WINTER CAMP IN YOSEMITE | THE NORTH FACE

WINTER CAMP IN YOSEMITE

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Homestead Roomy 2 / NV21605 ¥37,000- (+tax)Buy

WINTER CAMP IN YOSEMITE

Stuffed Shirt / NY81832 ¥25,000- (+tax)Buy

Firefly Overall / NB31846 ¥22,000- (+tax)Buy

L/S Waffle Highneck / NT81834 ¥7,800- (+tax)Buy

TNF Logo Flannel Cap / NN41616 ¥5,000- (+tax)Buy

WINTER CAMP IN YOSEMITE

Left

Pillowcho / NDW91849 ¥24,000- (+tax)Buy

ARMADILLA FullZip Hoodie / NAW61831 ¥20,000- (+tax)Buy

ARMADILLA Pant / NAW61833 ¥13,000- (+tax)Buy

Vanadis Beanie / NNW41720 ¥4,400- (+tax)Buy

Vanadis Glove / NNW61720 ¥4,400- (+tax)Buy

Right

Stuffed Shirt / NY81832 ¥25,000- (+tax)Buy

Firefly Overall / NB31846 ¥22,000- (+tax)Buy

L/S Waffle Highneck / NT81834 ¥7,800- (+tax)Buy

TNF Logo Flannel Cap / NN41616 ¥5,000- (+tax)Buy

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Heather Sweat Hoodie / NTW61835 ¥12,000- (+tax)Buy

