STORY
新しい道具は
登山者に新しい感覚をもたらす
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双子池ヒュッテの軋む扉をそっと開けると、冷たくて真っ白な空気があたり一面に立ち込めていた。まだ夜も明けきらぬ中、昨日あたりをつけておいた私の特等席を目指す。新調したシューズのおかげか、力を使わずとも足がぐんぐん前に出る。先日山に誘った仲間から「早速、登山靴を買ったから」と報告が届いて、つい私も欲しくなってしまったのだ。つま先に体重が乗りやすいので、登りの安定感が抜群にいい。新しい道具は、登山者に新しい感覚をもたらしてくれる。朝露に濡れた木道を越え、針葉樹の森の背が低くなって、急に視界が開けて足元に大きな岩が転がり始めたら、目的地はもうすぐそこだ。