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RUNNING

VECTIV™ IMPRESSIONS 100MILER

トレイルランナーが求める“自然体で走れるシューズ”とは

トレイルランナーにとって「理想のシューズ」とはどんなものなのか。 そんな問いに対して、鏑木毅が率いるトレイルランニングコミュニティ『チーム100マイル』のメンバーの話を聞きながら考察したレポートをお届けしたい。

この日、『チーム100マイル』のメンバーは群馬県桐生市を舞台にトレーニングを実施していた。桐生駅をスタート&ゴールに、標高481m、市内の最高峰である吾妻山から鳴神山にかけて伸びる縦走コースを活用した約31km、累積標高2,150mのルートだ。総勢20名ほどのメンバーが参加したこのトレーニングにおいて、THE NORTH FACEより発売されているトレイルランニングシューズ「VECTIV™」の試し履きを行った。

なお、『チーム100マイル』に対して行った「VECTIV™」の試し履きは、2023年秋に実施してから今回で2回目となる。

▶︎「VECTIV™」にどのような印象を持ったのか。
▶︎ 彼らにとっての理想のシューズとはどんなものか。

2つの問いを持ってメンバーたちの声を拾い集めた。と、その前に「VECTIV™」というシューズについて、少し補足する。

4つのモデルがラインナップする「VECTIV™」。トップアスリート向けと位置付ける高機能モデル「SUMMIT VECTIV™ PRO」は、カーボンの3D(立体的な)プレートが入り、反発力が最も高いモデル。そして、この「SUMMIT VECTIV™ PRO」とタイプは同じながら汎用性も高く、最もクッション性の高いモデル「VECTIV™ ENDURIS Ⅲ」には、カーボンプレートほど硬くないTPUの3D(立体的な)プレートが入っている。また、2023年より新たに加わった「SUMMIT VECTIV™ SKY」は、シリーズ最軽量モデル。ソールも薄めで、主につま先で着地することも想定しており、前足部には、反発性の高い素材が内部にインサートされている。そして、この「SUMMIT VECTIV™ SKY」に類似するタイプでありながらラグが深く、グリップ力が最も高い「VECTIV™ INFINITEⅡ」。後者2つのモデルは、ミッドソールの厚みも路面感覚を捉えられる設定なので厚底のシューズが苦手なランナーにお勧めだ。

「SUMMIT VECTIV™ PRO」で走ったインプレッション 「シンプルに走りやすいシューズだと思いました。衝撃吸収の高さが印象的でした」

「反発がちょうどいい。長く走れそうという感覚。特殊なグミみたいに反発性があってクッション性も高い」

「着地の際に屈曲しないのはカーボンの影響? 着地の安定性が高いので下りの疲労感が軽減されました」

「反発が高くて、前に進むイメージが持てました」

この日、メンバーの多くがトライしてくれたのは、3Dのカーボンプレートが入ったSUMMIT VECTIV™ PROというモデルだ。

“長く自然体で走れること” にVECTIV™はどう寄与しているのか 感想を聞きながら、彼らの言葉に意外な共通点を見つけることができた。”理想のシューズは?”という問いに対して、数名が同じような返答をくれたからだ。

「長い距離を走ることが多いので、トラブルのないことが重要なんです。過剰に反発するとか、動きに負荷がかかるようなものではなく、癖やギミックもないものがいい。むしろシンプルなものというか」

「僕らが走るのは山の中ですけど、まるでロードのように山を走れるような、長いこと自然体で走れるシューズが理想なんです」

「滑らないとかは最重要ポイントではないんです。もちろん滑ったら困るけど、それよりも一番大事なのは違和感のないシューズであること」

チームを主宰する鏑木毅にも同様の問いを投げかけてみると、理想的なシューズとは「過度にカラダにストレスを与えないもの」だと続ける。

「僕はVECTIV™のすべてのモデルに足入れしました。個人的には好んでいるのは、SUMMIT VECTIV™ PROです。一番の特徴は、衝撃吸収性の高さ。悪路など凸凹の道でも、垂直に跳ね上がってくるというか、進行方向にカラダを促してくれるような跳ね上がり方をしてくれるんです。それがゆりかごのような立体的なカーボンプレートのメリットなのだと思いますね。このプレートによって着地が軽減されているのだとすると、最大のメリットを感じますね。レース後半でも最小限のパワーで山を下れて、足持ちが良いシューズなのだと思います」

