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EXPLORE SOURCE
気持ちを伝える一筆書き
不要になった服をリサイクルし、新たなウェアを作ることで、次なる冒険へとつないでいく取り組み〈EXPLORE SOURCE〉。そのコンセプトを一本の線で表現したグラフィックTシャツが完成した。手掛けたのは、アートやカルチャーとアウトドアを自由に行き来するイラストレーター / アートディレクターのジェリー鵜飼さん。ジェリーさんに聞く、アウトドアのこと、循環のこと。
「山との出会いはね、美大生だった時に手に取った『観光-日本霊地巡礼』という本がきっかけ。中沢新一さんと細野晴臣さんが、日本の霊地を巡りながら対談するという内容で、当時大好きだったんだけど、その中で丹沢の大山が出てきた。これは行かなきゃダメだよねって、登ったのが始まり。その時は、ザックとか装備もいい加減で、山というよりはパワースポット巡りという感じだったな。その後、本格的に始めたのは2009年頃。雑誌で外遊びをする連載のデザインを担当したんだけど、素材で来る写真が楽しそうでね。来月から取材にも行かせてよって言って参加したことでのめり込んでいった」
はじめは借り物の道具で取材に参加していたジェリーさんだったけれど、やがて自身の装備も揃えるようになり、アートディレクターの目線からアウトドアの道具を選んでいくようになった。
「最初はウェアも含めてあんまりかっこよくないなって思ってた。自分の好きな感じは、70年代ぐらいまでのバックパッカーのスタイルとかそういうもの。でもだんだん同じことを考える人たちが増えていって、良い感じのブランドも増えて、世代的にちょうどラッキーだった。一巡するいいタイミングで波に乗ったみたいな気分があるよ」
アウトドアに惹かれるようになったジェリーさんは、軽量な道具で山歩きを楽しむUL(ウルトラライト)ハイキングのムーブメントに黎明期から加わる一方で、〈ULTRA HEAVY〉というユニット名で展覧会やイベントを行い、軽さだけにとらわれない遊び心を表現したりもしてきた。最近はトレイルランニングやフライフィッシングもアクティビティの中に加わり、自由自在に自然と触れ合っている。
アウトドアを愛した人たちの気持ちを繋ぐ
今回の〈EXPLORE SOURCE〉のモチーフは、そんなジェリーさんの好きな往年のバックパッキングのテイストと循環というテーマが見事に融合した一筆書きのイラスト。どのような着想とプロセスでその制作は行われたのだろうか。
「友達のアートディレクターの影響があるんだけど、いつも仕事をする時にその企業が世の中に対してどういうスタンスでやってるかっていうのは意識するようにしてるんだ。仮に条件が良くても賛同できない会社の仕事はやりたいと思えない。〈EXPLORE SOURCE〉に関しては、これは断れないじゃない?二つ返事で引き受けたよ。
僕の絵はね、すごく柔らかい感じのゆるいものが多くて、〈THE NORTH FACE〉のシャープなイメージと合うかなとまず考えた。そして不要になった服をリサイクルし、新たなウェアを作る、その感じをどうやって使おうかというのは、すぐにはわからなかった。やがて頭の引き出しのどこかに入っていた一筆書きという手法が浮かんできて、この企画にふさわしいタッチを開発していった。一本で繋がるということ。それこそ例えば自然保護の父と呼ばれるジョン・ミューアのようなアウトドアを愛した人たちの気持ちが、次の世代にも一本の線で繋がっていくのが表現できていたらいいかな」
仕上がった〈EXPLORE SOURCE〉のグラフィックは若者から老人までが世代を繋ぐ一本の線で表現され、再生された糸がアパレルになるイメージも想起させる、豊かなイメージをもったビジュアルとなった。
次の世代へと繋ぐ循環
自然と触れ合ってきたジェリーさんにとって、循環は自ずとテーマになっている。ただ、それをこれまでは声高に主張してはこなかった。
「環境や循環ということを突き詰めて考えると人間がいない方がいいってことになってしまうから、自分のエゴや家族が大切ということを守りながら、どうやって気持ちの折り合いをつけていくか。そうするとまず、簡単なことしかやっていないんだ。
うちはペットボトル飲料を買わないことにしているんだけど、それでゴミはなくならない。行政を巻き込んだりしない限り大きくは変わらないのはわかっているけど、個人として生活を変えてみるのはすごく楽しい。辛くないし、楽しいって感覚でやる。そういうのは続けていきたいね」
そんなジェリーさんの姿勢は小学生になる娘さんにも受け継がれていきそうだ。彼のSNSを覗いてみると娘さんと近所の川で川遊びを楽しんだり、一緒に山に登ったりと自然に触れる機会を積極的に作っていることがわかる。
「自分が子どもの時に体験した遊びとか、野山で遊んだことって失くしたくないなって思う。やっぱり、土で遊んでた感じとかすっごく楽しかったから。娘がいつまで付き合ってくれるかはわからないけど、中学生くらいになったら一緒にバックパックを背負って北アルプスや奥秩父なんかを縦走したいよね、強制的にでも(笑)。だから今回〈EXPLORE SOURCE〉にキッズウェアが加わったことは親として嬉しい。自然遊びをしていると自然の良さがわかるようになるじゃないですか。なるべくそういう気持ちになる人を増やしたいから、子どもには種を植えておく。育つか育かないかはその子次第だけどやるだけやってみる」
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