ウルトラとは
自分を超える壮大な旅である
「成功が保証されていない何か」ほど、人間の心を揺さぶるものはない。その一歩を踏み出す姿勢は、「挑戦」という言葉がしっくりくる。ウルトラマラソン/ウルトラトレイルは、フルマラソン42.195km以上の道のりを 身ひとつで駆け抜ける挑戦的なエンデュランススポーツだ。100km、160kmと、その競技時間は長い。
ひとつのレースのなかで朝、昼、夕方、ときには夜をも体験する。レースのフィールドも非日常そのものだ。 世界遺産の街や山がコースとなることが多く、都心部の生活とはかけ離れた大自然が舞台となる。だからだろう。多くのウルトラランナーは、ウルトラのことを競争ではなく旅になぞらえている。 もちろんタイムレースだから相手がいるのだけれど、競う相手はむしろ自分自身だ。 100kmもの距離を本当に走りきれるのか。距離があまりにも長すぎて、上手くいくかどうか、 思い描いているタイムでゴールできるかどうかは、やってみるまでわからない。いったいあと何kmの道を走ればいいのだろう。 そしてゴールで誰と喜びを分かち合うのだろう。不安と期待が入りまじる。
フィジカルの強さだけでなく、心の打ち克つことが求められる。 思うように動かない足を、それでも一歩一歩規則正しく踏み出し続けるたびに、山や川、空といった自然と自分との境界があいまいに溶け合っていく。エンデュランススポーツならではの不思議な体験だ。 だからエリートランナーでも、ビギナーでも。ウルトラランナーはみな挑戦者であり、旅人だ。
どれだけ準備を積んだとしても、肉体的な疲労や苦しみはまず避けようもない。でも、そこには想像を超える何かが待っている。 単に自分の限界を超えるのではなく、自分の内面に出会う旅になる。ただ厳しいだけじゃない。ウルトラにはロマンがある。汗と涙と笑顔がある。心を揺さぶる何かがある。その何かを面白がれる好奇心を持ちさえすれば、ウルトラは、何にも代えがたい自分サイズの冒険になる。