「FREE RUN」は、
THE NORTH FACEの
環境配慮への取り組みから
製品化されたシリーズです。
「FREE RUN」は、
THE NORTH FACEの
環境配慮への取り組みから
製品化されたシリーズです。
Interview
和光大プロサーファー、フィルマー
お父さんの影響で幼少期からサーフィンを始めて、中学卒業後に世界で活躍できるプロサーファーを目指し単身オーストラリアへ。目標だったプロサーファーとなり、さらにはコーチングを習得。和光さんの経歴を辿ると、子どもの頃からずっと海の傍で過ごしてきたという印象を受けましたが、今日走っていただいたのは山でした。トレイルランニングは、日常的にされているんでしょうか?
頻繁にトレイルランニングをしているというわけではないんですが、舗装された道を走るよりも、山の中を走るほうが好きですね。自分の中で海は癒される場所で、山は背筋がピンとするような、静かで“無”を感じる場所。だから、山を走ると“無”になれる感覚があります。山にももっと触れたいと思うようになったのもつい最近のことで、2019年に『Breath in the moment』というドキュメンタリーフィルムを制作したのがきっかけでした。本作では、同世代のサーファー4人でモロッコ、ヨーロッパ、アイスランドをまわって取材をしたのですが、いく先々で子どもから大人までさまざまな人たちと環境汚染について話していくうちに、「自然は海だけじゃない」と再認識したんです。こうして山に積もった雪が暖かくなると溶けて、果てしない時間をかけて地中にしみ込み、海へと流れていく。山も海もつながっているということが、本質的に“ちゃんと見える”ようになった。そうした気づきがあって、より山のことも知りたいと思うようになりました。
『Breath in the moment』のワンシーンで、子どもが「プラスチックゴミが海に流れて、それを魚が食べて、その魚を人間が食べるんだ」というような説明をしていたのも印象的でした。その反面、本作を制作しようと思い立ったきっかけは、子どもたちがゴミをポイ捨てしている光景だったそうですね。
そう、きっかけは2018年の世界一周の旅でした。世界一周と言っても行くことができたのは10カ国ほどだったのですが、大自然の素晴らしい景観とは裏腹に、町では子どもたちがゴミを普通にポイ捨てしていて。そのコントラストにショックを受けて、その旅の間中ずっと頭から離れなかった。自分に何かできることはあるだろうかと考えたら、映像に表現することだなと。帰国後、いろんな巡り合わせで資金が集まり、その年の11月には取材の旅に出かけました。でも実は、完成した作品は当初考えていた構想とは全然違うものに仕上がっているんです。
テーマが「ゴミ問題」ではなくなったということですか?
ドキュメンタリーフィルムを制作しようと自分を突き動かしたのはゴミ問題だったし、一つの視点であることには変わりはなかったんですが、いろんな人にその構想を話しているうちに、自分に対して「ゴミ問題って言うわりにゴミ問題について何も知らないんだな」という葛藤が生まれてきたんです。その葛藤を突き詰めていくと、自分が作品を通して一番シェアしたかった気持ちは、「今というこの瞬間をしっかり生きよう」ということや「何かひとつの物事に対して、何を感じるかは人それぞれで不正解はない」ということ。だから、完成した作品を観た人がどう感じるかは自由で、それをシェアしてもらうハブを作ることがこの作品の役割なんじゃないかと思うようになりました。
フィルム制作を経て得た気づきの中で、日常生活に影響を与えているものはありますか?
むしろ生活に対する価値観こそ、ガラッと変わりましたね。タイトルにもある「今を生きる」というフレーズが、生活においても一つの軸になりました。たとえば、ランニングも以前はトレーニングの一環として、1時間なら1時間とメニューを決めて「走らなければ」と思って走っていたんです。それが、今では5分でも10分でも、走りたい時に走りたいだけ走るようになって、自分の中でランニングが気持ちいい行為へと変わってきました。食事もそう。午後12時になったら「そろそろ昼食だな」って、時間に縛られていることに不自然さを覚えるようになって、自分のその日のコンディションによって1日1食の日もあれば2食の日もあるという食生活に変わりました。
より動物的な感じがしますね。
“自然に身を任せる”ことに、今すごくフォーカスしていると思います。海も好きだし、山に行くことも、街に行くこともある。全てにおいて壁をつくらずシームレスに捉えるようになってきているんです。結局、紛争ももとを辿ると小さな縄張り意識のような“壁”から生まれている。そう思うと、さまざまな土地を訪れて感じたことをシェアして、どんな人とでも繋がり意見を言い合えるハブづくりをこれからも続けていきたいと思っています。