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THE SHERPA PROJECT NAOKI ISHIKAWA
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写真家・石川直樹が立ち上げた「The Sherpa Project」 苦境に立たされたシェルパたちを支援するために
Introduction
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シェルパとはネパール・エベレスト山麓に住む少数山岳民族の呼称。もともと登山をする習慣はなく放牧などの農業で生活していたが、20世紀に入り外国人によるヒマラヤ登山がさかんになると、高所に順応した身体から荷物運びとして活躍し、登山技術を身につけるとガイドとしても雇われるようになった。近年では、シェルパによるルート工作が行われないと登山が成立しないほど重要な存在ではあるが、けっして地位は高いとは言えず、危険な任務にもかかわらず事故時の補償も十分でないとの声もある。

写真集「SHERPA」の発行とウエアの寄贈

THE NORTH FACEは、写真家・石川直樹氏による「The Sherpa Project」に賛同し、支援を行います。

新型コロナウイルスが世界各地で猛威をふるう今年3月、ネパール政府は感染拡大予防策としてヒマラヤ山脈への入山を禁止し、今春以降の登山は全てキャンセルされました。それにより、世界中から集まる登山家やトレッカーのサポートを生業にするシェルパたちは職を失い、苦境に立たされています。

依然として国内の新型コロナウイルス感染者数が増加傾向にあるネパールでは、外国人観光客の受け入れが再開されたとしても、ヒマラヤに登山家たちが戻ってくるには、まだまだ時間がかかると考えられています。

近年の大衆化するヒマラヤ登山にあって、シェルパの存在なしに安全な遠征は成り立ちません。しかし、未だにシェルパの地位は低く、大きな後ろ盾を持たない彼らにとって、今回のコロナ禍によって生活が立ち行かなくなった者も多くいます。これまで足繁くヒマラヤに通いシェルパたちと親交を深めてきた石川氏は「彼らの文化を紹介しつつ、それ自体が彼らのサポートに繋がれば」という思いから、写真集「SHERPA」を制作しました。

THE NORTH FACEでは、写真集の制作を支援し売り上げの一部を寄付するとともに、シェルパたちへクライミングウエアを提供させていただきます。THE NORTH FACEでは、ヒマラヤ登山の根底を支えるシェルパをサポートすることが、ひいては冒険を愛する私たちの未来を作ることだと考えます。


シェルパとはネパール・エベレスト山麓に住む少数山岳民族の呼称。もともと登山をする習慣はなく放牧などの農業で生活していたが、20世紀に入り外国人によるヒマラヤ登山がさかんになると、高所に順応した身体から荷物運びとして活躍し、登山技術を身につけるとガイドとしても雇われるようになった。近年では、シェルパによるルート工作が行われないと登山が成立しないほど重要な存在ではあるが、けっして地位は高いとは言えず、危険な任務にもかかわらず事故時の補償も十分でないとの声もある。

MESSAGE from NAOKI ISHIKAWA
NAOKI ISHIKAWA

石川直樹(いしかわ・なおき)
1977年、東京生まれ。写真家。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。 2000年、北極から南極まで人力で踏破する「Pole to Poleプロジェクト」に参加。 2001年、世界七大陸最高峰の登頂を当時最年少で達成。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。 『NEW DIMENSION』(2007 赤々舎)、『POLAR』(2007 リトルモア)により、日本写真協会賞新人賞(2008)、講談社出版文化賞(2008)。 『CORONA』(2010 青土社)により土門拳賞(2011)、『EVEREST』(2019 CCCメディアハウス)『まれびと』(2019 小学館)により、日本写真協会賞作家賞(2020)を受賞した。 著書に、開高健ノンフィクション賞(2008)を受賞した『最後の冒険家』(2008 集英社)ほか多数。
http://www.straightree.com/

2020年の春から夏にかけて、ぼくはネパールやパキスタンでの登山遠征を計画していました。しかし、コロナ禍によって結果的に全てが中止となり、都度アップデートされる現地の情報を共有すべく、シェルパたちと必然的に連絡を取り合うことになりました。

