長かった暑い夏が去り、秋が深まると、日本の山は紅葉シーズンへ。暑過ぎず寒過ぎない程よい気候で、心地好く登山やハイキングが楽しめる季節ですが、油断は禁物。標高1000m前後の低山でも稜線に出れば気温は低く、風雨に打たれれば低体温症のリスクがあります。また、日中は暖かくても、日が落ちると一気に冷え込むのも秋の特徴です。快適に秋の山を楽しむにはどんなウェアが必要なのか。マウンテンガイドの金子 森さんに話を聞きました。
金子さんがマウンテンガイドとして活動している箱根の山々が色づくのは、10月の後半から。そこから12月の上旬頃まで秋色に染まる山々を堪能できるといいます。 「スギやヒノキなどの常緑樹の緑が残るので、秋は色の多い景色が楽しめます。台風やゲリラ豪雨のある夏に比べると天候が安定してきて、箱根の山から富士山が見える確率も高くなります。冬のように寒さが厳しいこともないですし、ビギナーの方でも、登山やハイキングを楽しみやすい季節だと言えると思います」
秋の登山やハイキングに適したウェアとはどんなウェアなのでしょうか。 「よく言われるベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターレイヤーの3点セットを準備するのが基本になります。ベースレイヤーというのは、肌のすぐ上に着るウェアのこと。汗冷えを防ぐために吸汗性や速乾性といった機能が求められます。ベースレイヤーの上に着るのがミッドレイヤー。保温が主な役割です。風雨から身を守ために一番外側に着るのがアウターレイヤー。防風性、防水性といった機能が必要になります。この3点を組み合わせて上手く体温調整をすると、山中を快適に過ごすことができます。 箱根の場合、それほど標高が高くない場所を歩いているときは、ベースレイヤーとミッドレイヤーだけでも十分だったりしますが、標高が1000mを超えるとグッと気温が下がりますし、稜線に出て風に吹かれると体感気温が一気に下がります。歩いているときは暖かくても、休憩中に体が冷えることがあるのでアウターレイヤーは必須です」
「アウターレイヤーは、パーテックスやゴアテックスといった防水性・防風性・透湿性に優れた素材を採用したものがいいでしょう。季節を問わず雨から体を守るレインウェアは、登山やハイキングの際に必須。雨予報ではなかったとしても必ずバックパックに入れておいてください。僕が最近よく着ているのは、パーテックスシールドエアーマウンテニアリングジャケットです。防水透湿性に優れているのはもちろんなのですが、素材が軽くしなやかで、とても体が動かしやすいんです。そして収納時に嵩張らないのも魅力です。」
ミッドレイヤーは、複数用意しておくと安心だと金子さんは言います。
「箱根の秋ということで考えると、薄手のフリースかインサレーションウェア(中わたの入った保温用ウェア)があれば十分。暑がりの人であれば、登山用のシャツという選択肢もあります。Goldwinのオールダイレクションアクティブハイクシャツは、ストレッチ性と撥水性を備えたシャツで、ウィンドシェルにもなり得ます。汎用性が高く、とても便利です」
ベースレイヤーはウールベース。それが金子さんの好み。 「汗冷えを防ぐために、機能として吸汗性と速乾性が必要です。それ以外は着心地や肌触りの好みで選べばいいと思いますが、僕はウールベースのものを選んでいます。ウールベースのものは、肌触りがソフトで、消臭性に優れているが魅力です。Goldwinのウールティーシャツ、ウールロングティーシャツは、ガイド中はもちろん、普段着としてもよく着ています」
ちなみに、ボトムは何を基準に選べばいいのでしょうか。 「脚を動かしやすくて、歩きやすいというのが一番大事だと思います。雨が降ってきたとき用に、レインパンツも用意しておきましょう。Goldwinのコーデュラ ストレッチ カーゴ パンツは耐久性とストレッチ性を併せ持っていて登山に使いやすいパンツです。パーテックスシールドエアーマウンテニアリングパンツは単体でも使えますし、雨天時のオーバーパンツとしても活用できます」
行楽シーズンのハイキングでも、安全に下山するための装備、いざという時のための準備は欠かせません。
「まず、十分な量の水と行動食、地図は必須です。常備薬、怪我をしたときに困らないように絆創膏や包帯も準備しておきましょう。視力が悪い人は、眼鏡やコンタクトレンズの予備も忘れずに。低山登山やハイキングだと用意しないという人もいるかもしれませんが、ヘッドライトやエマージェンシーシート(緊急時に身を守る防水性・防風性のあるシート)も必要です。何らかのトラブルで予定よりも行動時間が長くなり、日が落ちてしまうこともありますし、暗くなると日中なら迷わないところでも、道に迷う可能性があります。また、サポートタイツやトレッキングポールの力を借りて、なるべく疲れを溜めないようにするのは安全で楽しい登山に繋がります」
グローブやキャップも用意しておきたい小物です。
「低山やビギナー向けのトレイルでも、岩場や鎖場があることがあります。また、どんなに気をつけていても山道で転倒することもあると思います。グローブがあれば、手を切るような怪我を避けられますし、指先の冷えも防げます。秋は夏のような日差しはありませんが、キャップがあると小雨が降ったときに便利ですし、防寒にもなります。用意しておくと便利なのが、ドライバッグ。小物類や着替えは全部ドライバッグに入れてから、バックパックに収納すると突然の雨からも荷物を守ることができます。せっかく用意した着替えも、ずぶ濡れになってしまっては意味がないですからね。安全第一を心がけ、しっかりと準備を整えて秋の登山、ハイキングを楽しんでください」