Hiromi AndoModel
Wearing L/S Flower Logo Tee
長野で見つけた
わたしの素直な五感
ファッションモデルとして活躍する安藤潤美さんは長野県安曇野市に住んでいる。撮影の多くは東京や大阪であるにも関わらず。新宿まで長距離バスや新幹線での移動があるにも関わらず。しかし、「不便は感じない。むしろ心地いい」と安藤さんは話す。長野県に移住したことで発見できたこれからもずっと大切にしたいこと。
- Hiromi Ando
- HA
- THE NORTH FACE
- TNF
(TNF)
引越しをすることに迷いはありませんでしたか?
(HA)
迷いはまったくなく「ここに住もうかな」とイメージができた場所でした。
(TNF)
モデルのお仕事は大変ではないですか? やはり東京や大阪での仕事が多いと思いますが。
(HA)
モデル歴は3年くらいですが、特に長野に移り住んでから、お仕事をたくさんさせていただく機会も増え、いい風が吹いているように……感じます。
(TNF)
実際に長野で生活されてみて、何か気づきはありましたか?
(HA)
“美味しい”とか、“キレイ”とか“気持ちがいい”というものを素直に感じられるようになったかもしれません。東京や大阪にいた頃は素直な気持ちをそのまま受け入れることができていなかったかもしれないと今は思います。「忙しいから、これでいいや」みたいな。それは例えば部屋にいるとき、日陰の場所よりも太陽の陽が当たっている場所でゆっくりしようかなとか、そういうことに近い感覚です。本能的に気持ちいいと感じる場所がわかるようになったんです。
(TNF)
五感というか、感性が磨かれた感じですか?
(HA)
磨かれたのか……。それとも本来私たちが持っているものなのかもしれません。持っていたのだとしたら、もっと早く取り戻したかったですね。
(TNF)
それは一泊二日の小旅行だけではなかなか感じられないかもしれません。安藤さんのように生活の拠点を変えないと。
(HA)
人間だけの話しではありません。地球も生きているんだということも感じるようになりました。都会にいるときは、四季に対してもあまり敏感に感じることはありませんでした。春とか夏などの四季はさすがに分かりますが、たとえば24節季のような、さらに細分化した季節感までは難しいですよね。しかしここでは雪が雨に変わること、お昼の時間が長くなったこと、穀物が実ること、草花に露がつくことなどを身近に感じることができます。すると、地球も生きていること、そしてその時間の流れに対しても敏感になるようになりました。
意図的に
物理的な距離感を
作ることで
気づくことがある
安藤潤美
(TNF)
食べるものからも季節を感じられそうですね。「ナスってこんなに美味しいんだ」じゃないですけど。
(HA)
便利なのはありがたいことですが、便利すぎると見えなくなることもあるのを感じます。いつも飲むお味噌汁のお味噌ってどうやってできているんだろう……とか。この前友人の誘いで信州の伝統的な味噌を作ってみたんです。発酵させるのに10ヶ月。大変な作業ですが、すごく美味しいお味噌ができました。安心して口にできますし、手作りで作ったからこそ、もっと他のお味噌でも感動できるようになりました。
(TNF)
プロセスを知ることは大切ですよね。今回着用いただいているプロダクトも見た目は単なるカットソーに見えるかもしれませんが、ブナの木の繊維を使用しているんです。天然繊維からできたプロダクトで、二酸化炭素の排出量も軽減し、それに廃棄された後のことも考えられています。触るだけでは分からないのですが。
(HA)
お味噌やお漬物だけではないですよね。実際洋服もデザイナーさんなどの作り手の気持ちを知るだけで愛着がわきます。東京で生活しているときは、できあがったものを手にすることしかありませんでしたが、長野で生活を始めて、味噌を“手作り”してみたり、モデルをはじめて作り手さんから直接洋服についてのお話を聞くことで、ありがたみを感じることができます。
(TNF)
いい風が吹いていますね。
(HA)
ここでは半自給自足な生活を営んでいる方も多いんです。実際近所にも自分たちで木材を調達してお家を作った人もいたり……。必要最低限度の物との付き合い方が上手な人ばかりです。私も実際そのような生活スタイルに憧れというか、いつかなっていけたらなっていうのは、あるんですけど。
(TNF)
安藤さんが好きな映画「人生フルーツ」の価値観ですね。
(HA)
洋服もそうですけど、良いものをごくわずかでみたいな。ここでの生活は、ミニマリストじゃないですけど、質の良いものを着ることが自然になっていきます。東京で生活していると、いろんな場所に出かけたり、いろいろな人に会うので、いろんな服を持っていないといけないとかが関係しているかもしれません。もちろん洋服から気分を変えていくことが、ファッションの楽しさではありますけど。でもこうして東京から離れて東京の良さを知れますし、長野を離れて長野の良さも知ることができる。物理的な距離感を作ることで、気づけることってあるんだなって思います。
(TNF)
着るものも同じかもしれません。
(HA)
お店に入ると素敵な洋服がラックにバーっとかかっている洋服を見るとやはりあれもこれも欲しくなってしまいますよね。だけどもそこでも距離感ですよね。ちょっと考えてみるとか、ちょっと洋服を裏返して品質タグを見て何で作られているのかを見てみる……とか。普段口にする野菜がどこでできたものなのかとか、カロリーを見るのと同じ感覚なのかもしれません。
安藤潤美さんについてもっと知りたい場合は@hiro2i へ