POWER of FABRICS TECHNOLOGY
CIRCULAR WOOL × POLYPROPYLENE
厳しい自然環境の中で挑戦する人々を支えるアウトドアブランドとして、成長し続けてきたTHE NORTH FACE。アウトドアフィールドを守るという観点でも、環境保全はTHE NORTH FACEの根幹であり、商品開発時にも欠かせないテーマだ。Circular Wool Collectionでは、回収された衣類を再生して作るサーキュラーウールを軸に開発したオリジナルファブリックによるプロダクトを展開。THE NORTH FACEデザイナー佐々木継太の言葉からCircular Wool Collectionのフィロソフィを紐解いていく。
循環するサイクルの中で生まれた
CIRCULAR WOOLとの歩み
天然の機能素材と呼ばれるウールは、秋や冬のTHE NORTH FACEに欠かせないファブリック。今回のコレクションをデザインするにあたって、更に見識を深めるためにウールの循環システムの視察に行きました。消費者から寄付された衣類や傷がついてしまった反物を細かく分解して新しい製品として生み出すポストコンシューマーのもとを訪ね、生産過程に必要な水やエネルギーを大幅に削減する素晴らしいサイクルを目の当たりにしました。なによりも驚いたのはこの循環システムが1950年代には確立していたことです。この歴史あるサーキュラーウールを使用して、独自の素材開発を決意しました。
異なる二つの素材の融合により
生まれる化学反応
今回作った素材は大きく分けて二種類。一つ目は、エクストラファインと呼ばれる19.5マイクロンの細かい糸を50%、サーキュラーウールを30%、ポリプロピレンを20%混合し製作したCircular Wool Melton。ウールは、繊維が呼吸をするように衣服内の湿気を吸収し、放出して体を快適に保ってくれます。一方、ポリプロピレンは耐熱性や染色性が低く加工には向いていないため、一般のアパレルではほとんど使用されていない素材です。しかし、合成繊維の中で最も比重が軽く疎水性があり、熱伝導率の低さからアウトドアウェアに適した繊維と言われています。ポリプロピレンを実用化するためにこれまで培ってきた技術を駆使して、高い吸放湿性を持つウールと掛け合わせました。この異なる素材の特性を生かした新たな素材は、THE NORTH FACEらしいファブリックに仕上がったと思います。
もう一つの素材であるCircular Wool Polyester Checkは、ポリエステル70%とサーキュラーウールを30%混合しています。サーキュラーウールは、回収から綿に戻す反毛工程までに細かくカットするので、繊維長が短くなってしまうという特徴があります。しかし今回開発した素材は、特殊な紡績方法により初めて梳毛番手に紡績することができました。
アーカイブを創造源に
現代技術によりアップデートしていく
実は80年代のTHE NORTH FACEでも、ウールとポリプロピレンを混合するアイデアは既に実用化されていました。一部のセーターなどに使用され、保温性と軽量を求めるクライマーに向けたプロダクトとして作っていた実績があります。そういった発想を継承し現代のライフスタイルに合わせてどうアップデートしていくかを常に考えながらデザインしました。軽さを追求しポリプロピレンの混合率を高くしすぎると、上品な風合いが崩れてしまいます。試行錯誤を重ね、一番バランスのいい混合率を導き出しました。
長年、地球の環境問題に対するメッセージを発信し続けてきたTHE NORTH FACEを1978年に初めて輸入したGoldwinには、常識を突き抜ける想像力と世界に貢献する革新的な開発を持って地球環境の改善を目指すビジョンがあります。これを基盤として一貫したものづくりを行い、デザイン面から世界を取り巻く環境問題の改善へとアプローチしています。
Circular Wool Collectionは生活の中で自らを取り巻く環境問題に向き合う人に向けてデザインしました。そのため、アウトドアフィールドにも街にも溶け込むようなムードをデザインに落とし込んでいます。生活拠点に関わらず様々な人々に手に取ってもらえるといいですね。