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      カート 1
      2023.10.29

      【Race Report 2023 OSJ KOUMI 100 】"憧れの100milerへ"

      【Race Report 2023 OSJ KOUMI 100 】
      • スタートは今では無い。一年前、あの時既に始まっていた。

      • こんにちは、THE NORTH FACE Sphere 林です。


        長野県、八ヶ岳東部の麓・小海町。
        苔むした山域の中で行われる100マイルレース、OSJ KOUMI 100
        日本でも増えつつある100マイルレースだが、過去のレース参戦歴が関係無くエントリーが出来、初めての100マイルへの挑戦もしやすいレースであるのがこのOSJ KOUMI 100だ。

        コースプロファイルは35km×5(175km)、獲得標高は約8000m。スタート地点は標高約1100m、最高地点は約2200m弱と一番低い所でも関東でいうと丹沢エリアくらいの高さのある準高地だ。

        良くも悪くも"5周する"というのが他の国内100マイルレースには無い、挑戦するランナー達を一番苦しめる点である。また、他のレースより距離が長く175km=108マイルもある。そしてこの山岳エリアは雨が非常に多い地域で天候によっても大きく左右されるコースだ。(昨年の完走率、わずか31.5%)

        参加はしやすいが、完走率の低い難しいレースである。制限時間は36時間と比較的短いものの、タイム足切りでリタイヤとなる場合は実は少なく自らの意思で止める事が多数派なのが例年の傾向。逆を言えば、自ら辞めると言わなければ完走が見えてくる精神的な強さが求められるタフなコースだ。

      • マップは公式サイトより参照。

        昨年、THE NORTH FACE Sphereがオープンして間もない頃に先輩に勧められ初めて100マイルレースにエントリーし出走したが、100マイルという距離に対しても、夜を超えて走り続ける事対しても、あまりに経験が不足しており3周目を終えた夜でDNFしてしまった。雨の中、寒さから未知の領域の夜を越える自信を根こそぎ奪われてしまったのが原因だった。

        しかし、翌朝スタート/ゴール会場でボロボロになりながらも挑戦し続けるランナーを見て表現し難い悔しさとを感じ、そんなランナーへの美しさを感じてしまったのを今でも忘れられない。残っているランナーが皆ゲームの主人公の様に見えた。いや主人公そのものだった、それほど輝いていた。

      • 昨年10/10 5:50頃のスタート会場。最終周へ向かうランナーの背中。

        そして今年も夏が過ぎ、今年もレースが近づくと頭からこの景色と悔しさが全く頭から離れず、チャレンジを迷い無く決めた。やり残した宿題はその場でしか返せないと思ったからだ。

        昨年と異なる点は、まずトレーニング。出勤時の帰宅ランや早朝、KOUMI 100の林道パートを意識した峠走。直近の3ヶ月は昨年の2倍は走行距離を踏み脚作りをした。また今年はペーサーを同じ店舗のスタッフの高栖にお願いをした。ペーサーの彼にとっても大きなチャレンジとなるのだか、快く引き受けてくれた。高栖と共に試走も行った。

      • 左が私、右が高栖。

        高栖は走力としては自分より劣る。だが彼は常にポジティブだ、だからお願いをした。その時はペーサーをつけた事が、後に結果を左右する大きな岐路となる事は全く想像出来ていなかった。このレースの完走を目指す人には是非ペーサーをつける事をお勧めしたい。

        23/10/7
        今回レースプランは、

        1
        週目 5:30
        レスト 0:15
        2
        週目 6:00
        レスト 0:15
        3
        週目 6:30
        レスト 0:30
        4
        週目 7:00
        レスト 0:30
        5
        週目 7:30

        total 33:00
        程と考えていた。
        補給は45分ごとに取る。固形、ジェルこだわり無くその時取りたい物を口にする。

        レース前日の受付を無事済ませ、宿に泊まる。夕飯がとても美味しかった。しかし、レースの事で頭がいっぱいで夜は殆ど寝つけなかった。

      • レース当日 10/8

      • レース会場に続々とランナーが集まって、すごい熱気だ。そして5:00、スタートを迎える。気温5℃、恐らく最高点ニュウの山頂は0℃近くになる。まだ雨は降っていなかったが昨年より寒さが恐怖心を煽られそうになる。

