傷も愛着のうち
──まずは、自己紹介をお願いします。
レストランを3店舗経営しています。最初は2011年、30歳のときに渋谷に「Bistro Rojiura」をオープンし、2店目は2015年に「PATH」というビストロを代々木八幡に開きました。いちばん新しいのは2019年、ここ白金台で始めた「LIKE」という多国籍料理のお店です。
──原さんが料理の道に進もうと思ったきっかけはなんでしたか?
僕が大学生のときに、カフェカルチャーが東京でかなり流行っていたんですよね。そこで自分もよくカフェに行っていたんですけど、内装が素敵だったり、お洒落な店員さんやお客さんがいたりして、そうしたところに憧れを持つようになりました。僕は音楽やファッション、インテリアにも興味があったので、「もし自分でお店を出せたら、好きな内装で、好きな洋服を着て、好きな音楽を聴きながら仕事できる!」と思って。だから、入り口は料理が好きというよりかは、カフェという空間に対する憧れでした。
大学を卒業してからフレンチレストランで修行を始めて、そこからずっと飲食の世界で修行をしてきました。町場のフレンチレストランから星付きレストランまで、自分で店を開くまではいろんなところで経験を積んできましたね。──原さんが長く使われている大切な物について教えてください。
日々最もよく使っているのは包丁ですね。魚も野菜も、僕はだいたいこの2本の包丁しか使っていないんですけど、2つとも20代前半に買ったもの。最初に買ったのは小さい方で、当時、22歳で修行が始まったばかりの頃に「簡単な包丁を持ってきて」とお店から言われて、柄の部分がプラスチックのおもちゃみたいな包丁を持っていったらものすごく怒られて(笑)。それでちゃんとした包丁を買わなきゃと思ってシェフに相談をしたら、そのシェフがお付き合いのある包丁屋さんを紹介してくれて、そこで買ったものです。それからはもうずっと、どんな職場に行くときもいつも包丁ケースの中に入っています。
もう1本の長い方は、ミソノというよく知られたブランドのもので、魚をさばく用に買っておけと言われたものです。これは修行を始めて1〜2年後に買った包丁で、自分のなかでは、この2本目の包丁を買ったときはステップアップできた感覚がありましたね。──買おうと思えば、きっともっと高い包丁やブランドものの包丁も買えると思うのですが、
15年以上経ってもいまだにこの2本を使っているのはどうしてですか?僕は物に愛着が湧いてしまうタイプだから、他のものが欲しいってあまり思わないんですよね。手にも馴染んでいるし、まだまだ使えるものだし。ほんと、愛着があるというのがいちばんの理由ですね。とはいえ毎日丁寧にケアをしているかといわれたらそうでもなくて、ちょっと切れ味が悪くなってきたと思ったら研ぐくらい。けっこうラフに使っているんですけど、そうしてできた傷も愛着のうち、と思って使い続けています。
──お話を聞いていて、原さんのこの先のキャリアのなかでもこの2本の包丁は使われ続けていくんだろうなと思いました。
そうですね、ずっと使うと思います。包丁は、ある程度の基準を満たしていたら決して値段がすべてではないと僕は思っているんです。例えばペンでも、値段は高くなくても自分にとって書きやすいものってあるじゃないですか。僕にとっては、この2本の包丁もそんな存在ですね。
──最後に、今回The North Faceの「デニムコーチジャケット」を着用した感想をお聞かせください。
いちばん最初に思ったのは、軽くて、着るのにストレスがなくて、「これ、デニムなんだ!」ということ。にもかかわらず、きちんとデニムっぽい質感があるのが印象的でした。
僕は普段から自転車に乗るので、バッグに一着忍ばせておくと、ちょっとした雨風なら防げるのが頼もしいところ。朝や夜の肌寒いときに羽織るのにもちょうどいいですよね。シンプルだし、どこでも着られるし、しかもちょっとした高級感もある。僕のなかでは、常に持っておくと安心の1着というイメージです。