- ──どんなキャリアを経てTHE NORTH FACEへ?
- 「大学卒業後、アメリカの大手スポーツメーカーに就職してフットウェアデザインを習得したんだ。退社後は、フリーランスデザイナーとしてさまざまなアウトドアブランドのプロダクトデザインを担当してから、約3年前にTHE NORTH FACEのシニアデザイナーに就任。フライフィッシュもやるし、アウトドアアクティビティが好きだから、ここで働くことはすごく刺激的だよ」
- ──今、そのキャリアは活かされている?
- 「以前のスポーツブランドではモデルメーカーから始まったんだ。簡単に言えば、デザイナーが作ったラフ画をもとに粘土を使ったソフトモデリングや木で作るハードモデリングでプロトタイプを作るのが仕事かな。今みたいに3Dプリンターが出回る前は、そんな作業が必須だったんだ。でも、目に入ってくるものを3Dとして作ることができるのはそういう経験があるからこそ。実際に物がどういったパフォーマンスを持つかはデザイン画ではわからないんだ」
- ──実際にどういう風にシューズは生まれるの?
- 「まずは足のアナトミー(人体構造分析)から。バイオメカニストとともに、ユーザーやアスリートがどうシューズを使っているかを観察して、実際に使われる環境でテストをするんだ。そうすることで、どこを強化すべきか、どこが汚れるかなどの問題点が見えてくる。そう、私たちの一番大事な仕事は、Problem Solving(問題解決)なんだ。高い機能性や履き心地を生むために、ユーザーが抱くのと同じ問題を事前に解決しなきゃいけない。つまり、Problem Solver(問題解決者)ではなく、Problem Seeker(問題探求者)でないといけないってことだね」
- ──THE NORTH FACEフットウェアの特徴と言えば?
- 「あくまで個人的の意見だけど、THE NORTH FACEのシューズは、履きこなして汚れることが前提なんだ。例えば、他社ではフットウェアをデザインする背景に、誰にも踏まれたくないとか、汚れるのを好まないような傾向があると思うけど、私たちのフィールドはアウトドアだし、実際のフィールドで使われることがすべてなんだ。例えれば、SUVに乗ってオフロードを走るか、高級セダンでドライブに行くかの違いだね。でも、デザイナーはスタイリングや靴の美的魅力は意識的に重視するから、使い込まれて醜く見えてしまうフットウェアは作りたくない。THE NORTH FACEのシューズは機能性を活かして気軽に“オフロード”しても、ファッショナブルにも履けるようにできているはずだよ」
- ──それで生まれたのがXTRAFOAM™?
- 「THE NORTH FACEを愛してくれるエネルギーのあるミレニアム世代は、履き心地の良さとともにクールなヴィジュアルも求めていたんだ。そんな時に、約3年の期間をかけてXTRAFOAM™を開発したことは大きいかもしれないね。そのおかげでデザインの自由度が高まったのは間違いないよ。このソールシステムには、システムクッションテクノロジーが使われていて、一番上のフォームはレースアップした瞬間からクッション性を発揮して、それより硬い2番目のフォームでフレームと足自体の動きを安定させる。そして、ハイキングとトレイルモデルに重要となるESS SNAKE PLATE™で屈曲性とソールの捻れ剛性を高め、オリジナルのラグパターンを採用し耐久性と防滑性を高めたアウトソールVibram®XS TREKを装着した構造なんだ。実際に評価も高くて、THE NORTH FACEのアスリートであるディラン・ボウマンやザック・ミラーからもEndurus TRは高い評価と履き心地の良さのフィードバックが届いているよ」
- ──今後はどんなプロダクトを考えているの?
- 「私たちデザインチームは、すでに2019年春夏のデザインに取り組んでいるんだけど、軸になるのはXTRAFOAM™と次世代のフォーム。今はVibram®社とともにトラクションを作っているんだけど、今後近い将来にはオリジナルを開発したいかな。ひとつ言えることは、みんなが知っているTHE NORTH FACEはこの先数年で進化し、大きく変わっていくだろうね。私たちは2〜3年先のことではなく、もっと先の10年後のブランドを見ているから」
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THE NORTH FACEのフットウェアデザインは、自然界からのインスパイアの他、建築やテクスチャーからも影響を受けている。
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チャーリーによるデザイン画。よりスポーティなデザインには、彼の経験やさまざまなデザインキャリアが活かされている。
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Endures TRのアッパーデザインを生み出したサンプル。
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足のサポートを追求し完成したXTRAFOAM™のパーツサンプル。このテクノロジーのおかげで、デザインの自由度が増えたという。