      • 1周目】
        5:01:30
        でたどり着く。昨年より20分遅いペースだが、想定よりも早く回ってしまった。「まだまだ序盤戦、抑えて抑えて」と自分に言い聞かせて2周目へ。エイドタイムは17分程。焦らず、補給を済ませてスタート出来た。

        2周目】
        正直殆ど記憶に無いのが2周回目。それくらい淡々と進んでいたのかもしれない。
        2
        周目の第3エイドを過ぎた辺りで雨が降り出す。昨年のレースと同じ展開だった。昨年はここでまだ序盤だし行けるだろうとレインジャケットを着ずに進んだ事で後々深部体温が下がってしまい、戻すのにエネルギーを使ってしまった失敗があったので、今回はその後も雨が続く予報もあった為直ぐにレインジャケットを着用した。

      • コース上で一番好きな場所、石楠花の森。石楠花が応援してくれている様だ。コース上最高点まで後少しのエリア、山深くて気持ちが良い。もし走る機会があれば是非見て頂きたい。

        そしてニュウの最高地点付近。日が入らない為晴れていてもぬかるんでいた。ここは後に雨により田んぼの様になってしまい、避けて通る事は出来なくなった。

        2
        周目は5:49:54でゴール。オンタイムで
        ペーサーとも無事合流。70km通過し大きなトラブルは無く内臓も脚もとても元気だった。

      • 3周目】

        2
        週目ゴール時にペーサー高栖と合流する。ペーサーの彼がスマホを無くす(5分後に本部テント内で見つかる)小アクシデントがあるも、100マイル中は色々な問題が起こるのはつきものだ。夕方の16:25頃スタートする。直ぐに山中で陽が落ちる為、長袖のTシャツに着替えヘッドライトを装備し、気分転換に手袋も替えた。ヘッドライトは当店でも扱いのあるmilestone MS-i1を使用。バッテリー持ちも良く、コレなら電池交換無く夜を越せるから選んだ。

        降り出した雨により周回毎に路面が変化して明らかにぬかるみが増えたと感じた。特にニュウからの激下りはスリッピーな箇所が多く、危険箇所があったのでスピードより慎重さを重視して進む。ペーサーにもこの情報は伝えよう、と考えながら走った。ここまで進んで怪我でリタイヤが一番勿体無い。

        この時考えていた事はまだまだ、まだまだ前半戦。45周目の為に抑えていこうという事。夜を迎えたが脚も内臓もとても調子良く進んだ。
        3
        周目タイム:7:09:40、夜の11:01にゴール。

      • 4週目】
        完走への分かれ道となる4周目スタート、ココでリタイヤしてしまう人が多い所だ。

        走っていても明らかに単独走が増えている。しかし自分には45周目を一緒に走ってくれるペーサーが居る。折角遠くまで来てくれて走らせない訳にもいかず、彼のペーサー任務完遂=完走にもなる。去年のリタイヤが嘘のように辞めたい気持ちは1ミリも無かった。
        滑る路面に備え、シューズをラグが深くグリップの効くVECTIV Infinite IIに替え、歩きが増えるのでポールも持っていく事にした。VECTIV Infinite IIのお陰で登りで滑る事は無くなった。

        名物の小海そばを食べ体を温める。
        4
        周目スタート前に、THE NORTH FACE ULTRA RUNNING CLUB講師のちゃんぷ。さんにも会え、「めちゃくちゃ元気だね!!」と言われ、パワーが湧いてきた。

        しかし、そんな矢先に不調の波がやってきた。

        4
        周目スタートし、5km通過した位から気持ちが悪くなってきた。胸が苦しくペースが保てない。それまで、内臓も気持ちも絶好調だったが故に必要以上に動揺してしまった。
        ペーサー高栖にその事を伝える。すると、

        100マイルでは不調の波はつきもの。ゆっくりでも良い。苦しくても歩みを止めなければ、スッと体が軽くなる時がくるから、行こう!」
        と言われゆっくりだが止まらずに進む。今思えば、あまり良いリアクションが出来ずに申し訳なかったが、心身共にとても励まされた言葉だった。本当に感謝している。ペーサーをお願いして本当に良かった。