Active Denim Pant / NBW81833 ¥13,000- (+tax)Buy

Vanadis Beanie / NNW41720 ¥4,400- (+tax)Buy

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Tent

Homested Roomy 2 / NV21605 ¥37,000- (+tax)Buy

Left

Firefly Jacket / NP21831 ¥20,000- (+tax)Buy

Firefly Overall / NB31846 ¥22,000- (+tax)Buy

L/S Waffle Highneck / NT81834 ¥7,800- (+tax)Buy

Radial Wool Beanie / NN41719 ¥5,200- (+tax)Buy

Right

Trango Monk Parka / NYW81831 ¥27,000- (+tax)Buy

ARMADILLA FullZip Hoodie / NAW61831 ¥20,000- (+tax)Buy

Firefly Apron / NT11855 ¥12,000- (+tax)Buy

ARMADILLA Pant / NAW61833 ¥13,000- (+tax)Buy

Vanadis Beanie / NNW41720 ¥4,400- (+tax)Buy

W Nuptse Bootie WP VI / NFW51873 ¥16,000- (+tax)Buy

WINTER CAMP IN YOSEMITE

Left

Mountain Down Coat / ND91835 ¥72,000- (+tax)Buy

Stretch Corduroy Pant / NB81834 ¥13,000 (+tax)Buy

TNF Logo Flannel Cap / NN41616 ¥5,000- (+tax)Buy

Ultra Fastpack III GORE-TEX / NF01821 ¥19.000 (+tax)Buy

Right

Mountain Down Coat / NDW91835 ¥72,000- (+tax)Buy

Stretch Corduroy Skirt / NBW81835 ¥13,000 (+tax)Buy

Mica Beret / NNW41820 ¥5,800- (+tax)Buy

Nuptse Bootie WP VI / NF51873 ¥16,000- (+tax)Buy

GUIDE MAP

THE GUIDE TO MARIPOSA

INTERVIEW

COLUMN

COLUMN

COLUMN

MY FAVORITE YOSEMITE

LIVIN’ IN THE MOUNTAINS

MOUNTAIN DOWN JACKET / ND91837 ¥62,000- (+tax)Buy

LIVIN’ IN THE MOUNTAINS

Ascent Coat / ND91831 ¥38,000- (+tax)Buy

LIVIN’ IN THE MOUNTAINS

Firefly Jacket / NP21831 ¥20,000- (+tax)Buy

Firefly Overall / NB31846 ¥22,000- (+tax)Buy

Stuffed Shirt / NY81832 ¥25,000- (+tax)Buy

LIVIN’ IN THE MOUNTAINS

1 . L/S GD Heavy cotton tee / NTW81831 ¥7,200- (+tax)Buy

2 . L/S GD Heavy cotton tee / NT81831 ¥7,200- (+tax) Buy

3 . tnf logo flannel cap / NN41616 ¥5,000- (+tax)Buy

4 . Active Denim Pant / NBW81833 ¥13,000- (+tax)Buy

LIVIN’ IN THE MOUNTAINS

NOVELTY ARMADILLA FullZip Hoodie / NA61841 ¥22,000- (+tax)Buy

NOVELTY ARMADILLA Pant / NA61843 ¥15,000- (+tax)Buy

　昨年６月、世界のクライミング界に衝撃が走った。アレックス・オノルドがフリークライミングの象徴とも言えるEl Capitanを世界で初めてフリーソロしたのだ。登ったルートは「Freerider」（5.12d、33ピッチ、915m）。熟練したクライマーでさえ非常に困難なこのビッグウォールを、ロープによる確保なしで登りきったのである。「落ちれば死ぬ」という、もっともシンプルかつもっとも危険なクライミング、フリーソロ。El Capitanのフリーソロは「フリーソロにおける月面着陸」とも評される、前人未到の偉業である。

クライミングの原点

「ヨセミテの近くに住んでいたから、小さな頃から家族で訪れてはいたんだけど、クライミングのために初めてヨセミテに行ったのは19歳のとき。当時は大学に1年間通っていて、あまりハードにはクライミングをしていなかった。
ヨセミテでクライミングをして最初に思ったのは“Too much”ってこと。岩は大きいし、ルートは難しいし、クラックなんてどうやって登るのかわからなかった。当時の自分にはいっぱいいっぱいって感じだったんだ。それで、もっと本格的にクライミングをしようと次の年にまた行ったんだよ。
　それから毎年ヨセミテに通うようになった。最初は1日だけだったけれど、キャンプ4に１週間滞在して登るようになり、気がつくと毎週末行くようになっていた。そうして1年が過ぎる頃には快適に楽しく登れるようになって、美しいとも感じられるようになった。それからは、クライミングのために2ヶ月も滞在するようになったね。
　ぼくにとってヨセミテは、クライミングに対する刺激やパワーをもらえる場所。世界中で一番インスパイアされるところなんだ。それに、ずっとヨセミテにいるから家にいるかのような、居心地の良さを感じさせてくれる。いつ太陽が昇ってくるのかもわかるし、ほとんどの道や岩も知っているしね。ヨセミテのクライミングにはたくさん歴史があって、いつも色々学んでいる。僕にとってヨセミテでクライミングすることは“heart of climbing”なんだ」

冬のクライミング事情

「ヨセミテでのクライミングは春と秋が一般的だけれど、天気次第では冬でも登れる。ドーン・ウォール（※）が登られたのも1月だからね。でも、やっぱり天気次第。冬は天候が安定していないし、雪があったらやっぱり登れないからね。
　最近は11月にクライミングする人も多くなった。11月は“New October”って言われているんだ。10年前までは10月は寒かったんだけど、気候が変化して暖かくなった。今は11月が昔の10月と同じくらいの気温だから、「新しい10月」って言われているんだ。
　冬は、バレー内は寒いんだけど100mも登ったら暖かくなるんだ。冬は太陽が低くて谷の下まで日が当たらないんだけれど、壁の上の方には当たる。だから谷から登れば登るほど暖かくなるんだよ」

冬のヨセミテの楽しみ方

　冬のヨセミテで一番のおすすめはハイキング。夏は人が多過ぎてうんざりするけれど冬はあまり人がいない。大自然の中に一人でいるような空間を感じながら、静かなハイキングがたのしめるんだ。
　ぼくが一番好きなのは、Vernal FallsやNevada Fallsを眺めながら歩くJohn Muir Trail。崖に沿って歩くんだけど、冬は周りの岩壁が氷で覆われて凍った滝も見られる。氷に囲まれた魔法のような世界で本当に美しいんだ。天気次第だけど冬でもトレイルはきちんと歩けるよ。滝沿いに歩くMist Trailもおすすめだよ。
　それから、バレー内では道路の上を松の葉っぱが埋め尽くすんだ。とてもきれいだしトレイルを歩いているような気分になれる。初めてヨセミテに行く人はジャイアント・セコイアの巨木がたくさんあるMariposa Groveに行ってみると良いね。
冬にヨセミテへ来る場合は天気に気をつけてほしい。雪が降ってるかもしれないし、雨がふってるかもしれない。天気によっては危険だからね」