日本と同様に、誰それは失業して故郷に帰ったとか、寺での集会や学校さえも閉められて不安だ、などという生活の変化について度々聞かされるなかで、なじみのシェルパの顔が次々と思い浮かび、自分に何かできないだろうか、と考えはじめました。

今回制作した写真集は、ぼくが見てきたシェルパたちの生の断片を集めたものです。売り上げの半分をシェルパに寄付し、コロナ禍が一段落するその日まで彼らの日常がどうにか継続されるための一助になってほしい、と願っています。

世界各国を20年以上旅してきましたが、自分が最も長く、かつ頻繁に通っているのが、シェルパの故郷であるヒマラヤ界隈です。本書によって、彼らの生き方について少しでも関心を持つきっかけになったら嬉しいですし、願わくばそれがシェルパを支えることにも自然と繋がればもっといいな、と考えています。

どうかよろしくお願いいたします。

石川直樹

石川直樹(いしかわ・なおき)
1977年、東京生まれ。写真家。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。2000年、北極から南極まで人力で踏破する「Pole to Pole プロジェクト」に参加。2001年、世界七大陸最高峰の登頂を当時最年少で達成。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。『NEW DIMENSION』(2007 赤々舎)、『POLAR』(2007 リトルモア)により、日本写真協会賞新人賞(2008)、講談社出版文化賞(2008)。『CORONA』(2010 青土社)により土門拳賞(2011) 、『EVEREST』(2019 CCCメディアハウス)『まれびと』(2019 小学館)により、日本写真協会賞作家賞(2020)を受賞した。著書に、開高健ノンフィクション賞(2008)を受賞した『最後の冒険家』(2008 集英社) ほか多数。 http://www.straightree.com/

Details of the Project
1 写真集「SHERPA」の発行
1

シェルパの文化に焦点をあてた石川直樹氏の写真とテキストで構成する写真集「SHERPA」を300部限定で販売します。 また、写真集に石川氏のオリジナルプリント(2Lサイズ)を1枚添えたスペシャルエディションも30部限定で販売します。 全ての商品に石川氏の直筆サインが入り、チャリティとしてご購入金額の50%がシェルパへ寄付されます。

2 THE NORTH FACEからクライミングウエアの寄贈
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ヒマラヤ登山を支えるシェルパたちへ、THE NORTH FACEから登山時に使用するウエアを寄付します。 常に厳しい環境にさらされる彼らが、快適で安全に作業を行えるアイテムを選び、約50着をネパールのシェルパ・コミュニティに寄贈します。

全ての寄付は、石川氏がネパールを訪れシェルパたちに直接手渡す予定です。その様子は、追ってTHE NORTH FACEのウェブサイトにてご報告します。

全ての寄付は、石川氏がネパールを訪れシェルパたちに直接手渡す予定です。その様子は、追ってTHE NORTH FACEのウェブサイトにてご報告します。

Details of the Project
book image
1

96ページ/A5 変型サイズ/
ボードブック/別冊テキスト付き
オリジナルインクジェットプリント 2Lサイズ
価格:20,000 円(税・送料込)
販売部数:30 部限定
*著者サイン・エディションナンバー入り

2

96ページ/A5 変型サイズ/
ボードブック/別冊テキスト付き
価格:5,000 円(税・送料込)
販売部数:300 部限定
*著者サイン・エディションナンバー入り

10月16日21時より販売を開始します。
STRAIGHTREE BOOKSの販売サイトへ移動します。
ご注文いただいた商品は、準備が整い次第発送します。

VOICES of NEPAL

ネパール政府によるヒマラヤの入山禁止措置を受け、石川氏はさっそく親交の深いシェルパたちに連絡を取りました。それに対して、石川氏も参加する国際的な公募隊・イマジンネパールを率いるミンマ・ギャルツェと、石川氏がもっとも敬愛するシェルパのプルバ・タシのふたりから返事が届きました。

NAOKI ISHIKAWA → MINGMA, PHURBA

3月16日

コロナウイルスの問題で、世界中どこもかしこも大変なことになっていますね。ネパールでも登山許可の発行が停止され、外国人の入国も制限されて、シェルパのコミュニティにも深刻な影響をおよぼしていることと思います。

エベレストをはじめとする8000m峰の遠征は大きなお金が動きますし、春の登山シーズンは、1年で一番のかきいれどきですから、それらがすべてキャンセルとなると、生活が立ち行かなくなるシェルパも出てくるのではないですか?

