiyukiさん。土地柄かバリバリ仕事している人がたくさん訪れる場所なだけに、力を抜いてじっとすることができない人が多いと感じるという。力みを解消するのに一番大事なのは呼吸だと説明し、「無意識な呼吸を意識的に観察し、マットの外にあるものと切り離す時間にしたい」と、いまこの時間に集中するリードを促してくれた。
「走ると身体が硬くなりがちなので、肩、胸、股関節まわり、お尻、膝裏をのびのびストレッチするような時間にしました。疲れもあるので40分間程度。きっとシャバーサナ があと2〜3分長かったらみなさん寝てしまってましたね」
現に、リラックス効果も高かったヨガのセッションでは、最後のシャバーサナで寝てしまう人もでたほどだ。
今回のシークエンスは仰向けで背中をほぐす姿勢からゆっくり血流を戻し、座位でお腹や背中、肩甲骨まわりを意識し呼吸を整えてからスタンディングポーズへと向かった。難しいポーズはなく、Miyukiさんのリードに委ねられた参加者にはほどよい音楽とともにゆっくりとした時間が流れた。
トレイルランナーが体験したヨガのインパクト
今回のヨガセッション、ベテラントレイルランナーたちにはどう映ったのか。
「凝り固まった身体をヨガで緩めるとアライメントが整い疲労が溜まりにくくなるので、パフォーマンス向上を図る上でもヨガは有効だと感じました。トレランは景色、自然の音、風や陽射しなど外の刺激を受けながら自身に没入する時間もあり、それが瞑想のようだと思っています。ポジティブに物事を捉え自然を楽しむためのマインドを整えてくれるところがメリット。心に余白を作る部分がヨガとも共通していますね(TNF Sphere 鵜野)」
「トレイルランニングは精神的な落ち着きや安定が大きく結果に左右するため、辛くなっても焦らず自身の内側と向き合える良さがあります。レース後に残る疲労のリカバリーと可動域の広がりを求める人にオススメしたい。(TNF Sphere 林)」
「トレイルランニングはアップダウンの繰り返しで体幹を使うスポーツ、ヨガは初めてで一人でバタバタしていましたが、ハードに身体を酷使した後自分自身と対話することで気持ちがリラックスしたので非常に効果的だと実感しました。(TNF FLIGHT TOKYO潮)」
Miyukiさん曰く、ヨガの前に参加者が同じアクティビティを共有できると、レベルは違えど疲労の度合いは似たような状態になる。その状態で身体をメンテナンスしていくと、参加者同士の一体感も生まれてくるという。
普段はロードを走るMAIKOさんと、佐竹さんはこう話す。
「トレランは、普段のロードランとは脚の使い方が違いました。街中を走るのと比べて、意識することも多くて、エネルギー消費もすごかった。緩急があったおかげかヨガのリラックス効果が高く、どちらも頭を空っぽにできましたし、相性の良さを感じました」(MAIKO)
「脳が覚醒して無心になるトレランと、身体がリラックスして無心になっていくヨガ。対照的なものですけど、都市生活者にこそ、どちらも必要な要素だと感じましたね」(佐竹)
今、この瞬間にどう立ち止まるか
日頃からフィジカルやメンタルの鍛錬をしているヨガインストラクターにとって、対局とも言えるトレランとヨガ。IGNITE YOGAの女性陣にはどう感じられたのか。
「ヨガの動きは基本的にゆっくりなので、時折、レッスン中にそわそわして携帯をさわったりしてしまう参加者もいます。でもトレランは、一瞬でも意識が外に向いた途端に怪我をしてしまう可能性がありますよね? ロードランとの違いも、そういう部分にあると感じました。この先、デジタルな時代はさらに加速するので、都心に住む人たちにおすすめしたいスポーツだと痛感しました(Miyukiさん)」
「ヨガはマットに座ることで 、今に集中していくよう促しますが、トレランは山を走ることで自然と今に集中する状態に身を置くことになります。目的や方法論はちがうけれど、“今と向き合う”状態を持つことは共通する部分があると思いました。ヨガをしていなかったとしたら、こうしたマインドの部分は気づけなかったかもしれませんね(Naokoさん)」
「ヨガって、バランスが大切なんです。トレランは上りだけではしんどくて、下りがあるから楽しいんですよねきっと。スポーツを掛け合わせることで使う筋肉が全く違うことに気づいたり、自然の素晴らしさに感動したり、今日は都心から自然に出てくることで、いろいろなことを新鮮に感じることができました。何事にも執着せず、自分の心と身体のバランスと向き合って楽しんでいけたらと思いました(Yukiさん)」
自然の中でも、マットの上でも、日々学んでいるのは「より良く生きていくためのヒント」だと参加者たちは口を揃える。
目まぐるしく変化する現代社会の中で立ち止まるきっかけをくれる、トレイルランニングとヨガ。フィジカル面も、メンタル面も補完し合える2つのアクティビティの魅力を体感できるだけでなく、対照的な競技に共通する部分を掘り起こすことができたのも、今回の体験の大きな収穫だった。