※2015年にトミー・コールドウェルとケビン・ジョージソンによって初登された、El Capitanの世界最難ビッグウォール・フリールート。5.14d、32ピッチ。

ヨセミテが故郷

「私たちは、ヨガやハイキング、バックパッキング、キャンピングなど、あらゆるアウトドアプログラムを通して、ヨセミテの中でも格別美しい特別な場所をガイディングしています。アウトドアアクティビティは人と自然を深く繋いでくれます。例えばアウトドアでのヨガは、自然の中で自分一人の時間を過ごすことができますし、あるいは逆に他の参加者と空間を共有することができます。食を共にし、各人の物語を共有する事で、自然と人、人と人、自分自身とを深く繋いでくれるのです。
　Balance Rock Foundation（以下、BR）はヨセミテで始まりました。他に類を見ない巨大な花崗岩の岩壁やとめどなく流れる川や滝など、この場所が持つ迫力ある自然の美しさに魅了され、とてもパワフルな場所だと感じたのです。団体の創立者や当時のインストラクターはヨセミテの近くに住んでいました。当時も今も、ヨセミテは我々の故郷なのです。
　BRが作られたきっかけは、1999年に起きた事件でした。私の友人のアウトドアインストラクターが殺害されるという悲劇が起きたのです。その悲劇がもたらした痛みから個人やコミュニティーが少しでも癒され、立ち直るためにアウトドアプログラムを始めたのです。事件から何年も過ぎて団体も拡大しましたが、私たちの本質は今も変わりません」

BRのプログラム

「アウトドアプログラムは主に夏に行なっています。夏は天候が予想しやすいし、短期間のバックパッキングやハイキングはそれほど過酷ではないので、いろんな方に参加していただけます。アウトドアヨガは誰でも参加できますしね。秋から春にかけては、ヨガインストラクターの育成コースを行なっています。ほとんどは屋内ですが、ときにはバックパッキングで山の中に入りアウトドアでのトレーニングも行なってます。年間200人以上の方がプログラムに参加してくれています。20-30％はローカル、40％強はベイエリアやLAなど他のカリフォルニア各地から、残りは他の州や海外から。8割くらいが女性です。
　ヨセミテの麓のローカルエージェンシーと共同で若者向けのプログラムも行なってます。ローカルの若者でもヨセミテに来たことがない人もいます。このプログラムを通して、彼らに大自然と繋がるきっかけを提供しているのです。4月と5月には日帰りハイキング、6月には４日間のバックパッキングを行っています」

BALANCED ROCK

“ikigai”を発見するために

「社会とうまく繋がりが持てなかったり、何のために生きてるのかなどを自問自答して行き詰まってしまったり…そんな人にとくに参加して欲しいですね。落ち込んだり失望してしまったときにヨセミテを訪れ、私たちのプログラムに参加する事で新しいスタートをきることができればと思います。日本語で何て言うんですっけ…“ikigai・生きがい” …そう多分それを発見できると思います。
　参加者のとびきりの笑顔が見られたときは本当に嬉しいです。例えば4日間のバックパッキングをして肉体的な苦しさを経験しながらようやく目的地に到着します。出来ないと思っていた事を達成することが自信を作り、大きなスマイルになるのです。それから、プログラム初日は参加者同士誰も何も知らないのだけれど、経験や時間を共有するなかで最終日には皆んな笑って、連絡先を交換したり涙を流したり。人と人との素晴らしい繋がりが短期間でできたことを実感できます。そんな場面に居合わせられるのは本当に幸せです。
　BRのスタッフは皆とてもユニークで、アーティスト、文筆家、写真家、クライマー、ナチュラリスト、素晴らしいシェフなどさまざまなバックグラウンドを持っています。皆に共通しているのはヨセミテへの情熱。その思いとスキルを発揮してプログラムを豊かにしてくれています。

