体にいいとはわかっていても、ランニングを習慣化したり続けていくにはちょっとしたコツが必要かもしれません。
そこで今回は、ランニング&トレイルランニング歴10年以上という先輩ランナーに「日々のランニングが楽しくなるコツ」を教わることに。
話を訊いたお相手は礒村真介さん。ランニングやファッションの編集・ライターとして活躍するかたわら、東京のトレイル&ランニングショップ「Run Boys! Run Girls!」でランニングクラブのコーチを務めるエキスパートです。
以前は某モノ情報誌の編集者だっただけあって(トレイルランが好きすぎて独立してしまったそう!)、ギアへの愛情は人一倍。アイテム選びがモチベーションを上げてくれると言います。
「コツというほどエラそうなものじゃないんですけど」と前置きをしつつ、まず取り出してくれたのがTHE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)のシューズ。
「ここ数年、高反発のプレートを内蔵した厚底のシューズがどんどん増えていますよね。この手のモデルのいいところは、弾む感覚を味わえて次の一歩を踏み出すのが楽しくなるところ。中でもこの『フライトベクティブ』は3D形状のカーボンプレートが内蔵されていて、そのおかげか体育の授業の跳び箱で使ったロイター板のようなリターンを味わえます。
3D形状というのもミソで、プレートのフチが土手のようにせり上がり、高反発シューズにありがちな着地時の左右への横ブレを抑えてくれるのもいいんですよね。
おまけにロッカー構造といって、ソールの底が船底型のフォルムになっています。これが着地時に前へと転がることで自然な体重移動を促し、次の一歩が楽に踏み出せる感覚があるんです。ロッキングチェアの脚のよう、と表現すればなんとなく伝わるでしょうか。
もしかして自分、少し速くなったかも? と錯覚させてくれるので、単純に走るのが楽しくなると思いますよ」
本来はトレイル用のシューズですが、アウトソールのラバー素材の性能がズバ抜けてよく、凹凸のスパイクが低めに設計できているため、ロードを走るのにもバッチリ向いているとのこと。
「それからもはや当たり前なのかもしれませんが、ランニングアプリでログを取るのも個人的には必須。トレーニング日誌としての活用もできますが、SNSでシェアして仲間と『ここ走ったんだ』とモチベーションにしあったり、新たなランニングコースの発見にも応用できます。
その日走ったルートを肴に、『この道がここに繋がっているのか』と反芻するのもファンな時間です。上に挙げたような基本機能のみなら、ほとんどのアプリは無料で利用できるはず」
では、無理なく走り続けるために普段のランニングで心掛けていることはありますか?
「なるべく手ぶらに近い状態で走ること! だって、その方が気持ちいいじゃないですか(笑)。とはいえ小銭代わりのスマートフォンやちょっとした防寒着は携行していた方が便利ですし、逆に今着ているジャケットを脱ぎたくなる時もあります。
だから、THE NORTH FACEのロードランナーのような“揺れないバッグ”を使うのはちょっとしたコツになるかもしれません。
トレイルランニングで培った重心バランスで、腰の上に乗っかる設計がいいのか、荷物を入れても驚くほど重さを感じません。こういうちょっとしたストレスの解消が、心躍る疾走感を邪魔しないポイントになるのではないでしょうか」
同じく、快適さを適えてくれるのがTHE NORTH FACEの「ジプシーカバーイットケア」。ランニングに適したフェイスカバーです。
「これはもう、今の社会情勢的にあると便利といいますか、エチケットのひとつですよね。相手にも不快感を与えず、後ろ指や視線を集めないことが気持ちよく、楽しく走ることだと思います。
とはいえ、肌がアトピーがちというのもあって普通のフェイスカバーでは窮屈に感じていたころ、見つけたのがこのアイテム。
この形状なので圧迫感がなく、ソフトで伸縮性のある生地なので長時間耳にかけていても痛くなりません。色違いで何枚も揃えてしまいました」
「あとは当たり前ですが、無理をしないこと。追い込んで走れば確かに達成感が得られますし、成長を感じられると楽しいものですが、個人的には適切な心地よいペースで走れば、ゼエハアしなくても強くなれると考えています。メリハリも大事ですし」
走ったあとのリカバリーやコンディショニングは、トレーニング面でも楽しく故障せず走り続けるという点でも重視しているポイント。
「走りすぎると、むしろ一時的にコンディショニングが下がってしまうんです。ランナーに風邪や花粉症が多いのも、きっと免疫力が下がった状態でいる時間が長いから。
これはある人に言われて納得させられたのですが、日本人のスポーツパーソンって、道具は大事にしてコストを惜しまないのに、自分の体のケアは二の次にしてしまう人が多い気がします。ギアを大事に使うのは尊いことだけど、取り換えのきかない体にこそもっと気を掛けるべきだと」
「実際その通りだと思います。マッサージに行くのもいいですが、おすすめは“着るマッサージ”。つまりコンプレッションウェアですね。
Goldwin(ゴールドウイン)のC3fitのカーフスリーブやタイツは、僕は運動時よりも運動後に着ていることが多いです。他のブランドよりも快適な着用感で、着圧の強さも強すぎず弱すぎず、乗り物で移動するときやデスクワークなどでも重宝しています。
必要性は感じていても、意外なほど実践している人が少ないのがこの手のケア。マッサージに通うよりリーズナブルですし、汗を流した後に、下着代わりとしてこの手のリカバリーアイテムを着用するくらいなら出来そうじゃないですか?」
そしてもうひとつ、こちらもGoldwin C3fitのRe-poseシリーズのウェアをこっそり着ているとのこと。
「繊維に施されている光電子というテクノロジーが、その人自身から出ている体温(人体から放出される遠赤外線)を輻射して、じんわり温めてくれると聞いています。たとえるなら、コタツのようなふんわりと優しい暖かさ?
感染症対策が注目されるようになってから、人体の深部体温を低くしない状態に保つことの重要性が叫ばれてきているじゃないですか。先ほどの免疫力の話にもつながりますし。基礎代謝の下がりがちなアラフォーなので、血行促進面でも気になっています。
実際にこれを着ていると寝つきがいいですよ」
と、さすがランニング10年選手ならではの視点!
自身がコーチを務めるトレイルランニングクラブでも「回復させるまでがトレーニング」をモットーにしており、それが走り続けるコツでもある、と。
いろいろなアイテムを試してみる好奇心と、そのギアに頼って快適さを保ち続けること。それがきっと、礒村さんが無理なく楽しく、今日も走り続けている秘訣なのかもしれません。
Photo_Yuko Yasukawa
Runner_Shinsuke Isomura