2024年に50周年を迎えた東海自然歩道。ではこの50年間、トレイルを整備し環境を守り続けているのは誰か? といえば、それは各自治体と連携して環境整備に取り組む地域の団体なのだ。登山者、ハイカー、トレイルランナーなど山を愛する各地のローカルたちの地道な活動なくして、日本各地の長距離自然歩道は成り立たない。
「学生時代のダウラギリ登頂から始まって60年以上山を登ってきました。私たちの時代は自然を征服するものだと思っていたところがあります。登山者はみんな山を荒らしてきました。でも山を、森を守らないと次世代につながっていかないのだと気づくことができたんです。罪滅ぼしですよ」
そう話してくれたのは猿投山の環境整備を行う「猿投の森づくりの会」代表の和田豊司さん。
日本山岳会東海支部が立ち上げた「猿投の森づくりの会」は2004年の設立。愛知高原国定公園の一角にあって、東海自然歩道が通る県有林やまじの森のある猿投山北西山西麓にて活動をしている。
猿投山は標高629m。名古屋市など人口密集地からも近く、多様な動植物が見られる人気の山だ。
「猿投の森づくりの会」が行うのは雑木林整備、人工林間伐など。この日は、トレイル脇にある枯死木の伐採作業をメインに行っていた。枯死木を放置しておくとやがて倒木となり、トレイルを塞いでしまうのだ。
「日本全国で同じ問題を抱えていますが、人が手を入れずに放置された人工林には植生の荒れ、土壌の緩み、花粉の飛散など多くの問題がありますよね。そして、人が手を入れないと登山道やトレイルがどんどん消えていってしまうのです」
和田さんの言葉であらためて気付かされた。これまで日本の歴史の中で消えてしまったトレイルは無数にあるのだろう。守る人がいるからこそ、私たちは楽しく歩くことができるのだ。