Journal.08 DESIGNER’S VOICE

GREG DAILEY EQUIPMENT SENIOR
PRODUCT DEVELOPER

PROFILE.GREG DAILEY

ミシガン州立大学でインダストリアルデザインを専攻し、在学中にイギリスでカーデザインを学ぶ。卒業後、メディカルデザイナーとして、医療ツールや車椅子、エクササイズ機器を生み出してきた異色の経歴を持つ。2012年からTHE NORTH FACEのEQUIPMENTデザインを担当。今では開発を行うディベロッパーも兼任している。

都市型バッグにも確実に受け継がれる
THE NORTH FACEの探究心

EQUIPMENTの開発からデザインまでを手がけるグレッグはナイスな男だ。プライベートなことも気さくに話してくれるし、ともに同じ社で働く妻のことだって気持ち良く話してくれる。フランクな彼の厚意に甘えて、THE NORTH FACEクオリティの一端を担うバッグの真髄に迫りたく、彼のデスクを見せてもらった。
そこで無造作に積まれたバッグのサンプルは決して山岳用のものではない。どうやら彼は最近、アーバンライフスタイルをコンセプトにするURBAN EXPLORATIONカテゴリーの開発に尽力しているようだ。「KabanとKabigは僕が企画に携わったんだけど、ネーミングは日本が好きなプロダクトマネージャーがしたんだ。長い間温め続けてきたネームみたい。こういうURBAN EXPLORATIONのパックにも、THE NORTH FACEがフィールドで培ったテクニカルな歴史はちゃんと落とし込まれていて、内蔵フレームは背骨に適したストラクチャーでバイクライダーの腰まわりの負担を減らせて、他のブランドにはない技術だと思うよ」。そう彼が語るように、サイクリストをサポートするようなディテールは他のバッグにも多く、メッセンジャーの本場とも言えるサンフランシスコらしい声が聞こえてきた。
THE NORTH FACEがヘッドクォーターを置くアラメダは、中心部があるサンフランシスコ半島から湾を挟んだ対岸にある。「チームの半分以上が自転車通勤で、毎朝サンフランシスコから自転車をフェリーに乗せてくるんだ」。そんな事情を聞けば、バイクライダーが毎日楽に使える機能的なバッグが生まれるのも自然な流れであり、実際に使った際のフィードバックも毎日入ってくるのだからよりクオリティの高いプロダクトが生まれることも想像がつく。こういった都市型のバッグはコンパートメントが重要になるが、彼のこだわりを聞いてみた。「僕が初めてURBAN EXPLORATIONを担当し始めた頃もラップトップの収納は必須だったけど、最近は電子機器も小さく軽量化され、付属品やその充電を担う周辺機器も増えてきた。だから、メインディバイスだけでなく、コードやヘッドホンなどのアクセサリーを収納するコンパートメントをユーザーは求めているんだ。僕が想像するのは、カフェで仕事をするとかのごく日常のシーン。隣に人がいる限られたスペースでラップトップを広げ、どこにバッグを置いて物の出し入れをすると楽かとか本当に身近なことを考えているんだ」。Access Packシリーズなどの自立式は、きっとそんな考えのもと生まれたに違いない。
Supremeをはじめ、コラボレーションモデルの開発もグレッグの仕事だ。「彼らがアイディアを持ってきて(だいたいいつもクレイジーなんだけど)、THE NORTH FACEの機能性をいかに反映してそれを実現させるかも僕の仕事だよ。ポップカルチャーには注目しているし、いつもいろいろなシーンにアンテナを張っているけど、そういった外部の発想はいつも僕に良い刺激をくれるんだ」と、アウトドア一辺倒ではない彼のマインドも垣間見える。マーケットの中で何が一番新しいバッグなのかを常に考える彼が今気になっているもののひとつが革もの。THE NORTH FACE初期のハイキングパックには一部レザーを用いていたこともあり、いかにして革を使った機能的なバッグを作るかが、今の個人的な課題らしい。
最後に今後の開発プロダクトについて聞いてみた。「サンフランシスコほど車社会ではないニューヨークや東京は、バッグを持つ習慣がしっかりと根付いているからトレンドが生まれるんだ。最近のトレンドのファニーバッグやサコッシュは確実にファッショナブルだし、いかにしてより機能的に作れるかを考えるよ。過酷な環境下でのユーザビリティを追求してきたTHE NORTH FACEらしくね」。ブランドコンセプトである「NEVER STOP EXPLORING」は私たちの都市生活にも形を変えて還元されていく。
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