そちらの状況を教えてください。そして、いまどのように過ごしていますか? ホテルやガイド業に従事している人たちにどのような影響があるか具体的に教えてもらえませんか?

直樹

VOICES of NEPAL
MINGMA → NAOKI ISHIKAWA
MINGMA → NAOKI ISHIKAWA

3月19日

直樹さんへ

今のところ、ネパールではコロナウイルスの感染者があまり多くないので、私たちはまだ幸運な方です。それでも、みんなこのウイルスに怯えていて、多くの人が都市部を離れて地元の村に戻って来ています。

コロナウイルスに対する恐怖から、人々が食べ物や燃料を家に貯め込みはじめているので、市場ではすでに物が不足しています。

ネパール政府は、コロナウイルスから国民を守るために、3月20日から4月15日まで、ネパール人を含む全ての旅行者が外国から入国できないようにしています。また、4月30日までは入国ビザの発給も禁止になっています。

ネパールでは、今春の遠征が全て行われなくなりました。つまり、シェルパやキッチンスタッフ、ガイドには仕事がありません。シェルパだけではなく、ポーターたちも同様に仕事がありません。ホテルは空っぽです。今年、ネパールでは“Visit Nepal Year 2020”と銘打って観光誘致のキャンペーンを行う予定で、観光業界の人たちは多額の投資を行ってきました。けれど、今は希望もなくなり、収入のあてもなく苦しんでいます。観光ビジネスの多くは廃業するほかなく、これからネパールでは深刻な失業問題に向き合うことになると考えられています。

私たちのガイド、キッチンスタッフ、シェルパたちは、エージェンシーに援助を要請しています。我々はすでに4つの8000m峰への遠征のためにかなりの量の装備を買い込んでいましたから。私たちのクライアントは、当然返金を求めています。もしくは、来シーズンに他の山へ変更することを望んでいます。誰も損なんてしたくないですからね。このような状況に対して、私たちには対処の方法がありません。今春に出た損失を補填できるようにと、我々のスタッフが今いくつか夏の登山プログラムを組んでいるところです。それでも、コロナウイルスがコントロールされない限り、夏のプログラムもどうなるかわかりません。全く出口が見えませんが、私たちは希望を捨てていません。どうにかしてスタッフたちが生きていける手立てを講じるつもりです。

あと、私はパキスタン政府に今夏の遠征許可申請を行いました。まずは、しっかり準備をしておきましょう。もちろん、コロナウイルスが収まらなければパキスタンへの遠征もキャンセルになるかもしれません。それは4月の終わりか5月のはじめにわかります。でも、今はどこもかしこも暖かくなってきて、ウイルスは温暖な環境では生きられないというので、全てがうまくいくこと祈っています。

他になにか必要なことがあれば教えてください。

ミンマ

VOICES of NEPAL
PHURBA → NAOKI ISHIKAWA
PHURBA → NAOKI ISHIKAWA

3月21日
[1通目のメール]

ナマステ

直樹さん、お元気ですか?

私たち家族はみんな元気です。家族全員でクムジュン村の家にいます。コロナウイルスの影響で、学校、大学、ゴンパ(寺院)は1ヶ月間閉鎖されています。

お体にお気をつけください。そして、世界中でこのウイルスが今すぐにでも落ち着くことを願っています。現在、クムジュン村にいる私たちは、ウイルスに感染することなく無事です。今は、農作業がとても忙しい季節です。

お元気で

プルバ

-

3月23日
[2通目のメール]

