Moe NakaseARTIST

Wearing L/S Flower Logo Onepiece

見ること気にかけることを続ける

アーティストの中瀬 萌さんは、神奈川と山梨の県境、豊かな自然の中に囲まれた場所にアトリエを構え、蜜蝋を使った技法で絵を描く。儚く続いているものを。便利に流されない中瀬さんが大切にする、“続く”、そして“続いている”という言葉の意味を聞く。

MOE NAKASE
MN
THE NORTH FACE
TNF

(TNF)

中瀬さんが2018年、六本木にあるギャラリーで“BEYOND”という個展を開催されたとき、ステートメントに「儚いものを大切にする」という言葉を拝見しました。

(MN)

これは継続的にこころに思っていることです。「儚いもの」という言葉の中には、「続いている」という意味も含まれていると思っていて。息を吸い込み、息を吐く。その瞬間にも過去と現在はできあがり、私たちはその繰り返し続く瞬間瞬間の中に生きている。 だから、私は今生きている事、生かされている事を特別なことに感じています。続いてる今を繋ぐために何ができるのか?を考える。続いていることが続くために、生きていることを続ける、とすら感じています。

(TNF)

その儚いものとはどんなものですか?

(MN)

自分にとっての儚いものとは、これまでに見てきたどれだけ小さなものでも、忘れ去りたくないという欲求の対象になるものです。消えたり、ふと思い出したりするその瞬間。羞恥心や見栄、視線や評価から一番遠い場所にあって、生きているもの。地球の中に存在する神秘的な美しさを見たときに鼓動する心。生命が循環すること、血液が体内を巡っていることもまた儚く続いているもの。そうしたものをずっと描いていたい。

(TNF)

中瀬さんが言う“続く”、“続いている”ことは、まさに今回ザ・ノース・フェイスが二酸化炭素の排出量を削減したテンセル™モダールという生地を使ったプロダクトに関連しているように思います。今まで通り生活することに対して危機感を持つメッセージが込められています。

(MN)

このアトリエで私が使用している支持体の木材パネルも、藤野町で刈り取った間伐材を使用したものです。藤野市が地産地消と地方創生のために学校などの色々な場所に配っているもので、私もその間伐材をいただき、それから作ったもので毎日絵を描いています。“続ける”というコンセプトを具体的な行為で言うのであれば、の話になってしまうのですが。

(TNF)

地球温暖化によってなくなってしまうものを“儚いもの”として見ることはできますか?

(MN)

ゆっくりと知らない間に消えていく、という意味では、儚いものとして見ることもできるかもしれません。だけども物理的であったり、人為的に消えていくものやことを、「儚いもの」としてみるということは、他人事へと変換しているような気がします。ヒトの内側に沈んだり消えたり遠のいていく記憶のようなものへの儚さとは違う。ヒトが勝手に押し進める環境破壊によって儚く消えていくものは、ヒトそのものかとおもいます。しかし、常に瞬間であり、そして連続しているものというのは、常にそこに在るとおもってしまうから、自分のことで手一杯で精一杯で、儚いと「変換」することがある種、今の社会(殊に日本)での生存本能のようなものなのかもしれないとも思います。

(TNF)

そんな現実に対して自分が目を向けるか、目を背けるか。またどのようにして向きあうことができるのかは、すごく難しいことですね。

(MN)

すごく難しくもあり、そんなに難しく考えることでもないのかもしれません。だってそれが今回のプロダクトでもあるわけですから。毎日口にする食べ物、毎日身につける衣服というような小さなことや、あまり強く意識していなかったところが、意識されるようになることが、大きく変わっていくのだろうと信じています。目に見える形では、数値でしか今の世の中だと中々信じられないことも多いですが、そうでなくとも、「変わろう、変えよう」とする行いに対しての応援や賛同としての選択や決断って、人だからこそできることで、とても意味のあることだと思います。半径数十メートル以上の事柄はすぐに他人事になってしまうから、まずはどんな対象でも見る、観察し、気づくこと。そうしたら、身の回りのものや自然や人に、愛を持てる。

全て繋がっているし続いていく、続いている。

中瀬 萌

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中瀬さんが、エンカウスティークと呼ばれる蜜蝋を使った古代アテネやギリシャ時代から伝わる絵画技法を使われていることも“続ける”や“続く”に大きく関わってくることなのでしょうか?

(MN)

蜜蝋は、蜜蜂が巣を作るために体内から分泌する時に作られる物質です。その蜜蝋を用いたエンカウスティーク技法は古代ギリシャ・ローマ時代(約二千〜三千年前)から壁画や絵画、イコンなどに使われていたと言われていますが、その時代の前から蜂という生き物が生きていて、となれば蜜を吸うための花も咲いていたことが想像できるんです。その頃から生活に根ざした絵を人々は描いていて、他の生き物や植物たちと文化や生命を紡いできたんです。

正直、蜜蝋を使いはじめた当初はそんな背景は知りませんでした。ただ、素材を探す中で蜜蝋を手にした時、しっとりとして人の肌のように優しい質感で、それでいて強い生命の塊のような感覚がしたのを覚えています。本能的にこの素材を選択したことも、時代や歴史を繋ぐ役目になっているのかもしれない、と今更ですが思います。こうした自然の摂理の中で紡がれてきた技法と素材を用いることは、私も生きている中・制作する上で、冬の次には必ず春が来る、この国には四季がある、という確信と現実を変えないように生きたいと思っています。そのためには、見ること気にかけることを続けること。観察は自然への愛情であり、その抱いた感情により自分自身を知ります。全て繋がっているし、続いていく、続いている。自分や誰かのことを考えるように、自然のことを自然に考え、想いたい。

中瀬 萌さんについてもっと知りたい場合はmoe0814n

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L/S FLOWER LOGO ONEPIECE
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ザ・ノース・フェイスのブランドオリジンであるハーフドームロゴの上に刺繍したのは、ヨセミテ国立公園に咲くカリフォルニアポピー。アーティストの中瀬 萌さんが着用したのはオーガニックコットンとゼロカーボン テンセル™モダールの生地で作られたフラワーロゴワンピース。身の回りに当たり前にあるモノやコトが続いていくためには、毎日身につける衣服のようなことから意識を向けることからはじめることも一つの方法と中瀬さんは言います。

CO2 Emissions Reduction

本プロダクトから削減できた二酸化炭素の排出量

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