総じて、“自然体で走れるシューズ”こそが、理想的なシューズだという答えが際立った。こうした回答に対して、THE NORTH FACE JAPANのフットウェア担当であり、自身もトレイルランナーである吉村憲彦はこのように分析する。

「前後左右斜め、あらゆるブレを抑えるという視点で3Dのプレートは開発されました。このプレートはVECTIV™のどのモデルにも搭載されています。ですから、石や岩、木の根などの悪路でも負荷を軽減して走れるという感想は、まさにその機能性を体感いただけたのだと思いますね。それと、SUMMIT VECTIV™ PROなどはとくに、トレイルランニングに特化したシューズというよりは、ロードランニングのシューズの延長線上にあるようなデザインです。ソールのラグもトレイルシューズにしては浅めに設計されているので、ときにトレイルランナーによってはデメリットになるようなこのポイントも、チーム100マイルのメンバーの皆さんにとってはメリットに感じていただけたのだと思います。ロードの延長のように山を走れるものなので」

この日、現場には居合わせていなかったが、同じく『チーム100マイル』のメンバーであり、現在国内のトレイルランニングシーンを牽引するひとりである土井陵にも理想のシューズについて後日聞くことができた。

「究極は、気持ちよくストレスフリーな状態で、長く走れるシューズが理想なんです。クッション性と反発性とが両立し、元気な時も、疲弊している時も、同じように走れるもの。それは練習であっても、レースであっても大きく違うことはありません」

『チーム100マイル』の実態と、彼らが目指すもの 最後に改めて、鏑木毅が主宰するトレイルランニングコミュニティ『チーム100マイル』について触れてみたい。

メンバーの年齢の幅も広く、現在は老若男女20代から60代の100名弱が所属している。100kmを越える厳しいトレイルランニングレースを目指し、国内でも上位30%に入る実力者が大半を占めていることが証明するように、走力を裏付ける厳格な参加資格も設定されている。メンバーの実力に合わせて、アキレウスという指導者メンバーと、ラビットとトータスの2チームが編成され、主に月1回のフィジカルでのトレーニングと、オンラインのセミナーなどが組み合わさり、メンバー間での交流や情報交換も盛んに行われている。鏑木いわく、とにかくメンバーは「勉強熱心」なのだそうだ。

「家庭や仕事をやりくりしながら、どのように競技と向き合うかをみんな真剣に考えています。メンバー同士の情報交換もコアで、たとえば有益なアスリートの講演に参加したメンバーがコミュニティ内の非公開スレッドに長文でレポートを提出してくれたりと、トレーニング以外でも刺激を与え合っているように思います」

チームに所属しながら国内外のレースを転戦する土井陵は、『チーム100マイル』の魅力をこう話す。

「練習では切磋琢磨し、情報交換をし、アドバイスをし合います。その中で、負けられない存在となったり、憧れの存在になることで、自分の殻を破るきっかけを与えてくれるんです。所属することで大きな成長を感じることのできるチームだと思いますね。成績だけではなく、トレイルランニングに対する姿勢や努力している姿が、“人の心を動かすこともある"。そんな大切なことを僕はチームに教えてもらいました。こういったチームに所属することで、数倍効率的に成長することができると感じています」

トレーニングをする場である前に学びの場であること。鏑木毅が目指すコミュニティの一片を垣間見ることができる言葉だった。

Photograph: Shinpei Koseki
Text&Edit: Ryo Muramatsu