実際、COVID-19の原因は私にはわかりません。

世界の至るところで、コロナウイルスは差し迫った問題になっています。直樹さんも知っての通り、ヒマラヤでは頭痛や咳などの症状に悩まされることはよくあります。

しかし、新型コロナウイルスはそれとは違って生死に関わる病気です。ネパールでは治療できないので、人々は動揺しています。そして全ての遠征はキャンセルになり、シェルパにとっては仕事を見つけてお金を稼ぐことが難しい状況です。

今、クンブーではみんな農作業で忙しくしています。ウイルスによる直接の影響はないものの、シェルパやクンブーの人々にとってはかなり大きな問題になっています。日用品の価格は上昇している一方で、稼ぎ口は減っているというもうひとつの困難にも立ち向かわないといけません。

-

3月25日
[3通目のメール]

クンブー地方では、ルクラの上に9つの寺院があります。毎年、春と秋と冬に世界の平和と安全を祈願して108巻のカンギュル(仏説)を読みます。しかし今年はそれを行えるかどうかわかりません。それが今、私は問題だと思っています。

政府は全ての学校や大学を閉鎖すると発表しました。それによって若い世代の教育問題だけでなく、親にも影響が出ています。私は、子どもたちが十分な教育を受ける機会がなくなるのではないかと心配しています。

VOICES of NEPAL
NAOKI ISHIKAWA → MINGMA, PHURBA

7月26日

ネパールは秋から各国の飛行機の発着が再開されるようですね。

日本では第2波のようなものがきていて、ロックダウンはしていませんが、遠出することに対しては、みんな消極的です。だから、夏休み期間に入りましたが、旅行している人は少ないです。

そちらの状況はどうですか? カトマンズは人が戻ってきましたか? 観光業はどんな感じになっていますか?

早く終息することを願うばかりですね。

直樹

MINGMA → NAOKI ISHIKAWA

7月31日

直樹さん、ナマステ

私は今、カトマンズにいます。8月17日から各国飛行機の離発着が許可されて観光業も再開します。

しかし、ネパールでの新型コロナウイルスの感染者数は増えています。ご存知のように、観光業はネパールにとって最大の経済的資源なので、不本意であっても再開をせざるをえない状況です。

私たちはダウラギリとマナスルへの遠征を編成しようと考えていますが、観光局からは何ら指針が示されていません。なので、まだどうなるのかわかりません。今はその指針を待っている状態です。

私の会社のクライミングシェルパや調理シェルパは、2019年の11月から失業状態で収入がありません。彼らの仕事を確保することも私たちの責任だと思っています。

新型コロナを避けるため、私たちは全ての遠征にきちんと安全対策を施して編成します。

情報が集まれば、また連絡しますね。

お体に気をつけて。

ミンマ

VOICES of NEPAL
NAOKI ISHIKAWA → MINGMA, PHURBA

7月31日

ミンマへ

返信をありがとう。
ネパールに行く側も迎える側もどちらもおそるおそる、という感じですね。

シェルパ達は仕事ができない今まで、みんな何をしているのですか? 実家に帰って畑を耕している? それとも別の仕事? ミンマは日々何をしているのですか?

直樹

MINGMA → NAOKI ISHIKAWA

8月6日

直樹さんへ

昨日、カトマンズで我々のスタッフとミーティングをしました。現在のネパール国内の新型コロナウイルスの感染者数を考慮して、今秋の遠征は全て中止するつもりです。ほとんどのスタッフは、地元の村に帰って畑で農作業をしています。ここカトマンズに残っているスタッフは、ほんのわずかです。

今日までに、ネパールでは412,953件のPCR検査が実施されています。8月4日には1日で7,687件、8月5日には同様に6,459件のPCR検査が実施され、4日は259件、5日は381件、今日は360件の陽性者が出ました。状況はどんどん悪化しているので、またロックダウンされることになるでしょう。

2021年の春までは、何も計画を立てることができないと思います。私たちは、2021年の春にアンナプルナ、カンチェンジュンガ、エベレスト、ローツェへの遠征を計画しています。ぜひ直樹さんも参加してください。みんなで待っていますよ。

また会えるのを楽しみにしています。

ミンマ