日本初の長距離自然歩道、東海自然歩道とは?

日本初の長距離自然歩道、東海自然歩道とは?

知る日本初の長距離自然歩道、東海自然歩道とは?

#01

DATA全長/1,748km
設立年/1974年
起点/東:東京「明治の森高尾国定公園」
西:大阪「明治の森箕面国定公園」

東京と大阪を結ぶ東海自然歩道は約1,750kmに及ぶ壮大なスケール。1974年に開通したその誕生の背景には、自然と人とのつながりが薄れていた当時の社会状況が関係していた。

計画が策定された1969年は高度経済成長のピーク期。その頃の日本ではモータリゼーションの発達によって人々が自然の中を歩く機会を失い、開発という名の自然破壊が問題になっていた。

そんな時に、自然や文化財を保護しながら整備された長距離自然歩道を歩くことで国土や風土を再認識してもらい、自然保護に対する意識を高めてもらうことを目的にして整備が進められたのだ。

その時、ルートづくりで参考にしたのはアメリカのロングトレイルであるアパラチアン・トレイルだった。アメリカ東部のアパラチア山脈に沿って南のジョージア州から北のメイン州まで14州をまたいで延びる約3,500kmのアパラチアン・トレイルは1937年に全線開通したのだが、その発案の目的は当時急激に進む都市化、工業化により損なわれていたアメリカの人々の精神と身体の健全性、人間性の回復が目的だった。自然だけではなく文化と歴史の多様性を体感できるように設定されたアパラチアン・トレイルの素晴らしいルート構成を参考にして、日本で最初の長距離自然歩道の整備が進められたというわけだ。

東京と大阪という大都市を東西の起点として11都府県を結び、ルート上に国立公園と国定公園を配置したのは、急激に進んでいた都市のスプロール化を止める役割を担わせるためだった。

そんな東海自然歩道に込められた想いは、今を生きる私たちにとっても大きな価値を持つ。地球環境問題に対する意識があっても自然に親しんでいなければ何を保護するべきなのかわからないというもの。

「歩く」という人間にとって最もシンプルな行為を通して自然の中に入ることで得られるものは計り知れない。ゆっくりと歩くことでこそ、長距離自然歩道の持つ意味の本質がじっくりと身体に染み渡っていくのだろう。