　ヨセミテ国立公園近郊に住んでいて、最も心が満たされることって何かわかるかい？
　
　誰かがパーク内にある秘密の場所を教えてくれたり、ローカルだけが知っているトレイルヘッド、美しい景色やとてもユニークな場所を教えてくれる。そんなチャンスに出会うことが最高なんだ。
　
　小さな秘密の場所というのは、実はすごく身近なところにあって、それこそトレイルのすぐ脇だったり観光客で賑わうすぐ近くにあったり。意外とローカルでも知らない場所がまだまだたくさんあるんだ。一方で、ヨセミテの壮大な絶景スポットは、奥深くて遠い場所にある。そこへ向かうには多くの知識と準備が必要になってくる。
　
　予測できない天候や寒さの厳しいヨセミテの冬は、秘密の場所なんていらない。なぜなら、その瞬間瞬間が神秘的で独自のシークレットを持っているから。
　
　オフシーズンはアクティビティをする人や観光客が減り、公園内は静まり返る。混雑はないし、自然に対して意識の高い人々が訪れる。冬のバリーの風景は絶え間なく変化する。寒波と大雪によって、有名なEl CapitanやHalf Domeは衝撃的で強烈な印象を与える情景へと、日常的に変化するんだ。

　冬の間、標高の高いトゥワロミ草原に向かうタイオガパスは閉鎖される。豪雪で道が完全に埋ってしまうからだ。例年は、雪が溶けて道路や建物の修復が終わった初夏に開通する。正式な開通発表の直前、タイオガパスは一足先にサイクリストだけに解禁されるときがある。気候や路面修復の状況にもよるけれど、その期間は1日から１週間。ぼくはそのサイクリングに向けて、パークサービスが発信する日々のニュースを聞きながら準備とトレーニングを始めるんだ。ぼくは決してそんなに熱心なサイクリストではないんだけどね（笑）。

　これはパークとコミュニティーの新しい取り組みの一例だ。多くのローカルたちはここに住むことで、そういった特別なアクティビティを優先的にたのしめるんだ。

　人間が自然環境や野生動物を保護し保全することは、ぼくらの声を自然界に届けることだと言われている。しかし不思議なことに、ヨセミテとシエラネバダ地域に関して言えば、このシナリオは真逆になってるってぼくは思うんだ。ヨセミテで出会った人々やここで一緒に働いた多くの人々が、ぼくと同じようにそう信じている。

　花崗岩の岩壁や滝、草原で過ごす時間が増えれば増えるほど、ヨセミテの大自然は今まで自分には聞こえなかった声を届けてくれる。その声は、自然のなかでの自分の位置やあるべき場所を教えてくれる。そんなヨセミテの声に耳を傾けながら自然と人間が共存・共生する社会を構築していく。それはこの美しい場所に住むぼくたち自身を成長させてくれることでもある。

　ぼくはカーペンターとして、ヨセミテ公園内のさまざまな建築物のプロジェクトに従事している。今はCamp 4の建造物プロジェクトに取り組んでいる。

　Camp 4という名前には、クライミングカルチャーの根源とその歴史が関わっている。あまり知られていないと思うけど、その昔Camp 4は軍隊の兵舎であったり“サニーサイドキャンプ”と呼ばれる時期があったんだ。当時はパークサービス（NPS）とクライミングカルチャーが対立していた時期で、サニーサイドキャンプという名前はクライミング文化の影響を弱めようとするNPSの働きかけだったようだ。

　そういったことは、バリーやその観光文化自体がまだまだ若いということを感じさせる。しかし、ぼくらが仕事をし、生活をし、自然をたのしむこの公園の歴史、つまりこの地形がどのように形成されたのかなどを完全に理解すると、ヨセミテには驚くほど古い歴史があることに気づかされる。そんなとき、幻想的で神秘的なヨセミテの美しさを再認識し、恍惚感に満たされるんだ。

