皆さんは “キレット” という言葉をご存知でしょうか?
今回は、なんだか不穏な響きの「不帰ノ嶮(かえらずのけん)」に登ってきたスタッフが、険しくも美しい白馬縦走の様子をお届けします!
キレットは、山の尾根が深くV字に切れ込んだ場所のことで、漢字では「切戸」と書きます。
急激な下りの後すぐに急峻な岩場を登り返すことになるため、難所とされる場所が多いです。
その中でも日本三大キレットと呼ばれる
<大キレット(北穂高岳〜南岳)>
<八峰キレット(五竜岳〜鹿島槍ヶ岳)>
<不帰キレット(天狗ノ頭〜唐松岳)>
は、日本でも難易度が高いことが有名で、登山者憧れの場所です!
今回の目当てはそのうちの一つ、不帰キレット。
「不帰ノ嶮(かえらずのけん)」の名前で有名です。
嶮とは山が高く険しい様を表す言葉で、謡曲・箱根八里では「箱根の山は天下の嶮」と歌われています。
その険しい山容から、昔は入った者が帰ってこなかったためその名がつけられましたが、今は鎖や道標の矢印がつけられており、体力・技術レベルや天候、装備に問題がなければ誰でもチャレンジできます。
せっかくなら白馬三山にも行きたい!ということで、初日は白馬岳を目指します。
白馬岳へのルートの代名詞とも言える「大雪渓」を通るのが王道かつ直行コースですが、今年は大きなクレバス(割れ目)がたくさんできてしまい通行止めだったため、栂池側から目指すルートとなりました。
そのため栂池ロープウェイには白馬岳を目指す登山者の方がたくさんいらっしゃいました。
ロープウェイをおり、乗鞍岳、白馬大池、小蓮華岳などを越えていきます。
運良く雷鳥の姿も!
登山者など意にも介さず、むにゃむにゃとなにか言いながら草を食べる可愛い姿に癒されます。
白馬岳山頂、白馬山荘に着く頃にはガスも晴れ、美しい景色に目を奪われます。
明日は行動10時間を超えるロングコース。
ここでしっかりと英気を養い、よく寝て明日に備えます。
2日目、いよいよ不帰ノ嶮を目指して出発です。
天狗ノ頭までで約5時間、不帰ノ嶮を超えるのに約4時間半、そこから唐松岳を経て八方大池の駅まで約2時間と、かなりのロングコースになるため、朝4:00には出発したいところ。
白馬山荘の明かりを背にヘッドライトをつけて稜線を進みます。
美しい日の出と、朝日に照らされる白馬連峰に思わず立ち止まって目を奪われながら、杓子岳、白馬鑓ヶ岳と白馬三山を越えていきます。
白馬岳〜天狗ノ頭まではアップダウンはありますが危険箇所の少ない気持ちのいい稜線歩き。
右手には剱岳も見ることができます。
白馬鑓ヶ岳からは鑓温泉を経て下山も出来るため、白馬三山縦走のみの場合はここから下山しましょう。
また、天狗ノ頭近くにある天狗山荘まで山小屋がないため、トイレと水不足には要注意です。
天狗ノ頭、天狗山荘を越えてしばらく進むと、いよいよ最初の難関・天狗の大下りへ。
標高差約300〜400mの急斜面を一気に下ります。
特に上部は鎖はあるものの三点支持しながらの下降となり、トラバースポイントを見失ってルート迷いや滑落なども起こりやすい場所のため、慎重に落ち着いて下りましょう。
(下にある右の写真の山を一気に下ります)
大下りを終えて最低鞍部につくとホッと一息。
来たる不帰ノ嶮に備えて休憩と補給をしましょう。
不帰ノ嶮は全部で4つのピークがあり、不帰I峰 → II峰北峰 → II峰南峰 → III峰と進んでいきます。
その中でもI峰〜II峰北峰は「核心部」と言われている最も気を抜けないポイントです!
登攀の基本の3点支持で、あまり鎖に頼りすぎず登りましょう!
中でも2箇所ほど特に難しい岩がありますので、焦らず慎重に…!
岩や鎖、ハシゴなどが長時間連続する場所では、素手だと汗や露で滑ったり手を怪我したりするリスクがあります。
そんな時便利なのがクライミング用で作られたグローブ。
グリップ性と耐摩耗性に優れ、手汗をかいたり、登攀中に雨が降るようなシーンでも焦らず対処できます。
指先が空いたフィンガーレスタイプやフルレングスなど、色々な種類があるので
自分に合う相棒を見つけてみるのも良いかもしれません。
スタッフが持って行ったのはTHE NORTH FACEのビレイヤーグローブ。
その名の通りビレイヤーが使うグローブですが、その操作性の良さとグリップ力、ちょうど良いフィット感がお気に入りで、手を使った登りがあるルートでは、使わないこともあるけれど取り敢えずパックに入れているオススメアイテムです。
核心部後半ではSNSなどでたまに見かける「空中ハシゴ」が現れます。
細く高度感のあるハシゴなのでここも慎重に…。
空中ハシゴを超えて少し登れば核心部は終了!
振り返れば「思ったより大きい…」となる天狗の大下りと不帰l峰、そして足元には今登ってきた核心部の絶壁が広がり達成感に包まれます。
これ以降も気の抜けない岩の登りが連続しますので、気を引き締めていきましょう!
不帰III峰山頂まで来れば、踏破してきた不帰ノ嶮が一望できます。
ここまで来れば唐松岳まではあと1時間ほど。
唐松岳は八方ロープウェイから登れるため、山頂は登山者で賑わっていました。
白馬鑓ヶ岳以降はほとんど人がいなかったため、なんだかホッとします。
(残念ながら山頂では雨に降られ展望はありませんでしたが…)
唐松山荘を超えて八方大池まで下りると、白馬岳から不帰ノ嶮、唐松岳までパノラマで一望!
「あそこ全部行ってきたんです」と内心ニヤニヤしながらリフト駅まで散策路を歩けばゴール!
長旅お疲れ様でした。
不帰ノ嶮、いかがでしたでしょうか?
行動時間や距離も長く、危険箇所も多いため初心者におすすめできるとは言えませんが、その分、圧巻の景色と達成感を味わえるおすすめの縦走路です。
岩場に自信がある方や、普通の登山道を行く登山からのステップアップを目指す方はぜひチャレンジしてみてください!
今回スタッフが持って行ったアイテムを下に掲載していますので、よければ参考になさってください。
装備の相談やオススメの山なども、いつでもスタッフにご相談ください!
一同、皆さんのアウトドアライフを全力でサポートさせていただきます。