      • その後不思議と不快感も抜け、ペースを取り戻してきた。ずっと1人で走って来た中で、ペーサー高栖とくだらないことを話ながら進むのは楽しかった。

        しかし路面は降り注ぐ雨とランナー達の踏み込みにより、ドロドロというより、トロトロのソフトクリーム状となっていた。暗闇の中、下りは転倒必須で慎重に進む。後日談で、トップ選手も店頭によりリタイヤしていた程難易度が高い下りだった。

        午前3時頃コース最高点を通過して、程なく空が明るくなってきた、2日目の日の出だ。コース誘導スタッフに「後1周だよ、戻ってきてね!」と声を掛けられ、「絶対戻って来ますよ!」と言った。

        雨は強く降り続いたままだった。眠さは全く感じ無かった。

        4
        周目タイム: 8:20:5810/9の朝7:22にゴール。ここまで来たら、気持ち的にはほぼ完走もらった様なものだ。制限時間までは9時間30分程だった。

      • 5周目】

        さあ、最後の一周はウイニングランだ。しかし悪路と万が一のトラブルが起きて全歩きになった場合タイムアウトもあり得るかも、と頭によぎった。ペーサーの高栖は「大丈夫です、このペースなら余裕です!」とアドバイスをくれた。

        朝のお散歩をイメージで進む。雨は引き続き降り続いて、路面は荒れていた。でもこのコースを通る事もこれで最後だ。ここまで来ると、すれ違うランナーもかなり少なくなってくる。が、5周目まで残っているだけあって皆んなとても良い顔をしていた。「ゴールしたら、お姫様抱っこして!」と言っていた女性ランナーも居た。まるで青春みたいだ。

        各エイドのボランティアの方とも、何度もすれ違うのでほぼ友達みたいになってきた。鰹節のお粥が本当に美味しかった。

        最後の周はとにかく楽しかった。そこまでゴールが見えてきたからだ。嬉しさが込み上げくる。でも何だか終わってしまうのが淋しかった。

        沿道の応援の方々から「NICE 100MILE!お帰りなさい!」と声を掛けられるといつの間にかゲートが見えてきた。

      • 昼過ぎの15:3534:35:00で遂にゴール。レースプランより少し遅れたが、悪天候を考慮すると大崩れせず走り切れたと思う。長かった昨年の宿題をやり終えた。完走だ。遂に100milerKOUMI100FIVE LAP MANの仲間入りだ。

      • 今回のレース中、気をつけていた事をリスト化してみた。

      • ・蟻の一撃に気がつける。小さなストレスが後に大きく響く。具体的には靴に入った小石は躊躇せず出す。

        ・無駄な事をしない。エイドでやる事を決めておく。

        ・心の波を作らない。盛り上がり過ぎず、下がり過ぎず。メンタルのゲージを常に真ん中に、50/100を保つ。

        ・言葉をポジティブに変換する。
        脚が痛い脚が熟成してきた。
        暗闇が怖い暗いから嫌いなカエルや蛇を見なくて済む等。

        ・応援には必ずリアクションする。

        ・危険箇所は最大限気をつける。

        ・走る事に集中しすぎない。

        ・水は良くに取る。
        今回は麦茶と、水にパラチノース系の粉末を溶かした物を飲んだ。結果としてレース中脚の攣りは全く起きず、レース後のリカバリーも早かった。

      • 一度しか100マイルレースを完走していないが、恐縮ながらKOUMI100で完走を目指す方へアドバイス出来るとすると、"心の波を作らない"が一番大切だと私は思う。気持ちが昂ると、辛さが来た時に落差がとても大きい。だから敢えて高揚感を抑え淡々とただ進むのだ。

        また、可能ならば試走をお勧めしたい。175kmと長いが、一周35kmだけ走ればコース全容が分かるので、走る所・歩く所・補給を取る所など、プランが決めやすくなる。



        KOUMI100
        はとても良いレース。
        正直、もう一回走りたいかと聞かれたら、今はイエスでは無いけれど100マイル完走を目指す方には是非オススメしたい。完走出来たら最高だし、出来なくても自分の課題が如実に見える魅力溢れるレースである事に違いは無い。

        念願の100milerに成れて、体は疲労が中々抜けない。でももう次のレースを探している。たった1回走っただけだ次はどんなレースに出会えるだろう、楽しみだ。

      • 今回のレースで使用したギア・ウェアはコチラ

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