　ヨセミテが届けてくれるその声は、我々のあるべき位置、行くべき場所を指し示してくれるんだ。

　大学2年のGW。小川山でボルダリングの課題「石の魂」を登っていると、偶然にもある知人と再会した。高校生のときに初めて岩場に連れて行ってくれたクライマーだった。
「夏休みはどっか登りに行くの？」
　そう聞かれ、国内のクライミングエリアを思い浮かべた。すると、「学生だったら海外でしょ？」
　知人はこともなげにそう言った。ああ、そうか。真っ先に頭に浮かんだのが、ヨセミテだった。
　中学生のときに加藤則芳さんのジョン・ミューアトレイルの記事を読んでアメリカのバックパッキングに憧れた。平山ユージさんがサラテをワンプッシュオールフリーで登ったのは中学３年のとき。特集されたTV番組を録画して、テープが擦り切れるまで何度も見た。本やTVの中で見た憧れの世界に自分が行く。そう思うと胸が高鳴った。
　その年の夏、わずかなバイト代を握りしめてひとりでヨセミテへ向かった。初めての海外旅行だった。バックパックにはキャンプ道具とクライミングシューズ。スケッチブックとマーティンのバックパッカーズギターをお伴に従えた。
　サンフランシスコのシティライツブックストアでジャックケルアックの『On the Road』を買い、わからない英語の波をかき分けてグレイハウンドに飛び乗った。ローカルバスに乗り換えてヨセミテバレーに着いたのはとっぷり日が暮れてからだった。
　翌日からキャンプ４に居を構え、一人でボルダリングをしながら過ごした。クラッシュパッドなどなく、グローサリーストアで買ったハンドタオルを岩の下に敷いた。クライミングの成果はほとんどなかったが、気ままにボルダリングをたのしみ、ときどき草原からハーフドームを描いたり、山にバックパッキングに出かけたりした。
　ヨセミテを去る前日の午後、あの有名な課題を少しだけでも触ってみようと数時間だけトライした。「Midnight Lightning」
　取り付きにチョークで稲妻が描かれた、世界でもっとも有名なボルダープロブレムである。案の定、中間部のライトニングホールドは止められなかったけれど、見知らぬクライマーとセッションした数時間は今でも覚えている。

MY FAVORITE YOSEMITE

　それからは絵描きになるため毎日絵ばかり描いて過ごした。クライミングには時々登りに行く程度。大学を卒業し、東京で就職。やがてフリーランスの書き手として活動を始めた。
　転機となったのは、拠点を故郷に移したことだった。その前年、家から車で30分ほどのところに国内屈指のボルダリングエリアが公開された。クライミングが生活の一部になり、ライフスタイルになった。ルートクライミングも再開し、鳳来、小川山、瑞牆などへ通った。マルチピッチ、クラック、アルパインも少々齧るとさらにクライミングにのめり込んだ。
　絵描きは貧困家業であるが、数年前からは海外へ登りに行けるようにもなった。ヨセミテにはまだ行っていない。今なら「Midnight Lightning」が登れるだろうか。あいにく、今回のヨセミテへの旅では、20年ぶりの大雪でコロンビアボルダーの上には雪が積もり、リップ部分からは滝のように水が滴り落ちていた。それでもライトニングホールドを止めてリップまでは登れるようになっていた。磨かれたスタンスを踏んで飛び出す瞬間、15年前の記憶が蘇ってくるのだった。
　冬のヨセミテと聞いて、どんなに寒いだろうと思っていた。けれど、キャンプ４には多くのキャンパーの姿があったし、雪さえ降らなければ十分クライミングできるのには驚いた。雪化粧したヨセミテを見られたのも幸運だった。雪を纏ったハーフドームが夕日で深紅に染まる風景は息を飲むほど美しかったし、氷で覆われた岩壁や巨大な滝から大きな氷の塊が崩れ落ちる迫力はすさまじかった。
　人生でもっとも登れるであろう20代を、ほとんどクライミングすることなく過ごした。最近思うのは、20代にできなかったことを、今、少しでも取り戻そうとしているのかもしれないということ。美しいルーフクラックも登りたいし、大岩壁のフリーマルチにもトライしたい。そしてもちろん「Midnight Lightning」も。
　近い将来、再びここに戻ってくるだろう。カリフォルニアの青い空の下に、エル・キャピタンが15年前と変わらない大きさでそびえたっていた。

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