つまり音景は、音が描き出すランドスケープを意味する。
空の色、街の明かり、行き交う人々…都市の景色は、
刻一刻と変化して、その瞬間にしか存在しない。一方、音楽における
インプロヴィゼーション(即興演奏)は、そのときその瞬間のグルーヴが生まれる。
このプロジェクトでは、各々のアーティストが、
自分の住む都市の音をフィールドレコーディングし、その音に対して
即興で音楽を演奏し、音景を作っていく。
服をまとい、景色の音を奏でるアーティストたちとともに、
THE NORTH FACEが描く「SOUNDSCAPE」を全4回に渡ってお届けする。
12月7日(金)には、東京・青山にて本企画の完全招待制のスペシャルイベントを開催!
応募に関する詳細はこちらから。
第二回目のアーティストは、札幌を拠点に音楽活動を続け、その唯一無二ともいえる音の世界観から国内外で支持を得るDJ KUNIYUKI TAKAHASHI。映像作品への楽曲提供やアニバサーリーイベントへの出演など、THE NORTH FACEとの関わりも深い。
Vol.1で登場した青山翔太郎さんも全幅の信頼を置く札幌クラブシーンの重鎮は、青山翔太郎さんから受けとった“ビート”というバトンにどんな音を重ね、「SOUNDSCAPE」を表現していくのか。まずは自身の音楽活動と、音楽観について語ってもらった。
「クラブでプレイするときは『SOUND SCAPE』同様、インプロヴィゼーション(即興演奏)を大事にしています。自分が制作した音源を元に、その場で感じたものを取り込んでいく。たとえば、クラブの外で拾ってきたゴミで音を鳴らしてかぶせていったり、お客さんの叫び声とか。そうすることで、お客さんも不思議と音楽に入りやすくなるんです。音を繋げていくことももちろん大事なんですけど、それだけじゃつまらない。その場所、そのときにしか奏でることのできない音をつくっていきたいんですよね。
そういう試行錯誤を繰り返してると、思いがけず最高の音が鳴る瞬間があって、それがすごく楽いんですが、なにより、生の音を介すことで、お客さんとその場の空気を共有しているんだってことを一層感じられる。だから、ひとつだって同じパーティーはないし、いつだって挑戦しようと思うんです」
札幌という、いわゆる地方都市を拠点にしながら、KUNIYUKI TAKAHASHIというその名前は日本にとどまらず世界各国に響き渡る。その背景には、世界に冠たる札幌のクラブ、プレシャスホールがあった。
「兄貴やバンドブームの影響もそうなんですけど、やっぱりプレシャスホールがあったことが、自分の音楽史においてなにより大きい。札幌で音楽をやっていただけの自分がプレシャスホールでプレイしたことをきっかけに、どんどん音楽の世界が開けていった。自分の作品が世に出たのも、プレシャスホールのおかげだなと思います。
幸いなことに、いまは海外に呼ばれることも多いので、世界各国いろんなクラブを見てきました。だけど、プレシャスホールは音楽に対する考え方も、お客さんに対する思いも、未来へのビジョンも、ほかのクラブとはまったく違う。ニューヨークのクラブシーンを変えたと言われるデビッド・マンギューソさんが、東京ではなく札幌に、しかも1年に4回来ていたっていう意味も、そういうことなんじゃないかなと思います」
「いまもプレシャスホールから学ぶことが多い」。世界から称賛を受けながら、謙虚な姿勢で音楽制作に打ち込むKUNIYUKIさん。だからこそ、その音楽は進化を続け、世界の耳の肥えた人々を虜にしていくのかもしれない。
「いまは音楽を通じて、自分の知らなかった場所も、行きたかった場所へも招待してもらえる。それもこれも、すべて音楽からのギフトかなと思っています。
よく『拠点を東京に移さないの?』って言われるんです。たしかに、あらゆる面で便利かもしれない。だけど、たとえば海外へ行くと、大きなインスピレーションを受けるんです。でも、それを形にするには、ニュートラルになれる場所が必要で、それが札幌。だから、これからも、札幌を出るつもりはないですね」
札幌での音楽制作は、自宅とは別の、実家の一室で行われている。今も昔も変わらない小さなスタジオが、KUNIYUKIさんをフラットな状態に戻し、インスピレーションを具現化してくれ、音楽制作へと駆り立てる。
「いまは住んでる場所が変わってしまって来れてないですけど、昔はよく円山公園でフィールドレコーディングをしていました。札幌市内からも近いし、自然も多い。
でも、フィールドレコーディングは同じ場所であっても、季節によって録れる音が変わってくる。海なんかはとくにそうですね。ハイシーズンだと人も多いですし。だから、何気なく録りに行くことはなくて『この音を録ろう』と決めて行くことが多いです」
KUNIYUKIさんの「SOUNDSCAPE」の担当はアンビエントだ。青山さんが奏でたビートに、KUNIYUKIさんの言葉を借りれば「色をつけて、雰囲気を出して行く」。ここから音景が、一気に輪郭を露わにする。
「やっぱり即興は、自分の想定してなかった方向に展開していくことがあるんです。たとえば、ビートを16ステップから32ステップにしていったりすると、なにか考えてるわけじゃなく『他人がへんなことをしているな~』っていう感覚になってくる。今回もまったく意図してなかったんですけど、ピアノのリフがおもしろいところがありました。後半のほう、ピアノの何拍分かをループさせてるところ。あれは偶然だけど、けっこうかっこいいグルーヴになっていると思いますね」
都市、自然、テクノロジー、感情。こういったキーワードが、青山さんが見る景色、着る服、そして今回作ってくれた音楽の中で、ぐるぐる円環するように登場している。今回の「SOUNDSCAPE」第一回目で、青山さんが作り上げた音楽とは一体どんなものなのか。
「今回は、電子音のシーケンスの上に、パーカッションなどの生音を重ねています。都会的なイメージを電子音の機械的なグリッドで表現して、その中にオーガニックのパワーとして、ベースや、民族系のパーカッションがある。自然と都会をつなぐ、そんなことを考えながら、作りました」
KUNIYUKI TAKAHASHI
札幌を拠点に活躍するアーティスト。唯一無二の音楽性は、国内に留まらず海外からも高く評価され、一般のリスナーのほかミュージシャンにもファンが多い。THE NORTH FACE主催のイベントでも、ライブを行っているなど関係は深い。
完全招待制
スペシャルイベント開催!
開催日時 12月7日(金)OPEN18:00〜CLOSE 21:30 予定
開催場所 WALL&WALL OMOTESANDO (東京都港区南青山3-18-19フェスタ表参道ビルB1)
入場料金 無料
参加人数 200名(抽選にて決定)
出演者 青山翔太郎、KUNIYUKI TAKAHASHI、河内ユイコ (SOUNDSCAPE出演順・敬称略)