社会問題が自分ごとになった瞬間
ここ数年、アメリカでは「社会的に目覚めること」を意味する「woke」というワードが浸透し、人種的平等や社会的平等の実現のためのキーワードになっています。
主導する人々はいわゆるZ世代(1990年代後半から2000年生まれの人々)が多く、それは日本でも同様です。主体的な現象に思えるwokeですが、重要なのは他者との間に共鳴が起こること。環境問題という社会課題に早くから“目覚めて”いた未来リナさんと、Fridays For Future Japanの黒部睦さん、横井美咲さんもZ世代。彼女たちが早くから環境問題に意識を向けるようになったのも、実体験があってのことでした。
「私が気候変動に強い関心を持ったきっかけは、スウェーデンの市役所前で気候変動問題を訴えて座り込みをしている人たちを目撃したことでした。学校を休んで参加している小学生やおじいちゃんおばあちゃんたちの姿を見て、私がなにもしなかったらここにいるみんなが訴えていることは無駄になってしまうのではないか、という気がしたんです。それまではどこか他人ごとに感じていた問題が、自分ごとになった瞬間でした」と黒部さんは語ります。
情熱をもって活動をしている人々の背中を見たことが環境問題を自分ごととして考えるきっかけになる。「気候変動が進んだ未来を思い描くことはとにかく怖いことだった」という横井さんは、グレタ・トゥーンベリさんのスピーチを聞いて考えを新たにしたといいます。「私よりずっと年下のグレタさんが世界から批判を浴びたりしながらも、未来のことや地球のことを切実に考えて行動していることに感動しましたし、何も知らなかった自分を恥ずかしくも思いました。このことをきっかけに自分もやらないと、と自然と思うようになっていったんです」
一方で未来リナさんはヴィーガンライフスタイルと出会ってから環境を意識するようになったと話します。
「SNSやYouTubeを通してヴィーガンについて発信している人々を見て、なぜ?と思って調べたんです。私にとってそれまでヴィーガンという単語はラベルでしかなかったんですが、調べていくうちに、それがどれだけ環境問題とリンクしてるものかを知って、ショックを受けたんです。それから、地球に住む一人の人間としてできることをしたい、という思いが生まれました」
誰かの行動を起こすその背景を自ら調べ、意図を汲み取ることで、問題意識が自分のなかに内在化する。3人に共通するそうしたプロセスが、彼女たちを行動に導きました。